2024年6月4日、東京証券取引所でセイコーグループの株価が一時4,650円まで買われ、年初来高値を更新した。2023年10月30日の安値2,272円から7カ月ほどで104.7%の上昇である。
セイコーグループは、東京都中央区に本社を置く精密機器メーカーである。その源流は、1881年に服部金太郎氏が創業した時計の小売・修理の店「服部時計店」にまでさかのぼる。以来、国産初の腕時計や世界初のクオーツウオッチを発売するなど、革新的な商品を世に送り出してきた。現在ではグループ各社がウオッチをはじめ、電子デバイス、情報機器、クロックなど、多様な事業を展開している。セイコーグループは、それらグループ各社の連結経営管理を担う中心的企業である。
後段で述べる通り、セイコーグループが公表した、❶2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績が増収増益となったことに加え、❷2025年3月期・通期(2024年4月1日~2025年3月31日)の連結業績予想についても増収増益となる見通しが示されたこと、❸さらに、2025年3月期の年間配当予想を前期比10円増の90円に増配する方針を示したこと……など好調な業績が株価のサポート要因となっている。
今回はセイコーグループの話題をお届けしよう。
セイコーグループ、純利益は99.9%増
5月14日、セイコーグループは2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績を公表した。同期の経営成績は、売上高が前期比6.3%増の2,768億円、本業の利益を示す営業利益は同31.2%増の147億円、経常利益は同42.3%増の158億円、純利益は同99.9%増の100億円と増収増益となった。
同期は、エモーショナルバリューソリューション事業の国内市場向けのウオッチ事業、和光事業がインバウンド需要を背景に大きく売上を伸ばしたほか、海外市場向けのウオッチ事業も欧州・アジア地域で伸長して、売上高は前年度を上回った。一方、デバイスソリューション事業は中国経済停滞の長期化やデバイス領域全般における在庫調整など事業環境が低迷する中で、売上高は前年度を大きく下回ったものの、一部製品で需要回復の兆しが見られた。システムソリューション事業は多角化やストックビジネス拡大への取組みが引き続き奏功して、前年度を上回る売上高となった。その結果、セイコーグループの売上高は上記の通り、前期比6.3%増の2,768億円と伸長した。
ちなみに、同期の広告宣伝販促費は前年度に対して約10%増加し、販売費および一般管理費は前年度から73億円増加した。営業利益は、エモーショナルバリューソリューション事業が牽引し、前年度から35億円改善の147億円(同31.2%増)となった。営業外収支は、受取利息や受取配当金の増加等により前年度から12億円改善し、経常利益は前年度を47億円上回る158億円(同42.3%増)となった。特別損益は、特別利益として固定資産売却益など15億円、特別損失として事業構造改善費用、減損損失、情報セキュリティ対策費など合わせて23億円を計上した。純利益は国内事業会社の収益改善に伴い法人税等調整額が減少したことなどにより、同99.9%増の100億円と大幅な増益となった。なお、同期の平均為替レートは1米ドル144.7円、1ユーロ156.8円であった。
セグメント別の概況は以下の通りである。
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エモーショナルバリューソリューション事業(EVS事業)
EVS事業の売上高は前期比10.3%増の1,883億円、営業利益は同49.1%増の172億円と大きく伸長した。
国内のウオッチは、新型コロナウイルス禍からの回復が進んだことで回復基調となり、さらにインバウンドの好影響も受け「グランドセイコー」「セイコープロスペックス」を中心に前年度から大きく売上高を伸ばした。また、海外でも「セイコープレザージュ」「セイコー5スポーツ」などが伸長し、売上高は前年度から増加した。ウオッチムーブメントの外販ビジネスは、中国経済低迷の影響を受けたものの、為替の影響もあり、売上高は前年並みで推移した。
和光事業は好調なインバウンド需要を背景に大きく伸長した。クロック事業は海外向けで中国経済の低迷を受けるなどの影響で減少したものの、タイムシステム事業は伸長した。
デバイスソリューション事業(DS事業)
DS事業の売上高は前期比9.5%減の583億円、営業利益は同58.1%減の21億円となった。
同期は、中国経済の停滞が長期化したことに加え、電子デバイス市場での在庫調整が継続している影響により、サーマルプリンタを始め、半導体製造装置向けの高機能金属、精密部品等が低迷し、前年度から大幅な減収減益となった。しかし、酸化銀電池や水晶など一部の事業は調整局面から回復傾向を示しつつある。
システムソリューション事業(SS事業)
SS事業の売上高は前期比10.5%増の404億円、営業利益は同8.0%増の47億円となった。
同期は継続したデジタル需要拡大の追い風もあり、性能管理・セキュリティ関連ビジネスなどデジタルインフラを支える事業や、電子契約等の業務プロセスDX化ソリューションが業務拡大を牽引した。ちなみに、SS事業は32四半期連続で増収増益を記録している。
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経営基盤の強化と、株主への利益配分を重視
5月14日、セイコーグループは2025年3月期・通期(2024年4月1日~2025年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比8.4%増の3,000億円、本業の利益を示す営業利益で同15.3%増の170億円、経常利益で同7.0%増の170億円、純利益で同9.4%増の110億円と増収増益となる見通しを示した。セイコーグループは同期について、EVS事業のウオッチ事業、和光事業やSS事業については引き続き堅調に推移するとの見解を示したほか、DS事業については回復の見通しであるとの認識を示した。
なお、冒頭で述べた通り、セイコーグループは2025年3月期の年間配当予想を前期比10円増の90円に増配する方針を示した。セイコーグループは利益配分について、経営基盤強化のための内部留保の充実と、株主への安定的な利益配分を重視することを基本方針とした上で、株主への主要な利益還元施策を配当による還元とし、配当性向30%以上としていることを明らかにした。2025年3月期の増配計画は、上記の通り、増収増益となることを前提としたものである。
引き続き、セイコーグループの業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)