2022年12月6日、ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業（本社：神奈川県横浜市）は、（1）健康の維持に重要な生体因子「FGF21」が線維芽細胞に働きかけ、「コラーゲンを保護するタンパク質」の遺伝子発現を増やすこと、（2）チョウジエキスとセイヨウノコギリソウエキスは、線維芽細胞において「FGF21」を受け取る役目を担う受容体の遺伝子発現を促すこと……を発見したことを明らかにした。
ちなみに、「FGF21」は線維芽細胞増殖因子（Fibroblast Growth Factor）の一つ。線維芽細胞の増殖促進作用を持つためこの名がついたが、他にも多くの作用を持つことが知られている。また、上記「コラーゲンを保護するタンパク質」はデコリンと呼ばれ、肌のハリや弾力の形成に重要なⅠ型コラーゲンと結合し、コラーゲン分解酵素から守る働きを有する。
ポーラ化成工業は、今回の発見を活用することで「コラーゲンを守り、シワやハリの低下を抑制することが期待される」との見解を示している。
今回はポーラ化成工業の研究成果を紹介したい。
近年、医学や薬学の分野で注目される「FGF21」
FGF21は、糖や脂質の代謝改善をはじめさまざまな作用を持つことから、健康の維持に重要な因子として医学や薬学の分野で近年注目されている（図1）。しかしながら、FGF21がメラニンの生成を抑制する作用を持つことは報告されているものの、肌への作用はまだ一部しか分かっていないのが実情であった。そこで、ポーラ化成工業では、FGF21が肌を健やかに保つうえでも重要な役割を担うのではと考え、検証した。
まず、FGF21が真皮に及ぼす影響を確認するため、培養した真皮線維芽細胞に添加したところ、コラーゲン（皮膚に最も多く含まれるⅠ型コラーゲン）を分解酵素から保護するタンパク質の遺伝子発現を促進することが判明した（図2）。コラーゲンの分解はシワや肌のハリ低下などにつながることから、FGF21の作用を高めることができれば、ハリや弾力のある肌が維持できると考えられる。
ポーラ化成工業、FGF21の受容体を増やすエキスを発見
ちなみに、FGF21は主に肝臓でつくられ「血流にのって肌まで運ばれる」ため、肌ケアによってFGF21を増やすことは困難である。そこで、線維芽細胞のFGF21を受け取る効率を高めることが、FGF21の作用を高めるうえで効果的と考え、FGF21受容体（補足資料1）を増やすエキスを探索した。その結果、チョウジエキスとセイヨウノコギリソウエキスにその効果を見出した（補足資料2）。また、これらのエキスを添加した線維芽細胞では、実際にFGF21によるコラーゲン保護タンパク質の産生促進が強化されることも確認できた（補足資料3）。
細胞の表面にある「FGF21受容体」は2種類のタンパク質の複合体であり、FGF21受容体がFGF21を受け取ると、細胞内に信号が伝達され、さまざまな作用を発揮する（図3）。
繊維芽細胞において、FGF21受容体の発現を促進するエキスを探索した。FGF21受容体は、補足資料1で示したように2種類のタンパク質の複合体である。したがって、FGF21を受け取る効率を高めるには両方のタンパク質を増やす必要がある。エキス探索の結果、チョウジエキスとセイヨウノコギリソウエキスに各タンパク質の遺伝子発現を増やす効果を見出した（図4）。
FGF21受容体を増やすエキスにより、実際にコラーゲン保護タンパク質（デコリン）が増加するかを検証した。あらかじめエキスを添加しFGF21 受容体の発現を促した線維芽細胞では、エキスを添加しなかった場合よりもFGF21 によるデコリンの遺伝子発現が多くなることが確認できた。これは、線維芽細胞のFGF21受容体の発現が高まり、FGF21のデコリンの産生を促す信号をより多く受け取ることが可能となったためだと考えられる。（図5）。
ポーラ化成工業は、今回の研究成果について「健康維持に重要なFGF21の作用を高め、コラーゲン保護タンパク質を増やす、という新しいケアの確立が期待できる」との見解を示している。引き続き、ポーラ化成工業の取り組みに注目していきたい。■
（La Caprese 編集部）
