筆者は筋トレをするようになってから、さまざまな「変化」を経験した。一番大きいのはボディラインや肌・髪・爪など外見的な「変化」なのだが、それ以外にも食事が美味しく感じられるようになったり、ぐっすり眠れるようになったり、疲れにくくなったり、肩こりや腰痛の解消などさまざまな「変化」を経験した。
その数多い変化の中でも、最も意外だったのは「仕事が早くこなせるようになった」ことである。筆者は書籍や雑誌、Webサイトなどで、資産形成やボディメイクに関するコンテンツの企画から編集制作に長年携わっているのだが、筋トレをするようになってからは明らかにスピードアップした。
編集者の仕事は「知恵の輪」を解くのに似ていると思う。ごちゃごちゃした情報を読者に分かりやすく伝えるために、悩んだり、もがき苦しんだりするようなところがある。そのプロセスは文字通り「知恵の輪」を解くような感じである。ところが、筋トレをするようになってからは、悩んだり、もがき苦しむことが少なくなった。あくまで個人的な感想ではあるが、身体の内側から活力がわき、頭の回転が速くなったような感覚である。
上記の経験から、運動と脳の働き(頭の回転)に、深い関係がありそうなことは筆者も感じていた。注目されるのは、2023年8月10日にパナソニックグループ(本社:大阪府門真市)がそれを裏付ける実証および調査結果を発表したことだ。
脳の健康に良いとされる運動習慣についての実証および調査分析
パナソニックのプロダクト解析センターは、一般社団法人ブレインインパクト(所在地:京都府京都市)およびセントラルスポーツ(本社:東京都中央区)と共同で、脳の健康に良いとされる運動習慣についての実証および調査分析を行なった。実証は、セントラルスポーツが運営する「セントラルウェルネスクラブ24 葛西」の会員94名の協力のもとに行われた。平均年齢は67.3歳で、81%が女性であった。
平均で約4歳分「脳が若い」ことが判明
本実証では、まず、脳の健康状態を示すBHQ(※1)を顔映像から推定する「推定BHQ」計測器(パナソニックのプロダクト解析センターが開発)を用いて、「年齢に対してどのくらい脳の状態が健康か」を示す「ΔBHQ(※2)」の値を計測した。その結果、「セントラルウェルネスクラブ24 葛西」の会員94名のΔBHQの平均は+2.3ptであり、平均で約4歳分脳が若いことが示された。
(図1)フィットネス実証における結果の概要
出典:パナソニックグループ
さらに、幸福感、働きがい、意欲、根気、好奇心、共感など脳との関係が明らかになっている心理指標について、アンケートにより7件法で主観評価してもらった結果を、ブレインインパクトが過去に取得した5,000件のデータと比較したところ、全ての項目で、「セントラルウェルネスクラブ24 葛西」の会員94名のスコアが高いことが示された。
(図2)実証参加者(n=94)のΔBHQ値(左図)と心の状態(右図)
出典:パナソニックグループ
フィットネスの種類と心理スコアの関連も明らかに
ちなみに、「セントラルウェルネスクラブ24 葛西」の会員94名が定常的に実施しているフィットネスの種類と脳の健康に関連する6つの心理指標との関係を調べたところ、❶ジムレッスンを受けている人は、受けていない人よりも根気が高く、共感のスコアが高い傾向にある、❷プールレッスンを受けている人は、働きがいが高い傾向にある、❸フリートレーニングとして、ジムを利用している人は、根気が高い傾向にある……ことも判明した。これらの結果から、フィットネスの種類によって、心の異なる側面に良い影響をおよぼす可能性が示唆された。
(図3)定常的に実施しているフィットネスの種類と心理スコアの関連
出典:パナソニックグループ
冒頭で述べた通り、運動と脳の働き(頭の回転)に、深い関係がありそうなことは筆者も感じていた。今回発表された運動習慣についての実証および調査分析は、それを裏付けるものとなった。ただ、運動と脳の関係については、そのメカニズムなど不明な点も依然として多い。パナソニックグループのさらなる研究成果が期待されるところである。■
(La Caprese 編集長 Yukio)