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アステナホールディングス、株価は年初来高値。2023年11月期・第3四半期の営業利益は60.8%増

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※画像はイメージです。(画像= tomoko_AC / 写真AC、La Caprese)

2023年10月20日、東京証券取引所でアステナホールディングスの株価が一時529円まで買われ、年初来高値を更新した。今年1月16日の安値400円から9カ月余りで32.3%の上昇である。

アステナホールディングスは、ファインケミカル事業やHBC・食品事業、医薬事業、化学品事業などを手がける企業を傘下に置く持株会社である。その源流は、1914年に薬種問屋として創業した「岩城市太郎商店」にまでさかのぼる。1963年には商号をイワキに変更し、長らくイワキグループとして事業を展開してきた。そして、2021年に持株会社体制へ移行するとともに、現在のアステナホールディングスに商号を変更している。ちなみに、アステナとは、「明日(未来)」と「サステナブル(持続可能)」を組み合わせた造語である。新たな経営・ガバナンス形態のもとで、ステークホルダーとともに「持続的に健やかな未来を迎えられるように」との願いが込められている。

後段で述べる通り、アステナホールディングスが10月13日に公表した2023年11月期・第3四半期(2022年12月1日~2023年8月31日)の連結業績で、営業利益と経常利益が大幅な増益となったことが株価にも刺激材料となったようだ。

今回はアステナホールディングスの話題をお届けしよう。

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アステナホールディングス、営業利益は60.8%増

10月13日、アステナホールディングスは2023年11月期・第3四半期(2022年12月1日~2023年8月31日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前年同期比10.1%増の406億7,400万円、本業の利益を示す営業利益は同60.8%増の6億8,500万円、経常利益は同52.9%増の7億9,000万円、純利益は同65.4%減の2億900万円となった。

同期は、新型コロナウイルス禍の行動制限緩和を背景に経済活動の正常化が進み、雇用・所得環境が改善する一方、原材料価格やエネルギーコストの高騰、長期的な円安傾向などで物価上昇が止まらないなど、先行き不透明な状況が継続した。

こうした経営環境のもと、アステナホールディングスでは、2030年11月期に向けた中長期ビジョンおよび2025年11月期に向けた中期経営計画を推進し、さらなる成長と企業価値の向上を目指す事業運営に取り組んできた。2023年11月期・第3四半期は、第2四半期に続き、❶スペラネクサス社(ファインケミカル事業)において医薬品原料の販売や新薬メーカー向け新規案件が好調であったこと、❷イワキ社(HBC・食品事業)において機能性食品等の原料需要増に加え、新規受注の獲得により販売が好調だったこと、❸岩城製薬(医薬事業)において新製品の市場シェアが拡大したことなど……により売上高が伸長した。医薬事業の医療用医薬品部門においては、資源価格・人件費・エネルギーコストの高騰の影響を即時に販売価格に転嫁できない医療用医薬品市場特有の事業環境の影響等も受けているものの、連結収益の回復は進展した。

なお、主要セグメントの概況は以下の通りである。

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ファインケミカル事業

ファインケミカル事業の売上高は前年同期比6.8%増の118億4,700万円、営業利益は同62.6%減の6,300万円となった。

医薬品原料部門のスペラネクサス社では、商社機能においてジェネリック医薬品向けの原料や新薬メーカー向け中間体の販売製造機能で稼働開始した高薬理活性原薬製造設備のさらなる受託案件の獲得に注力した。その結果、ジェネリック医薬品の新規開発品目への原料販売や新薬メーカー向け新規案件が前年を上回り、売上高は好調に推移した。

CDMO部門のスペラファーマ社では、第2四半期に引き続き、大手新薬メーカーやベンチャー企業への営業活動の強化、受託案件の利益率向上を推進したほか、治験薬製造オペレーションのさらなる効率化と専門的研究人材の人員増による受託キャパシティの拡大に取り組んだ。一方、JITSUBO社は、海外のグローバルメガファーマなどを含むペプチド・核酸領域に存在感を持つ医薬品メーカーに対する中分子医薬品の開発支援サービスの営業活動に注力した。その結果、CDMO部門全体では新規受注の一層の獲得を果たし、売上高は伸長を続け今後の収益性の向上が期待できる環境が整ってきた。

HBC・食品事業

HBC・食品事業の売上高は前年同期比21.1%増の126億5,100万円、営業利益は1億9,100万円(前年同期は9,100万円の営業損失)となった。

イワキ社の食品原料部門では、消費者の健康意識の高まりによる機能性食品の需要増に加え、自社品の販売強化、企画機能・提案力を活かした既存顧客の取引拡大や新規受注の獲得により、売上は堅調に推移した。また、加工食品・機能性食品の原料検索システムである「i-Platto(アイプラット)」の提供を開始し、多様化する顧客ニーズに迅速かつ的確に対応する機能を強化した。化粧品原料部門では、国内の化粧品需要は回復基調にあるものの、アジア市場の回復の遅れにより売上は低調だった。

ファルマネット部門は、一般用医薬品等の卸売事業の撤退を進める途上で、政府の新型コロナウィルス感染症に対する水際対策解除に伴うインバウンド需要の回復により、売上・利益とも当初計画を上回って推移した。

