2023年1月11日、日本メナード化粧品(愛知県名古屋市)は、ヒトのルーツを探る手掛かりとされるミトコンドリアハプログループ(以下、ハプログループ)を指標にした『日本人のルーツと肌質との関連性』について解析、その結果を公表した。
本研究では、20代~50代の女性358名を対象に、ハプログループと肌表面の角質細胞の大きさについて解析した。その結果、「南方諸島から日本列島に移住してきたと考えられている『ハプログループF』の女性は、角質細胞の大きさが大きく、肌のターンオーバーが遅延しやすい傾向にある」ことが判明した。本研究成果は、日本人のルーツの違いがその人の肌質に関係している可能性を示唆する、大変興味深いものとなった。
なお、本研究成果は、国際科学誌「Experimental Dermatology」オンライン版に掲載された。
今回は日本メナード化粧品の研究成果を紹介しよう。
母親から子に受け継がれる「ミトコンドリアDNA」
私たちの細胞の中には、ミトコンドリアと呼ばれる小器官がある。ミトコンドリアは、細胞の核にあるDNAとは別に独自の「ミトコンドリアDNA(mtDNA)」を持っている。このmtDNAは、母親から子に受け継がれる特性があり、長い年月をかけて変異しながら次世代に受け継がれるため、現在ではいくつかのmtDNAの型が存在している。そして、この型を系統的に分類したものが「ハプログループ」である。
現在、ハプログループ(mtDNAの型)を調べることで、そのハプログループがどこの地域に多く存在しているのか、またそれをたどることで、ヒトのルーツを知るための研究にも活用されている。つまり、自身のハプログループを知れば、祖先がどこから来たのかを推測でき、自身のルーツを探る指標としても有用な手段の一つと考えられている。(図1)
「ハプログループF」は加齢に伴い肌のターンオーバーが遅延し易い
今回、日本メナード化粧品は日本人のハプログループと肌質との関連性に着目し研究を進めた。まず、冒頭で述べた通り、358人の日本人女性のmtDNAについて遺伝子解析を行い、ハプログループに分類した(図2)。
次に、上記(図2)の各ハプログループと肌のターンオーバーの速さの関係について解析した。なお、本研究では、環境要因をできるだけ排除するために、紫外線曝露が少ない前腕内側から、テープストリッピングにより角質細胞を採取し、その角質細胞の大きさを測定することで肌のターンオーバーの状態を推測した。一般的に、ターンオーバーの速度が遅いほど角質細胞の大きさが大きくなることが判明している。
解析の結果、「ハプログループF」に属する女性は、加齢に伴って角質細胞の大きさが大きくなる割合が高いことが判明した(図3)。すなわち、「ハプログループF」に属する女性は、加齢に伴い肌のターンオーバーが遅延しやすい傾向があることが示唆された。
ちなみに、「ハプログループF」はタイやラオスを含む東南アジアで最大のグループと報告されており、日本人でこのハプログループに属する人は、南方諸島から日本列島に移住してきたのではないか、と考えられている。日本メナード化粧品は、引き続き「個々の肌質の違いが何故生じるのか?」について、日本人のルーツからさらに詳細な解析を進める方針である。
日本メナード化粧品のさらなる研究成果に注目したい。■
(La Caprese 編集部)