2023年12月15日、山田養蜂場(本社:岡山県苫田郡)は、アルツハイマー型認知症モデルにおいて、ブラジル産グリーンプロポリスがアミロイドβによる炎症を抑え、認知機能の低下を抑制する作用を持つ可能性を見出したと発表した。
認知症はアルツハイマー型(AD)、脳血管型、レビー小体型など、原因によって複数のタイプに分類される。日本では65歳以上の高齢者において、約600万人が認知症を発症していると推計され、2025年には700万人以上、高齢者の約5人に1人が認知症になると予測されている。ちなみに、認知症患者の中で最も割合が高いADは、脳にアミロイドβ(Aβ)と呼ばれるタンパク質が過剰に蓄積し、神経細胞が障害されることで発症すると考えられている。
プロポリスはミツバチが植物の新芽や樹脂から作り出す物質で、高い抗酸化作用や抗炎症作用を持つことが知られている。また、プロポリスはこれまでの研究において、脳の神経細胞を保護する働きや、脳の免疫細胞が誘発する炎症を抑制する働きが明らかにされたほか、物忘れを自覚する健康な高齢者の認知機能を改善したことが報告されている。そこで、本研究ではADにより認知機能が低下したADモデルを用いて、プロポリスが認知機能低下に与える予防的な影響やそのメカニズムの解明を試みた。
なお、本研究成果は科学雑誌 『BMC Complementary Medicine and Therapies』(2023年11月発行)に掲載された。概要は以下の通りである。
プロポリスが認知機能の低下を抑制する可能性
ミツバチが作り出す素材の一つである「プロポリス」はこれまでの研究で、脳の神経細胞を保護することや、脳の免疫細胞に対して抗炎症作用を持つことが知られている。また、ヒトにおいて健常な高齢者の認知機能の維持作用が報告されている。しかしながら、ブラジル産グリーンプロポリスのADに対する働きやその作用機序は完全には解明されていない。本研究は、ブラジル産グリーンプロポリスのADに対する予防的な作用とメカニズムを調べることを目的に試験を行った。
アミロイドβによる炎症を抑えるメカニズムの一端を解明
コントロール群(①正常群)と、試験開始から8日目にAβを脳に注入した4群(ADモデル)に分けた。ADモデルは、②プロポリスを投与しなかった群、③プロポリス100mg/kg投与群、④300mg/kg投与群、⑤900mg/kg投与群に分けて、試験開始から終了までの16日間毎日投与した。15日目に回避行動(※1)を学習させ、16日目に学習・記憶障害の程度、海馬の遺伝子発現パターン、血液中の炎症性サイトカイン(※2)量を比較した。
結果は以下の通り。
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学習・記憶障害を抑制
①正常群と比較して、②ADモデル群は学習・記憶能力が障害された。
その一方で、⑤プロポリス(900mg/kg)投与群においては、②ADモデル群と比較して、学習・記憶障害が抑制された(図1)。
免疫応答・炎症反応に関わる遺伝子発現を抑制
①正常群と比較して、②ADモデル群は遺伝子発現パターンが変化した。発現が変化した遺伝子を解析すると、主に免疫応答・炎症反応に関わる遺伝子であることがわかった。また、⑤プロポリス(900mg/kg)群では、これらの遺伝子発現の変化を抑える働きがみられた(図2)。
このうち、Trem2遺伝子※4の発現量を比較した結果、②ADモデル群は、①正常群よりも発現量が増加した。
一方で、⑤プロポリス(900mg/kg)群は②ADモデル群より増加量が低下した。(図3)
Aβによる全身の炎症反応を抑制
①正常群と比較して②ADモデル群は、血液中の炎症性サイトカイン(IL-6)が増加した。一方で、⑤プロポリス(900mg/kg)群は、②ADモデル群と比較して、IL-6が低下した。このことにより、アミロイドβによる全身の炎症反応をプロポリスが抑えることが確認された。(図4)
以上の結果から、ブラジル産グリーンプロポリスは、アミロイドβによる炎症を抑えることで、学習・記憶障害を改善する可能性が示された。
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予防医学の観点から「アピセラピー」を追究し、健康寿命の延伸を目指す
本研究では、ブラジル産グリーンプロポリスの認知機能障害に対する予防的作用のメカニズムの一端を解明することができた。山田養蜂場は今後も、プロポリス、ローヤルゼリーなどのミツバチ産品に関する有用性研究や素材開発を通し、予防医学の観点から「アピセラピー」を追究することで、消費者一人ひとりの健康寿命を延伸し、社会に貢献する方針である。■
(La Caprese 編集部)