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ユニ・チャームの株価が年初来高値を更新したのは、なぜか?

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(画像= Canva、La Caprese)

2022年11月22日、東証プライムに上場するユニ・チャームの株価が一時5,218円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年3月14日につけた年初来安値の3,901円から約8カ月で33.8%の上昇である。

ユニ・チャームは、1961年に設立された生理用品や紙おむつ(乳児用、大人用)等の衛生用品の大手メーカーである。生理用品や紙おむつで日本市場のトップシェアを誇るほか、アジア地域においてもベビーケアやフェミニンケア、ヘルスケア関連製品で第1位のシェアを占めている。また、ユニ・チャームは海外売上比率が実に66.8%を占める、グローバル企業でもある。

後段で述べる通り、2022年12月期・第3四半期(2022年1月~9月)の連結業績は増収減益となったものの、直近の3カ月(2022年7〜9月期)でコア営業利益が増益に転じたことが好感されて株価を押し上げることとなった。

今回はユニ・チャームの話題をお届けしよう。

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ユニ・チャーム、直近3カ月でコア営業利益が増益に転じる

2022年11月7日、ユニ・チャームは2022年12月期・第3四半期(2022年1月~9月)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期に比べて14.5%増の6,545億4,800万円、コア営業利益は同5.9%減の916億6,200万円、税引前四半期利益は10.1%減の914億1,600万円、四半期利益は14.0%減の614億2,200万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は15.3%減の524億7,400万円となった。

同期は海外において、タイやインド、インドネシアなどの主要参入各国で新型コロナウイルス禍の景気の悪化からの持ち直しの動きがみられたほか、ゼロコロナ政策を継続する中国でも徐々に回復の兆しがみられるようになった。そうした状況下、生活必需品を取り扱うユニ・チャームは安定供給に向けて取り組み、急激なコスト上昇への対応を推進した。

また、日本国内においても、景気の持ち直しの動きがみられる中、高付加価値商品の需要を喚起するための新価値提案を継続的に実施しながら価値転嫁を進め、市場シェアの拡大に努めた。

上記の通り、2022年1月~9月の連結業績は増収減益となったものの、直近3カ月(2022年7〜9月期)のコア営業利益は前年同期に比べて1.7%増の362億円と増益に転じることとなった。

海外で大人用排泄ケア用品が高い成長を実現

セグメント別では、主力の「パーソナルケア」の売上高は前年同期に比べて13.7%増の5,601億6,500万円、セグメント利益は8.1%減の792億1,200万円となった。

海外では、日本以上のスピードで高齢化が進んでいる。こうした状況下、ユニ・チャームは大人用排泄ケア用品の対象人口が多い中国において、現地のニーズに合った新商品の発売と、積極的なマーケティング投資により、大人用排泄ケア用品の認知拡大と普及促進に取り組んだ。同じく、大人用排泄ケア用品の需要が高まっているタイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアといった東南アジア地域においても、商品ラインアップの拡充と、日本国内で確立したケアモデルの普及促進を図り、引き続き高い成長を実現した。同時に中国、東南アジア地域では女性のライフスタイルに合わせたナプキンなどの「フェミニンケア関連商品」も好調に推移した。

高齢化が進む日本国内市場も新型コロナウイルス禍の生活環境に慣れてきたことや、ワクチン接種が進み行動制限が緩和されたことなどもあって、回復へ転じている。「ウェルネスケア関連商品」では中度のパンツ型紙おむつで、足腰の負担を軽くする「骨盤サポートフィット」を機能強化するなど価値向上に努め、安定的な成長を実現した。また、『フェミニンケア関連商品』においても健康意識と安心志向が高まる中、女性のライフスタイルに合わせた高付加価値商品を展開したほか、SNS等を活用した消費者とのコミュニケーションを通じたブランド価値の向上に努めた結果、高い成長を実現した。

「ペットケア」のセグメントは2ケタの増収増益

一方、「ペットケア」のセグメントは、売上高が前年同期に比べて18.7%増の887億6,100万円、セグメント利益は同11.9%増の121億700万円となった。

日本国内市場においては、新型コロナウイルス禍で在宅時間が増えたことなどから、ペットとの接触機会が増える傾向にある。そうした中、ユニ・チャームは「ペットケア」の新商品とリニューアル商品でラインアップを充実し、また一部商品については価値転嫁を進め、コスト上昇に対応した。同時に、ペットフードにおいては猫用で健康志向の高まりに応えた商品等で、消費者の満足度向上に努めたほか、犬用では犬種ごとの身体の特徴や年齢に合わせた商品や、新コンセプト商品である「筋肉の健康を維持するカラダづくりフード」などの販売を強化した。その結果、安定的な成長を実現した。

北米市場においても、新型コロナウイルス禍でペットの飼育頭数とともに接触機会も増える環境下、猫ウェットタイプ副食や、高品質な犬用トイレタリーシートなどの販売が好調に推移した。

加えて、「その他」のセグメントでは不織布・吸収体の加工・成形技術を活かした業務用商品分野において、産業用資材を中心に販売を推進した。その結果、同セグメントの売上高は前年同期に比べて27.7%増の56億2,200万円、セグメント利益は同16.5%減の3億4,300万円となった。

売上高は上振れで推移し、コア営業利益は想定線で推移

ユニ・チャームは2022年12月期(2022年1月~12月)の連結業績予想について、売上高で前期比8.6%増の8,500億円、コア営業利益で同3.7%増の1,270億円、税引前当期利益で3.3%増の1,260億円、親会社の所有者に帰属する当期利益で8.9%増の792億円と従来見通し(2022年2月15日発表)を据え置いた。

ユニ・チャームは業績予想に対する進捗状況について「売上高は上振れで推移し、コア営業利益は想定線で推移している」との見解を示した。同時に、当初の業績予想からは、環境が大きく変化しているとの認識も示した。たとえば、足元ではウクライナ情勢の先行き不透明が続き、それに関連して原材料関連のコストが上昇する見込みである。その原材料関連のコスト上昇を吸収すべく、第3四半期は北米と日本のペットケア、インドネシア、インドなどで付加価値商品による価値転嫁を実施し、少しずつ成果は出ているという。また、中国でも大規模なロックダウン解除後も、部分的なロックダウンは続いているものの、フェミニンケアは回復傾向にあるとしている。

ユニ・チャームは、引き続きフェミニンケアやウェルネスケアなどの高収益事業のミックスを高め、販売促進費や広告費などのマーケティング費用の効率化、生産性改善なども引き続き進めることで、コストを吸収し、業績予想の達成に努める方針だ。

引き続き、ユニ・チャームの業績・株価に注目しておきたい。■

(経済ジャーナリスト 世田谷一郎)

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