太陽光には幅広い波長の光が含まれている。ポーラ化成工業(本社:神奈川県横浜市)の研究によると、同じ太陽光でも皮下組織に良い影響を与える波長もあれば、悪い影響を与える波長もあることが判明している(※1)。たとえば、紫外線は皮膚に悪影響を及ぼすことが広く知られているが、その一方で「赤色光」は真皮や皮下の細胞の増殖を高めるなど、肌を育てるために有用な波長が含まれることも分かってきている。
注目されるのは、ポーラ化成工業が2023年12月7日に発表した研究成果で、❶赤色光には真皮線維芽細胞のレプチン(補足資料1)産生を増加させる効果がある、❷ヤグルマギク花エキス・オタネニンジン根エキス・ゴボウ根エキスを組み合わせたオリジナル複合エキスが、さらにその効果を促進する……ことを新たに発見したことだ。
ポーラ化成工業は、紫外線をカットしながらも赤色光を積極的に取り入れながら、上記❷の複合エキスを活用することで、肌のハリや弾力を維持しやすくなることが期待できる、との見解を示している。本研究成果の概要は以下の通りである。
赤色光は真皮線維芽細胞に働きかけ、コラーゲンを増やすのに重要なレプチンの産生を増加させる
真皮線維芽細胞に赤色光を照射して培養したところ、レプチンというホルモンの産生が増加することが判明した(図1)。さらに、レプチンは線維芽細胞に働きかけて、皮膚の構造を支えるために重要なさまざまな種類のコラーゲンの遺伝子発現を増加させることも明らかになった(補足資料2)。

赤色光はこれまでに線維芽細胞の増殖を高めることが知られていたが、それに加え、レプチン産生の増加を介してさまざまなコラーゲンを増加させるという点からも、太陽光のなかでも肌のハリや弾力の維持に役立つ有用な波長であると考えられる。
赤色光によるレプチン産生増加を促進させるオリジナル複合エキスを開発
次に、赤色光によるレプチン産生増加をさらに促進させるエキスを探索した結果、ヤグルマギク花エキス・オタネニンジン根エキス・ゴボウ根エキスを組み合わせたオリジナル複合エキスに、その作用があることを見出した(図2)。

ポーラ化成工業は本研究成果について、紫外線をカットしながらも赤色光を積極的に取り入れること、さらにはこれらの複合エキスを活用することで、肌のハリや弾力を維持しやすくなると期待できる、との見解を示した。今後もポーラ化成工業では、太陽光の可能性を追求し、太陽光をうまく活用してより良く生きるための新たな提案をし続けることを目指す方針である。
ポーラ化成工業のさらなる研究成果に期待したい。■
レプチンは、食欲を抑制したりエネルギー消費を増大させるホルモンです。これにより適正な体重を維持する働きを示します。睡眠中に分泌が促進され、睡眠不足になると血中量が減少します。脂肪細胞から分泌されることが知られていますが、真皮の線維芽細胞からも分泌され、それが線維芽細胞自身に働きかけ細胞増殖やI型コラーゲンの産生を促進することも知られていました。
真皮に存在するコラーゲンとしてはI型コラーゲンが有名ですが、真皮にはそれ以外にも多数の種類のコラーゲンが存在し、皮膚の構造を維持する役割を果たしています。これまでに、レプチンは真皮線維芽細胞のⅠ型コラーゲンを増やすことが知られていましたが、I型コラーゲンだけでなく、さまざまな種類のコラーゲン(※2)の遺伝子発現を増やすことが新たに分かりました(図3)。

(※1)
参考リリース: 「太陽光が皮下組織に与える良い影響・悪い影響を解明」(2019年10月4日)
https://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20191004_3.pdf
(※2)
I型、III型、V型コラーゲン:線維を形成するコラーゲン。真皮に存在するコラーゲンの95%を占める。
IV型コラーゲン: 表皮と真皮の境界にあり両者をつないでいる膜(基底膜)を構成するコラーゲンの一つ。
XII型コラーゲン: 真皮などの結合組織において、I型、III型、V型コラーゲンの線維同士の間に入り橋をかけるようにつなぎとめ、束として安定化させるコラーゲンの一つ。