ビジネスパーソンが抱える最大のストレス要因は「給与・賞与(金銭面)」――。2023年9月28日、チューリッヒ生命保険(本社:東京都中野区)が、全国1,000人のビジネスパーソンを対象とした、ストレスに関する調査でそのような実態が浮き彫りとなった。今年で6回目になる同調査では、現在ビジネスパーソンが抱えているストレスの原因に加えて、コロナ禍を経て起きた働き方に関する変化や、「ウェルビーイング」に関する認知度などについての調査を実施した。
チューリッヒ生命保険の調査報告の要旨は以下の通りである。
チューリッヒ生命保険、ストレスに関する調査報告
Q1 あなたが普段、仕事をする上で、最もストレスを感じる要因を教えてください
普段、仕事上で最もストレスを感じる要因について聞いたところ、最も多かったのは「給与・賞与(金銭面)」(20.1%)で、経済的な不安が3回連続で1位という結果となった。次に多かったのは「仕事の内容」(17.4%)で、さらに「上司・部下以外の社内の人間関係」(14.0%)、「上司との関係」(12.5%)と続いた。また、3回分のトップ5を比較すると回答があまり変わっていないことから、特に経済面でのストレスが近年の悩みとして大きいことが明らかになった。
Q2 あなたの勤務先で導入されている働き方の制度を、①~③それぞれについて教えてください
①新型コロナウイルス感染症流行前より導入されていた制度
②新型コロナウイルス感染症流行がきっかけで新たに導入された制度
③新型コロナウイルス感染症法上の分類が5類に引き下げ後(2023年5月以降)も継続されている制度
勤務先で導入されている制度について、①新型コロナウイルス感染症流行前からある、②流行をきっかけに導入された、③5類引き下げ後も継続されている……のそれぞれについて伺った。
コロナ禍前から最も多く導入されていたのは「時短勤務」(16.3%)で、次が「フレックスタイム制」(15.5%)、そして「在宅勤務」(13.8%)であった。一方で、新型コロナウイルス感染症の流行を経て導入された制度の1位は「在宅勤務」(22.7%)、次いで「コロナ休暇・ワクチン接種休暇」(16.7%)となった。「在宅勤務」はコロナ禍を経て継続している制度でも25.8%で1位となっており、一般的に定着しつつある制度だと考えられる。「コロナ休暇・ワクチン接種休暇」も9.9%と約1割の企業が継続しており、コロナ禍を経て大きく導入が進んだ制度の一つといえそうだ。
Q3 導入している制度の中で、導入されていてよかったと思う制度を教えてください
導入されてよかった制度について聞いたところ、「在宅勤務」が48.5%と圧倒的な支持を得ていることが判明した。また、コロナ禍を経て導入が進んだ「コロナ休暇・ワクチン接種休暇」も20.8%と2位に入った。このほか「フレックスタイム制」(20.1%)、「時差出勤」(19.5%)も一定の評価を得ていることが見えてきた。
Q4 では、導入している制度の中で、導入されていてストレスを感じる制度を教えてください
一方でストレスを感じる制度について聞いたところ、70%以上の人が「特にない」と回答した。ただ、「在宅勤務」については8.4%の人がストレスを感じていると回答している。コロナ禍を経て最も導入が進んだ制度でもあるため、制度としての精度が高くなく、また、コミュニケーションの面でストレスを感じている人も一定数いると考えられる。今後は社員の意見を反映するなど、よりよい形にしていくのが理想的といえそうだ。
Q5 新型コロナウイルス感染症法上の分類が5類に引き下げ後(2023年5月以降)、緩和されたストレスの内容を教えてください
対して新型コロナウイルス感染症の分類が5類に引き下げられた後に緩和されたストレスは「マスク着用が任意になった」が38.7%で1位であった。また「人と会う機会が増えた」(22.6%)、「接待や飲み会が復活した」(17.8%)、「出張や外出の制限がなくなった」(14.9%)、「消毒や換気などの手間がなくなった」(14.1%)と続き、行動制限がなくなりつつある動きを歓迎する意見も寄せられていた。
Q6 新型コロナウイルス感染症法上の分類が5類に引き下げ後(2023年5月以降)、ストレスに感じた内容を教えてください
