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エッセイ:NISA恒久化だけでは不十分? 日本人が「金融知識に自信をもてるようになる」ために必要なこと

nisa,恒久化
(画像= beauty-box / 写真AC、La Caprese)

2022年9月22日、岸田文雄首相はニューヨーク証券取引所で演説し、日本国民が「資産所得を倍増し、老後のために長期的な資産形成を可能にするためには、NISA(少額投資非課税制度)の恒久化が必須だ」との考えを明らかにした。NISAの恒久化は、岸田総理が掲げる「資産所得倍増プラン」の柱になるとみられている。

週明けの9月26日には、鈴木俊一財務・金融相が全国証券大会のスピーチにおいて、政府が目指す「成長と分配」の好循環に向けて年末に総合的な資産所得倍増プランを策定すべく検討していることを明らかにした。さらに鈴木大臣は、「資産所得倍増プラン」の大きな柱になるのがNISAの抜本的拡充であり、NISAが国民の安定的な資産形成を促すうえでより良い制度になるようしっかり取り組むとも語った。

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日本の家計金融資産は2,005兆円、うち54.3%を現預金が占める

ちなみに、日本銀行調査統計局が今年8月31日に公表した『資金循環の日米欧比較』によると、2022年3月末現在の日本の家計金融資産は2,005兆円におよぶ。そして、その全体の54.3%を現預金で占めており、株式や投資信託、債務証券の割合は16.0%にとどまっている。一方の米国は現預金が13.7%、株式や投資信託、債務証券の割合は55.0%と日本とは真逆の構成比となっている。また、欧州(ユーロエリア)は現預金が34.5%、株式や投資信託、債務証券の割合は31.5%である。

(グラフ1)
(グラフ2)
(グラフ3)

鈴木俊一財務・金融相は前述のスピーチにおいて「家計が金融資産を拡大していくためには、預金として保有されている資産が投資にも向かい、持続的な経済成長の恩恵が家計にもおよぶ好循環をつくる必要がある」と語っており、NISA恒久化や抜本的拡充などが急務と考えられている。

NISA総口座数、20~30代を中心に増加傾向

ところで、日本証券業協会のデータによると、2022年3月末時点における証券会社のNISA総口座数(一般NISAとつみたてNISAの合計)は1,120万口座で、2014年の導入から8年間で118.3%増加した。また、2018年に導入したつみたてNISAはこの3年3カ月で7.5倍と急増している。

(グラフ4)
※端数処理(四捨五入)の関係で、総数と内訳が一致しない場合がある。
※増減割合は実数値を用いて算出しているため、端数処理されたグラフ中の数字を用いた計算結果とは合わない場合がある。
※番号未告知者の勘定未設定口座が2022年1月1日をもって廃止されたことにより、2022年の一般NISA口座数が一時的に減少している

また、NISA総口座数(一般NISAとつみたてNISAの合計)を年代別にみると、20~30代が最も多く329万口座に達している(グラフ5)。さらに、20~30代のNISA総口座数の67.5%を「つみたてNISA」が占めているのも大きな特徴である(グラフ6)。このことから「つみたてNISA」の普及が若い世代のNISA口座数の増加に寄与していると考えられる。

(グラフ5)
※各口座数は勘定設定口座数をベースとしているため、各年代の合計が総口座数と一致しない場合がある。
(グラフ6)※各口座数は勘定設定口座数をベースとしているため、各年代の合計が総口座数と一致しない場合がある。

「金融知識に自信がある」と回答した日本人は12%、米国人は71%

一方、金融広報中央委員会が公表した『金融リテラシー調査(2022年)』によると、2022年の「金融リテラシーの正誤問題(25 問)」の正答率は55.7%で、2016年の55.6%、2019年の56.6%に比べておおむね横ばいで推移している。

同じような金融リテラシーに関する調査は米国でも行われているのだが、「金融知識に自信がある」と回答した人の割合は、米国の71%に対して、日本は12%と大きく下回っているのが実情だ(グラフ7)。

(グラフ7)

恐らく、日米の「金融知識の自信」の違いが、前述の日本銀行調査統計局が公表した「家計の金融資産構成(円グラフ1、2)」の違いとなっているのかもしれない。「知識は力なり」とは英国の哲学者フランシス・ベーコンの主張に基づく格言であるが、日本人の多くが「金融知識に自信」をもてるようになるには教育が必要である。

金融庁は今年8月末、国家戦略として「金融教育」を推進するよう提言することが明らかになった。岸田総理が掲げる「資産所得倍増プラン」の柱として注目されるNISAの恒久化・抜本的拡充であるが、同時に多くの日本人が「金融知識に自信」をもてるよう金融教育の環境整備が求められる。■

(La Caprese 編集長 Yukio)

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