肌の健康と美しさを維持するための新たなメカニズムとして、世界で初めて匂い結合タンパク質OBP2Aがヒトの表皮では恒常性維持に寄与し、表皮バリアの一端を担っていることを発見――。2024年5月23日、大手化粧品メーカーの資生堂(本社:東京都中央区)からそのような研究成果が公表された(図1)。
ヒトの鼻の内側に存在する匂い結合タンパク質OBP2Aは、細胞にダメージを与えるストレス分子をフィルタリングする機能があることが知られている。本研究では、そのOBP2Aが表皮でも発現していることを解明した。また、OBP2Aの発現を高める成分「フランス産ホワイトリリー花エキス」も見出した。
資生堂は、本研究成果を活用し、環境変化の激しい現代社会においても、健やかで美しい肌へと導くソリューションの提供を目指す方針だ。本研究成果の概要は以下の通りである。
鼻に存在するOBP2Aがヒトの肌でも発現し、匂いなどの低分子から肌を守ることを発見
本研究では皮ふの免疫染色を行い、表皮内にもOBP2Aが存在することを明らかにした(図2)。
また、OBP2Aを減少させた表皮細胞に、環境中にある匂い成分ノネナール(外的ストレス分子)と皮脂や汗などに含まれる成分であるオレイン酸、パルミトレイン酸(内的ストレス分子)を与えると、ストレス分子に対する防御力が低下し、細胞生存率が下がることが判明した(図3)。
加えて、OBP2Aを減少させた表皮モデルでは表皮厚が薄くなり、肌のうるおい成分であるラメラ顆粒の分泌が減少することと、水分蒸散量が増加し表皮バリア機能が低下することも明らかになった。
さらに、OBP2Aの発現量を高める効果のある成分についても探索を行い、ユリの一種であるマドンナリリーの花から抽出した「フランス産ホワイトリリー花エキス」に、表皮中のOBP2Aの発現を高める効果があり、表皮厚を増加し、水分蒸散量を低下させ、表皮バリア機能を高めることを発見した。
資生堂は、五感を刺激する物質に対して、肌がそれらを自ら認識する機能について研究を進めている。肌が本来持っている力を解明し、その機能を強化することで、どんな環境でも揺るがない健やかで美しい肌の実現を目指している。なお、本研究成果の一部については、サイエンス分野で歴史と権威のある国際的な研究集会である「Gordon Research Conference」(2023/8/6-8/11)にて口頭発表に選ばれた。
資生堂のさらなる研究成果を期待したい。■
(La Caprese 編集部)