2024年2月9日、東京証券取引所でミズノの株価が一時5,060円まで買われ、昨年来高値を更新した。2023年1月16日の安値2,634円から13カ月足らずで92.1%の上昇である。
ミズノは、大手総合スポーツ用品メーカーである。その源流は、1906年に大阪府大阪市で創業した水野兄弟商店にまでさかのぼる。今年で創業118年目を迎える老舗(しにせ)であり、幅広い種目のスポーツ用品やウェアを手掛けている。特に野球用品に関しては、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、日本代表「侍ジャパン」のオフィシャルサプライヤー契約を締結しているほか、レプリカユニホームなど公式グッズも販売しており、2023年3月には株式市場でも関連銘柄として物色される場面も見られた。
後段で述べる通り、ミズノが先週2月8日に公表した、❶2024年3月期・第3四半期(2023年4月1日~2023年12月31日)の連結業績が大幅な増収増益となり、同期としては売上高・営業利益・経常利益・純利益が過去最高を更新したこと、❷2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想で各利益を上方修正したこと、❸さらに、2024年3月期の年間配当予想を従来計画の70円から120円に50円増額修正すると発表したこと……などが株価にも刺激材料となった。
今回はミズノの話題をお届けしよう。
ミズノ、純利益は44.7%増。過去最高の業績
2月8日、ミズノは2024年3月期・第3四半期(2023年4月1日~2023年12月31日)の連結業績を公表した。同期の経営成績は、売上高が前年同期比14.0%増の1,680億4,600万円、本業の利益を示す営業利益は同 35.3%増の137億3,800万円、経常利益は同期比42.2%増の150億4,500万円、純利益は同44.7%増の113億2,200万円と、いずれも同期間として過去最高を更新した。
同期は、新型コロナウイルス禍の行動制限緩和による経済・社会活動の正常化など緩やかな回復傾向が見られた一方で、金融資本市場の変動や不安定な世界情勢、それに伴う物価上昇がおよぼす企業収益や個人消費への影響など不透明感を残す経済環境となった。こうした中、ミズノは国内において幅広い商品群で販売が好調に推移したほか、海外においてもゴルフ品やフットボール、インドアスポーツ等の競技スポーツ品の販売が伸長した。
セグメント別の概況は以下の通りである。
スポンサーリンク
日本は幅広い商品群で販売が好調
日本の売上高は前年同期比10.2%増の989億2,800万円、営業利益は同89.4%増の78億4,000万円と大幅な増収増益を記録した。
同期は、フットボール品の販売が拡大したほか、野球やバレーボールなど競技スポーツ品の販売も好調に推移した。さらに、非スポーツ事業であるワークビジネス事業やライフスタイルシューズの販売も伸長するなど、幅広い商品群が好調に推移した。
欧州は増収減益、流通在庫の増加や為替変動が影響
欧州の売上高は前年同期比16.7%増の200億8,100万円と同期として過去最高を更新した。しかし、利益面では流通在庫の増加や為替変動の影響を受け、営業利益で同72.4%減の3億1,100万円となった。
同期は、事業拡大に注力しているフットボール品やライフスタイルシューズの販売が拡大したほか、バレーボールやハンドボール等のインドアスポーツ品の販売も伸長した。しかし、前述の通り、流通在庫の増加や為替変動による仕入コストの上昇といった利益下押し要因が作用して、増収減益となった。
米州はゴルフや野球、バレーボール関連が伸長
米州の売上高は前年同期比18.4%増の270億5,400万円、営業利益は同24.0%増の29億8,800万円と、いずれも同期として過去最高を更新した。
同期は、金融引き締めに伴う金利の上昇やインフレの進行といった懸念材料が見られたものの、引き続きゴルフ品の販売が堅調に推移したほか、野球やバレーボールなどの競技スポーツ品も販売を伸ばした。
アジア・オセアニアは過去最高の増収増益
アジア・オセアニアの売上高は前年同期比25.1%増の219億8,200万円、営業利益は同13.6%増の25億8,200万円と、いずれも同期として過去最高を更新した。
同期は韓国や東南アジア地域で事業拡大に注力しているフットボール品の販売が伸長した。また、バドミントンやバレーボール等の競技スポーツ品や、ライフスタイルシューズ、スポーツアパレルの成長も寄与し、業績が拡大した。
スポンサーリンク
付加価値の高い競技スポーツ品の販売がグローバルで拡大
2月8日、ミズノは2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比6.1%増の2,250億円、本業の利益を示す営業利益で同27.5%増の165億円、経常利益で同24.6%増の175億円、純利益で同26.1%増の125億円となる見通しを示した。これは従来予想(2023年5月 12日公表)に比べて、売上高は据え置きながら、営業利益でプラス10.0%、経常利益でプラス16.7%、純利益でプラス13.6%の大幅な上方修正である。
ミズノは各利益を上方修正した理由について、①利益面で注力しているフットボールやインドアシューズなど、付加価値の高い競技スポーツ品の販売がグローバルで拡大してきたこと、②オウンドECやアジアでの販売が伸長してきたこと、③ライセンスビジネスを展開している南米等での販売が好調に推移していること……などを挙げている。
なお、冒頭でも述べた通り、ミズノは2024年3月期の年間配当予想を従来計画の70円から120円に50円増額修正すると発表した。ミズノは中長期的な観点に立ち、資本コストや株価を意識した経営を推進しながら収益性の向上および財務体質の強化に努め、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を行うことを基本方針としており、今回の増額修正もその一環としている。
引き続き、ミズノの業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)