大正製薬 <4581> は、細胞内に存在するミトコンドリアを活性化する酵素「マイトリガーゼ」と肌老化の関係に着目した研究に取り組んでいる。
2006年、「マイトリガーゼ」は東京薬科大学の柳茂教授(現在は学習院大学・教授)により、ミトコンドリアに存在する酵素として発見された。かねてよりヒトの細胞内に存在するミトコンドリアの働きに着目し、「ミトコンドリアが肌老化におよぼす影響」について研究を進めていた大正製薬の研究チームは、この「マイトリガーゼ」が細胞の若返りの鍵を握るのではないかと考え、柳茂教授との共同研究に着手した。
そして2021年、「マイトリガーゼ」と肌老化の関係を世界で初めて解明。年齢とともに気になる肌悩みの引き金となっているのが、「マイトリガーゼ」の減少による老化の加速である可能性を見出した。これは、裏を返せば「マイトリガーゼ」の減少を防ぐことが、若々しさを保つ上で重要なアプローチになることを意味している。
大正製薬では「マイトリガーゼ」を増やす成分についても研究を進めており、実際に肌の細胞への効果も確認している。しかも、この研究成果は肌だけでなく、髪や体全体のエイジングケアにも有用性が期待できるものであるという。
今回は大正製薬の皮膚科学研究の話題をお届けしよう。
ミトコンドリアから紐解く肌老化…若々しさの鍵を握る「マイトリガーゼ」
年齢を重ねると肌のシワ、シミなどが目立つようになり、見た目の若々しさが失われていく……その主な原因は、私たちの体を構成している「細胞の老化」にある。そのメカニズムを解明する手がかりとなるのが、人の体重の10%を占めるといわれる「ミトコンドリア」だ。
ミトコンドリアは、細胞の中でエネルギーを生み出す大切な役割を担っている。若く健全なミトコンドリアは、細胞内でネットワークを作って細胞全体にエネルギーを行き渡らせているのだ。一方でネットワークが形成できなくなったミトコンドリアは、十分にその役割を果たすことができない。エネルギーを得られなくなった細胞は機能が衰え、老化が進むことになる。
そこで注目されるのが、ミトコンドリアの中に存在する酵素「マイトリガーゼ」である。大正製薬は柳茂教授との共同研究を進める中で、「マイトリガーゼ」に着目した、若々しさを保つためのメカニズムを世界で初めて解明した。これまでの具体的な研究成果は以下の通りだ。
(1)エイジングに伴い「マイトリガーゼ」が減少する。
(2)「マイトリガーゼ」の減少がミトコンドリアネットワーク崩壊、ミトコンドリア機能低下を引き起こす。
(3)「マイトリガーゼ」が減少した皮膚では、慢性炎症が生じ、老化が更に加速される可能性がある。
(4)「マイトリガーゼ」を増やす成分で老化を食い止める効果が期待できる。
(1)エイジングに伴い「マイトリガーゼ」が減少する
本研究により、老化した肌細胞では「マイトリガーゼ」の量が少なくなっていることが判明した。さらに、「マイトリガーゼ」が少ない細胞で皮膚モデルを作成すると、老化した肌に見られるような「ぶ厚くて粗い構造」が確認できた。
肌の若々しさを保つためには、ターンオーバーが保たれて細胞が生まれ変わることが重要である。しかし、「マイトリガーゼ」の減少などにより細胞の機能が衰えると、細胞の生まれ変わりが停滞する。その結果、表皮には古い角質が蓄積し、透明感が失われ、乾燥やシワも目立つようになる。
(2)「マイトリガーゼ」の減少がミトコンドリアネットワーク崩壊、ミトコンドリア機能低下を引き起こす
また、細胞内に存在するミトコンドリアを観察する中で、正常時の肌細胞ではミトコンドリアがネットワークを作っているのに対し、「マイトリガーゼ」が失われた肌細胞ではミトコンドリアがバラバラにちぎれ、さらに有害な活性酵素の産出量が増えていることが判明した。
これにより、「マイトリガーゼ減少→ミトコンドリアネットワーク崩壊→細胞活性低下→肌老化」という新しい老化メカニズムが示唆された。つまり、「マイトリガーゼ」の減少が引き金となり、肌老化(シミ、乾燥、シワなど)につながるということになる。また、逆に「マイトリガーゼ」の減少を防ぐことができれば、ミトコンドリアや細胞が健やかに保たれ、ハリと透明感に満ちた若々しい肌が続くことが期待できる。
(3)「マイトリガーゼ」が減少した皮膚では、慢性炎症が生じ、老化が更に加速される可能性がある
細胞は老化すると、さまざまな炎症性物質を発生させて周囲の細胞まで老化させる。研究をさらに深める中で、「マイトリガーゼ」が減少した肌細胞では炎症反応が起きていることが判明した。「マイトリガーゼ」が減り続けると肌細胞では炎症が続き、老化が加速するという悪循環が起きている可能性がある。
(4)「マイトリガーゼ」を増やす成分で老化を食い止める効果が期待できる
ちなみに、大正製薬はこれまでの研究で「マイトリガーゼ」の減少を防ぐことができる成分を多数発見している。そして、それらの成分の中で、モモ、ハマメリスの葉、ボタンの根(ボタンピ)抽出物を組み合わせると、肌表面の美しさやバリア機能がアップする可能性を発見した。さらに、年齢とともに失われていく肌のうるおい、ハリ、弾力を高める効果も期待できる。
いつまでも若々しく、健康で美しくあり続けるために
年齢を重ねるにつれて現れる変化は、心身に大きな影響をおよぼす。こうした中で、大正製薬は「マイトリガーゼ」を細胞の若返りの鍵と考え、いつまでも若々しく、健康で美しくあり続けたいと願う生活者の方々に貢献できるよう、研究を継続する方針だ。肌、髪、体、そして体の内側にも着目した「マイトリガーゼ」研究をおこなうことで、その成果を幅広いエイジングケア商品の開発に活用していく計画である。
大正製薬のさらなる研究成果を期待したい。■
(La Caprese 編集部)