2023年11月1日、ライオン(本社:東京都台東区)は、出産を経験した20歳〜40歳の女性106名を対象に実施した「妊娠中のお口の状態の変化」などについての調査報告を公表した。その結果、お口の中に不具合が発生していても、自分ではその変化に気づいていない人がいる可能性が示唆された。歯科健診は、自分では気づけないリスクや疾患を知ることができるが、妊婦歯科健診の受診率は35.2%(※1)に留まっているのが現状である。
そこで、今回はライオンの調査報告とともに、妊娠中のお口の中の変化やリスク、妊娠中こそ歯科健診を受けるべき理由について、日本歯科大学附属病院マタニティ歯科外来で妊婦の治療にも携わる鈴木麻美先生の解説を紹介したい。
妊娠中のお口の中の変化には気づきにくい?「胎児に影響する不安」も
妊娠中のお口の中の変化には気づきにくく、知らない間に歯肉炎などが発症している可能性も
「妊娠前と妊娠中を比べて、口内の状態に変化を感じていますか」という質問をしたところ、69%が「変化は感じない」と回答している(図1)。しかし、論文によると、妊娠中に歯肉炎を発症している人の割合は約60%(※2)とも言われている。このことから、妊娠中にお口の中に変化が起こっていても、自分では気づいていない可能性が考えられる。
歯科健診の受診には、「胎児に影響する不安」を解消することがポイント
妊婦歯科健診の受診率は約35%(※1)とされているが、これほど低い理由の一つとして「胎児に影響する不安」が指摘される。実際、「“胎児への影響が無い”ことがわかったら、または“歯科医院が妊婦さん向けに特別な配慮をしてくれる”ことを知っていたら、妊娠中に歯科健診を受けたい気持ちに変化はあったと思いますか」という質問に対して72%の人が「高まった(※3)」と回答している(図2)。
ちなみに、妊婦が胎児に影響するのではと不安を抱くこととしては、受診時の姿勢(仰向けに横たわること)や精神的ストレス、レントゲン、麻酔、投薬などが挙げられていた。妊婦の歯科健診の受診を促進するポイントの一つとして、これらが胎児に影響するのではないかという不安を解消することが大切と推察される。■