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エッセイ:医療分野で活用の可能性秘める「ASMR」。解明にまだまだ謎の部分も

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(画像= Canva、La Caprese)

「ASMR」をご存知だろうか? Autonomous(自主的な)、Sensory(感覚)、Meridian(絶頂)、Response(反応)というそれぞれの単語の頭文字に由来する造語で、日本語で「自律感覚絶頂反応」と直訳されることもある。何やら小難しく聞こえるかもしれないが、要するに見たり、聞いたり、触れるなどといった何らかの刺激によって得られる「心地よい感覚(反応)」のことである。

たとえば筆者の場合、ユーチューブやSNSなどで子猫の動画を見ると何ともいえない「心地よい感覚」になる。見るという視覚的な刺激だけでなく、子猫がゴロゴロと喉を鳴らす聴覚からの刺激、あるいは実際に猫カフェなどで子猫のモフモフした毛を撫でたとき(触覚の刺激から)も同じような「心地よい感覚」が得られる。また、お気に入りの作家の小説などを読んでいると文章のリズムが心地よく感じることもある。「いつまでも読んでいたい」という不思議な感覚になることも珍しくはない。

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新潟医療福祉大学、ASMRのリラクゼーション効果を確認

ちなみに、新潟医療福祉大学が2023年1月26日付の“Frontiers in Neuroscience”にて公表した研究論文で、ASMRのリラクゼーション効果が確認されている。

研究ではASMRの動画を見た場合と音だけを聴いた場合の効果を「機能的MRI」を用いて脳機能の面から比較を行った。その結果、音を聴くだけでも自律神経バランスに関与する島皮質(大脳皮質の一領域)の活性化がみられたことに加えて、動画を見た場合では側坐核(前脳に存在する神経細胞の集団)などの活性化もみられ、疼痛(とうつう)や抑うつ症状、不安症状の改善にも関与する可能性が示唆されたという。

新潟医療福祉大学は今回の研究成果について、ASMRの医療分野での活用を後押しすることが期待できる、との見解を示している。

現時点で、ASMR的に「これが正解」とは必ずしも言い切れない?

ところで、ユーチューブなどで「ASMR」と検索すると、睡眠導入効果を謳った動画コンテンツが散見される。リラクゼーション効果ということで、安眠効果も期待できそうなことは何となく想像がつく。ちなみに、フジ医療器が全国の20歳以上の男女3,484名を対象に実施した『第10回 睡眠に関する調査』によると、「睡眠への不満」がある人は94.0%に達していることが判明している。多くの人が睡眠に不満を抱いているわけで、睡眠導入効果を謳った動画コンテンツのニーズもあるのだろう。

とはいえ、心地よさを感じる感覚は人それぞれである。たとえば、筆者は冒頭で子猫の動画を見ると何ともいえない「心地よい感覚」になると書いたが、なかには猫が苦手な人も当然いることだろう。最大の問題は、視覚、聴覚、触覚などからASMR的に「これが正解」とは必ずしも言い切れないことである。前述の睡眠導入効果を謳った動画コンテンツについても、それが必ずしも誰にでも効果があるわけでないことに注意する必要がありそうだ。

今回紹介した新潟医療福祉大学の研究成果が示すように、ASMRは将来的に医療分野での活用の可能性を秘めているといえるが、まだまだ謎の部分も多く、さらなる解明が待たれるところである。■

(La Caprese 編集長 Yukio)

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