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エッセイ:むかし、キャバクラ。いま、村神様。

村神様,流行語大賞
(画像= minaa_key / 写真AC、Canva、La Caprese)

筆者は新聞や雑誌、Webサイトなどメディア関係の仕事に携わって30年以上になる。そんな筆者にとって、『新語・流行語大賞』は思い出深いイベントの一つだ。

学生時代、筆者は編集プロダクションのアルバイトで『新語・流行語大賞』の原稿を執筆したことがあった。1985年の話である。当時の『新語・流行語大賞』は新語部門と流行語部門に分かれていたのであるが、いまでも鮮明な記憶として残っているのはフランス語由来の「キャバレー」と英語由来の「クラブ」を合成した造語『キャバクラ』が新語の表現賞を受賞したことだった。

当時の夜のお店のなかには、料金体系の不明瞭な「怖いお店」も少なくなかった。筆者の周りでも「怖いお店」で怖いお兄さんに身ぐるみ剥がされたような話が普通に聞かれた時代である。それだけに、キャバレーのような明朗な時間制料金で、クラブの高級感を合わせもつ『キャバクラ』は、安心して遊べる画期的な夜のお店として一世を風靡していた。

『新語・流行語大賞』では、これまで数多くの新語や流行語が登場しているが、『キャバクラ』のように世の中に広く浸透し、すっかり定着したワードも珍しいのではないかと思う。

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2022年の流行語年間大賞は『村神様』

さて、今年も12月1日に『現代用語の基礎知識選 2022ユーキャン新語・流行語大賞』が発表された。

今回、流行語年間大賞を受賞したのは『村神様』だった。

プロ野球の東京ヤクルトスワローズで不動の4番として、今季は日本選手最多となる56本のホームランを放ち、最年少で3冠王を獲得した村上宗隆内野手。そんな村上選手の神様のような大活躍から、ファンの間で村上の「上」を「神」にもじった『村神様』という愛称がつけられ、いつしかメディアでもそう呼ばれるようになった。

SNSでも村上選手が活躍するたびにトレンド入りするシーンがみられたほどだ。

『Yakult1000』もトップ10入り

もう一つ、筆者が今年の『新語・流行語大賞』で注目したのは、『Yakult(ヤクルト)1000』がトップ10に選ばれたことである。

宅配商品の『Yakult1000』は、生きて腸内まで到達する「乳酸菌 シロタ株」が1本(100ml)当たり1,000億個入った乳製品乳酸菌飲料である。ヤクルト本社 <2267> のWebサイトでは、100ml当たり1,000億個の「乳酸菌 シロタ株」はヤクルト史上最高密度であり、一時的な精神的ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」「睡眠の質向上」の機能が紹介されている(注:疾病の診断・治療・予防を目的としたものではない)。

そんな『Yakult1000』はSNSなどでも評判を呼び、全国的に品薄状態となった。ヤクルト本社も生産体制の増強で対応しているが、インターネットで注文できる「ヤクルト届けてネット」の新規申し込み・追加注文は依然として休止した状態が続いている(2022年12月3日現在)。

『Yakult1000』は、新型コロナウイルス禍の健康志向を象徴するようなワードといえるだろう。

来年はどんなワードが人気化し、どんな商品が大ヒットするのか

ちなみに、ヤクルト本社が今年11月11日に発表した2023年3月期・第2四半期(2022年4月1日~9月30日)の連結業績は、売上高が前年同期に比べて14.7%増の2,327億8,500万円、本業の利益を示す営業利益は同26.9%増の352億9,600 万円、経常利益は17.4%増の419億6,800万円、純利益は5.2%増の269億1,800万円と増収増益だった。また、ヤクルト本社の株価は11月28日に一時8,880円まで買われ、年初来の高値を更新する場面もみられた。今年1月19日につけた年初来安値の5,620円から10カ月あまりで58.0%の上昇であった。

2022年はプロ野球界で村上宗隆選手が大活躍する一方で、新型コロナ禍の健康志向の高まりとともに『Yakult1000』が大ヒット、東京証券取引所ではヤクルト本社の株価が58.0%上昇する場面がみられた。新語・流行語は、その時代を映す鏡のようなものだと思う。来年はどんな新語・流行語が脚光を浴びるのだろうか。そして、どんな商品が大ヒットし、株式市場でどんな企業が人気化するのだろうか。引き続き注視していきたい。■

(La Caprese 編集長 Yukio)

連載:編集長エッセイ
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