街の洋菓子店で倒産が急増している。帝国データバンク(本社:東京都港区)が2024年6月7日に公表した調査報告によると、「街のケーキ屋さん」を中心とした洋菓子店の倒産(負債1,000万円以上、法的整理)は5月までに計18件発生した。2000年以降で最も多かった2019年(49件)を上回るペースで増加している。洋菓子店の倒産は閑散期となる夏以降に増加しやすく、2024年通年の倒産件数は過去最多を更新する可能性もある。
(図1) 出典:帝国データバンク
洋菓子店の倒産が急増した2019年は、コンビニなどの安価で手軽なスイーツとの競争激化に耐えられず、市場からの退出を余儀なくされたケースが多かった。しかし、2023年以降は砂糖や生クリームなど、洋菓子づくりにおける原材料のほぼすべてで発生した値上げラッシュに耐え切れず、事業継続をあきらめたケースが目立つ。
(図2) 出典:帝国データバンク
なかでも飾りつけなどに欠かせないチョコレートは、カカオ豆の不作に加えて円安の影響も加わり、欧州産など輸入品の平均価格は5年前に比べ価格が約2倍に上昇した。昨年の猛暑で収量減が目立ったフルーツも、全体の平均価格で5年前比1.4倍に値上がりした。価格が落ち着きつつあるのは、鳥インフルエンザによるダメージから回復した鶏卵などわずかにとどまる。原材料価格の上昇のみならず、電気代のほか、アルバイトなどの人手不足や人件費増も重なった。こうしたコストアップが続く一方、客離れへの懸念から十分に価格転嫁できたケースは少なく、やむなく店を畳む決断をしたケースも多かったとみられる。
足元では輸入レーズンや小麦粉など一層のコスト増が見込まれる食材もある。使用する原材料の見直しや価格改定・値上げなど、変化する経営環境に対する街の洋菓子店の対応力が問われている。■
(La Caprese 編集部)