レモンアイアンウッド葉エキスに、表皮幹細胞の老化を抑制する効果があることを発見――。2024年5月20日、資生堂(本社:東京都中央区)からそのような研究成果が公表された。本研究はマサチューセッツ総合病院皮膚科学研究所(CBRC)との共同研究により表皮幹細胞の老化制御の可能性を明らかにした知見を応用したものである。

レモンアイアンウッドは、葉にレモンのような芳香をもつフトモモ科の植物で、原産地のオーストラリアでは古くから薬草として活用してきたことが知られており、学術的にも抗菌作用や抗酸化作用など様々な効用が研究されている。資生堂が公表したレモンアイアンウッド葉エキスの研究では、上記に加え、表皮幹細胞の量を増加させ、細胞を生みだす力を向上させる効果も見出した。これにより、肌のターンオーバーの源となる表皮幹細胞を健やかに保ち、エイジングによる肌悩みの解決につながる可能性が示唆された。
資生堂は、今後も表皮幹細胞研究を進化させ、エイジングによるさまざまな肌悩みへのアプローチを目指す方針だ。なお、本研究の成果の一部は、2023年5月10日~13日に東京にて開催した国際研究皮膚科学会(International Societies of Investigative Dermatology: ISID)にて発表した。
表皮幹細胞研究を進化させ老化による肌悩みにアプローチするレモンアイアンウッド葉エキスを発見
肌のターンオーバーは表皮の細胞が絶えず増殖・分化することで起こり、健やかな肌の維持に役立っている。その細胞の供給源となるのが、基底層に存在する表皮幹細胞だ。資生堂は、これまで表皮幹細胞を健やかに保つことが美しい肌の実現にとって非常に重要であると考え、表皮の基底層の下にある基底膜を介して表皮幹細胞の量の維持をサポートすることで、肌の保湿やバリア機能、さらに真皮のコラーゲン産生にも寄与することを発見してきた。
さらに、表皮幹細胞の量だけではなく表皮幹細胞の質に着目し、マサチューセッツ総合病院皮膚科学研究所(CBRC)との共同研究で表皮幹細胞の老化を抑制するRNA結合タンパク質YBX1がリン酸化により機能低下し、細胞老化を引き起こすことを明らかにした。本研究では、これまでの知見を応用し、化粧品原料での表皮幹細胞の質の向上の実現を目指した。
レモンアイアンウッド葉エキスは表皮幹細胞の老化を抑制し、さらに表皮幹細胞の増殖性も向上させる
表皮幹細胞の老化を抑制するYBX1は、リン酸化により機能が低下することが確認されている。今回、100種類以上の化粧品原料の中から、オーストラリア原産の植物、レモンアイアンウッドから抽出したレモンアイアンウッド葉エキスが、表皮幹細胞を含む培養細胞において、YBX1のリン酸化を抑え、表皮幹細胞の老化を抑制することを見出した(図2)。

また、YBX1が表皮幹細胞の老化を防ぐメカニズムとしては、老化した細胞から分泌されて老化の伝播を引き起こすSASP因子の産生を抑制することが知られているが、本研究ではレモンアイアンウッド葉エキスを添加した培養細胞で、SASP因子の一つであるIL-8の産生が抑えられていることが判明した。
加えて、レモンアイアンウッド葉エキスにより、表皮幹細胞のマーカー遺伝子であるMCSPの発現が増加し、細胞の増殖性も向上した(図3)。このことから、レモンアイアンウッド葉エキスは表皮幹細胞の老化を抑制する効果を持つとともに、表皮幹細胞の量を増加させ、細胞を生みだす力を向上させる効果があることが示唆された。
資生堂は、本研究で得た知見を肌のターンオーバーの源である表皮幹細胞を健やかに保つソリューションとして応用し、エイジングによるさまざまな肌悩みにアプローチする方針である。
資生堂のさらなる研究成果を期待したい。■
(La Caprese 編集部)