化粧品通販部門のアプロス社では、定期会員数減少等の影響により、売上が低調に推移した。しかしながら、一部媒体での新規獲得は伸長しており、今後の収益改善が見込まれる。また、マルマンH&B社では、自社企画の健康食品やシートマスク「ピュレア」および輸入化粧品の販売が堅調に推移した。12月にグループ会社となったアインズラボ社では、主要顧客の集まる東京地区での営業を強化した結果、受注が前年を上回り堅調に推移した。

医薬事業

医薬事業の売上高は前年同期比10.2%増の98億4,500万円、営業利益は同25.6%増の4億8,800万円となった。

医療用医薬品部門では、岩城製薬が昨年12月に新製品として販売を開始した抗真菌薬であるルリコナゾール軟膏・クリームが引き続き市場シェアを拡大し好調に推移した。また、同業他社の一部製品が販売中止になったことによる代替需要の発生から、ゲンタマイシン軟膏やピコスルファートナトリウム内用液なども伸長した。一方、7月1日には帝人ファーマ社より製造販売承認の承継を受けたボンアルファ・ボンアルファハイも想定を上回る売上となり、好調な滑り出しとなった。他方、原材料価格やエネルギーコストの高騰は継続しており、医療用医薬品の薬価制度では原価上昇分を即時に価格転嫁し得ないため、収益性は低下した。

岩城製薬佐倉工場では、既存製造受託品の販売が計画を上回って好調に推移した。引き続き製造受託品の安定供給に注力するとともに、小集団活動などを通した製品品質およびオペレーション効率の継続的改善に取り組んだ。また、同社では高活性注射剤製造棟の改修を行い、今秋に稼働開始し得る体制の確保に向け準備を進めた。このほか、固形製剤の製造受託キャパシティの拡大に向けた設備投資を進めた。

また、美容医療部門では、岩城製薬が新製品のクレンジングクリーミージェルを今年8月から発売を開始し、好評を得た。

化学品事業

化学品事業の売上高は前年同期比2.1%減の63億2,300万円、営業損失は4,800万円(前年同期は1億3,000万円の営業損失)となった。

メルテックス社の表面処理薬品部門では、主力の半導体電極形成用薬品、微細配線形成用薬品、受動部品向けめっき薬品の販売促進に注力した。プリント基板、電子部品関連市場が世界的な需給の不均衡により低迷する中、微細配線形成用薬品、受動部品向けめっき薬品の販売も低調に推移した。しかしながら、長年活動してきたスマートフォン向けのコネクター用薬品の日本企業への採用が決まり、今後市場が回復するに伴い販売が大きく伸長するものと期待している。

また今期は、原材料価格やエネルギーコストの上昇分の価格転嫁を進め、人件費も含めた製造原価・販売費および一般管理費の見直しに努め、損益分岐点売上高を大きく引き下げることに成功した。今後、市場の回復に伴い、表面処理薬品の需要が増加することで、従前よりも高い収益性を実現することが期待される。表面処理設備部門では、東京化工機における工場拡張に伴う受注キャパシティおよび受注件数増加により、業績は好調に推移した。

その他事業

その他事業の売上高は前年同期比376.0%増の600万円、営業損失は7,700万円(前年同期は2,800万円の営業損失)となった。

アステナミネルヴァ社では引き続き、石川県奥能登地域における社会課題解決を目的とした新規事業を企画運営するとともに、複数の事業有限責任組合を通じて投資した企業と協調して事業を推進した。新規事業の企画を行うアステナミネルヴァ社を中心とし、地域資源を生かした商品の販売を行うAMトレーディング社、人材事業を発起点として石川県内企業との連携を進めるイシカワズカン社、大学と連携し循環型農業・畜産業を推進するPIXTURE社(非連結子会社)、投資を通して当事業を加速させる奥能登SDGs投資事業有限責任組合、TUAT1号投資事業有限責任組合とともに、新規事業を進める体制づくりに注力した。

なお、アステナミネルヴァ社が行うふるさと納税事業の現地決済型ふるさと納税サービス「ふるさとNOW」では、目標を上回る自治体との契約・導入が決定している。AMトレーディング社では、能登の地域資源を活用した通販サイト「Noto regionale+」をオープンし、中国原産のハーブである「国産ラフマ茶」を中心に、ヘルスケア商品の販売を開始した。また珠洲市が石川県で初めて認定を受けた「みどりの食料 システム戦略」を推進するオーガニックビレッジ構想の枠組みのもと、有機米・特別栽培米の販路づくりにも取り組んだ。

投資事業として奥能登SDGs投資事業有限責任組合から2件の投資を行い、投資先は13銘柄となった。またTUAT1号投資事業有限責任組合からは1号案件の投資を行なった。

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今後のIR情報に注意が必要

10月13日、アステナホールディングスは2023年11月期・通期(2022年12月1日~2023年11月30日)の連結業績予想について、売上高で前期比3.8%増の515億円、本業の利益を示す営業利益で同12.2%減の7億2,000万円、経常利益で同53.8%減の4億1,000万円、純利益で同98.3%減の1,000万円と従来予想(1月13日公表)を据え置いた。

しかしながら、2023年11月期・第3四半期の通期予想に対する進捗率は、売上高で79.0%、営業利益で95.1%、経常利益で192.7%、純利益で2,090%に達している。すでに経常利益と純利益は通期予想を超過しているほか、営業利益の進捗率も高いことから、今後のIR情報には十分な注意が必要だろう。■

(La Caprese 編集部)

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