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LIFULLの経営戦略『選択と集中』 今期の営業利益96.2%増を予想、株価は5カ月で93.2%上昇

LIFULL,株価,なぜ,高い
(画像= Canva、La Caprese)

2022年11月17日、東証プライムに上場するLIFULL(ライフル)の株価が一時286円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年6月20日につけた年初来安値の148円から約5カ月で93.2%の上昇である。

LIFULLは、住宅・不動産ポータルサイトの「LIFULL HOME’S」などの企画・運営を行う企業である。LIFULLは、1997年に当時リクルート <6098> の社員だった井上高志氏によって「ネクスト(旧社名)」として創業。住宅・不動産情報ポータルサイトの「HOME’S(現在のLIFULL HOME’S)」を中心に事業を展開した。2006年10月31日に東京証券取引所に上場。2017年4月には社名をLIFULLに変更し、グループ子会社名やサービスブランドを「LIFULL」に統合した。

11月9日にLIFULLが発表した2022年9月期(2021年10月1日~2022年9月30日)の連結業績で営業黒字(前期は営業赤字)に転換したことに加え、2023年9月期の連結業績について大幅な増益予想が示されたこと、さらには発行済み株式数(自社株を除く)の3.79%に当たる500万株、取得金額10億円を上限に自己株式を取得すると発表したことが株価に追い風となった。後段で述べる通り、建設・不動産業界は依然として不透明な情勢にあるが、LIFULLは「選択と集中」で事業規模の拡大と収益性を両立させる方針を示しており、こうした取り組みが評価されている側面もあるようだ。

今回はLIFULLの話題をお届けしよう。

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LIFULL、2022年9月期の営業利益は従来予想を40.1%上回る

11月9日、LIFULLが発表した2022年9月期(2021年10月1日~2022年9月30日)の連結業績は、売上収益が前期比0.4%減の357億3,000万円、営業利益は16億8,100万円(前期は66億4,400万円の営業赤字)となった。営業利益は従来予想の12億円から40.1%上回って着地した。

2022年9月期は、国内外においてLIFULLの主力事業である不動産関連情報サービスの継続成長に向けて、積極的な成長投資を実施。その一方で、不動産事業者向けインターネット・マーケティング事業やファッションのアグリゲーションサービスといった周辺事業の売却とその他投資計画の見直しおよび一時延期等により、主力事業への「経営リソースの集中」を実施した。その結果、営業利益、税引前利益、当期利益、親会社の所有者に帰属する当期利益については、前期に計上したのれんの減損損失の影響もあり、大幅に改善することとなった。

セグメント別(※セグメント間取引については、相殺消去していない)では、「HOME’S関連事業」の売上収益は前期比2.4%減少の260億8,300万円、セグメント利益は同85.2%減の3億4,900万円となった。同期はAI(人工知能)技術を活用した新機能の開発強化や、認知向上のための広告宣伝投資、クライアントネットワークの拡大等を積極的に推進した。その効果により、「LIFULL HOME’S」を活用した問合せ数は増加傾向を示した。しかし、その一方で引越者がコロナ前の水準と比べ減少していることや、アライアンスパートナーとの提携解消等の影響もあり、本格的な回復にはいたらなかった。

なお、主力事業である「LIFULL HOME’S」への成長投資に社内リソースを集中することを目的に、同セグメントに含まれていた、インターネット・マーケティング事業を営むLIFULL Marketing Partnersを2022年9月30日付で株式譲渡している。

海外事業における「ノンコア事業」を売却

一方、「海外事業」のセグメントは売上収益で前期比0.9%減の72億100万円、セグメント利益は同63.4%減の5億7,600万円となった。同期はグローバルにおける競争力強化に向けて、60を超える国や地域で展開する複数のWebサービスを活用し、各地域におけるユーザーシェアの拡大による広告価値の向上や、各サービスの高度化による集客効率の向上に取り組んだ。特にラテンアメリカにおいては、ポータルサイト「Properati」の事業譲受や、不動産事業者向けCRMの開発、運営をしているWasiの子会社化等積極的な投資を実施、既存サービスとの相互活用や、現地の営業力の強化等により、顧客数は拡大傾向を示した。

また、その一方で海外事業におけるノンコア事業であったファッションのアグリゲーションサイトについては、不動産を中心とする情報サービスに経営リソースを集中することを目的に、2022年7月28日付で株式譲渡している。

「その他」のセグメントは、売上収益で前期比25.3%増の27億4,500万円、セグメント損益は6億6,100万円の損失(前期は6億7,900万円の損失)となった。

LIFULLの経営戦略「選択と集中」に注目

上記の通り、LIFULLの2022年9月期は経営リソースの「選択と集中」に取り組んだ一年であった。その結果、営業利益、税引前利益、当期利益、親会社の所有者に帰属する当期利益については、前期に計上したのれんの減損損失の影響もあり、大幅に改善することとなった。

LIFULLは2023年9月期(2022年10月1日~2023年9月30日)についても、引き続き「選択と集中により、事業規模の拡大と収益性を両立させる」方針である。こうした「選択と集中」を大前提に、LIFULLは2023年9月期の連結業績予想について、売上収益で前期比3.6%増の370億円、本業の利益を示す営業利益で96.2%増の33億円となる見通しを示した。セグメント別では「HOME’S関連事業」の売上収益が前期比11.0%減の232億円、「海外事業」が同31.2%増の91億円、「その他」で72.5%増の47億円となる見通しである。

ちなみに、国土交通省の『建築着工統計調査報告』によると、2022年9月期の新築着工件数は前年度比2.3%増加したものの、資材不足等により、新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年9月期と比較すると7.0%減と依然として低い水準にある。同じく、引越し需要の手掛かりとなる総務省の『住民基本台帳人口移動報告』によると、国内の移動者数は移動制限の緩和等により、前年度比で0.9%増加したものの、2019年9月期に比べると2.4%減と低い水準にとどまり、完全な回復にはいたっていない。海外においても、国内と同様の先行き不透明な状況が継続している。

このような情勢を鑑みて、LIFULLは引き続き「選択と集中」に取り組み、事業規模の拡大と収益性を両立させる方針である。なお、冒頭で述べた通り、LIFULLは発行済み株式数(自社株を除く)の3.79%に当たる500万株、取得金額10億円を上限に自己株式を取得する。取得期間は2022年11月10日から2023年5月9日までとしている。

建設・不動産業界は依然として不透明な情勢にあるが、引き続きLIFULLの「選択と集中」に軸足を置いた経営戦略に注目しておきたい。■

(La Caprese 編集部)

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