新型コロナウイルス感染症の分類が5類に引き下げられた後、ストレスに感じたことを伺ったところ、「電車など人混みが多くなった」(30.2%)が1位となった。2位は「マスクをする人が少なくなった」(22.7%)で、マスク着用が任意になったことでストレスが緩和された人と、ストレスに感じる人とが混在している実態が見えてきた。3位の「感染症対策が任意となり、感染リスクを気にするようになった」(17.3%)と、感染リスクが上がったことに対してのストレスが上位を占め、新型コロナウイルス感染症が人々に与える影響が引き続き大きいことを感じさせる結果となった。
Q7 あなたのストレス発散方法について、①~③それぞれについて教えてください
①新型コロナウイルス感染症流行前から行っていたストレス発散方法
②新型コロナウイルス感染症流行後から始めたストレス発散方法
③現在のストレス発散方法
普段の生活で抱えるさまざまなストレスをどのように発散しているのか、新型コロナウイルス感染症流行前のストレス発散方法、コロナ禍で始めた発散方法、現在の発散方法について尋ねた。
まず、流行前は「美味しい物を食べる」(38.4%)が1位、「睡眠・休息をとる」(38.3%)が2位であった。コロナ禍を経て現在は1位が「睡眠・休息をとる」(36.8%)と逆転。コロナ禍を通して体調管理が重要視され、身体を休めることに目を向ける人が増えたことと、コロナ禍での外出自粛を受けて、美味しい物を食べに行く習慣を抑制せざるを得なかったことが理由であると考えられる。
外出自粛の影響を最も受けているのは、「旅行へ行く」となった。流行前のストレス発散方法としては30.4%だったものの、現在の発散方法では23.3%と7.1ポイント低下した。また、「買い物をする」(29.4%→22.7%)、「飲み会に行く」(15.8%→9.7%)、「人に話を聞いてもらう」(14.0%→11.2%)と、他人が関わるストレス発散方法も低下する傾向が認められた。
一方で、コロナ禍で始めたストレス発散方法としては「身体を動かす」が8.4%でトップとなった。外出自粛などで身体を動かす機会が減ったこともあり、意識的に運動してストレスを発散する人が増えたと考えられる。
Q8 新型コロナウイルス感染症流行がきっかけで新しく始めた趣味を教えてください。
続いてコロナ禍をきっかけに始めた趣味について聞いたところ、「動画鑑賞」が13.7%で1位となったほか、「クッキング系」(7.0%)、「散歩」(6.9%)、「ランニングなどスポーツ関連」(6.7%)などの声も寄せられた。インドアの趣味や、身体を動かす趣味が上位に来ており、外出自粛の影響を感じさせる結果となった。
Q9 様々なストレスにより精神面の不調や不安を感じることがありますか。
次に、ストレスによって精神面の不調や不安を感じることがあるかを尋ねたところ、「とても感じている」(12.5%)と「やや感じている」(29.9%)が合わせて42.4%、「まったく感じていない」(10.0%)と「あまり感じていない」(15.6%)が合わせて25.6%となった。約4割がストレスによって精神面の不調や不安を感じており、現代人にとっては、ストレスと上手くつき合っていくことが重要だと考えられる。
Q10 どのようなストレスから不調や不安を感じていると思いますか。
さまざまなストレスにより精神面の不調や不安を感じていると回答した人に、ストレスの要因を聞いたところ、「経済面の不安によるストレス」が43.2%で1位に、続いて「職場での人間関係によるストレス」が42.7%と僅差で2位、次が35.8%の「仕事の負担感によるストレス」となった。これは前述の「仕事上で最もストレスを感じる要因」の1位~3位と共通しており、経済面、人間関係、仕事の負担が大きなストレスとなっていることが見て取れる。
Q11 あなたは「ウェルビーイング」という言葉を知っていましたか。
身体的、精神的、社会的に良好な状態であることを意味する概念として「ウェルビーイング」という言葉がある。この「ウェルビーイング」という言葉を知っているかどうかを尋ねたところ、「内容まで詳しく知っている」(8.8%)と「ある程度内容を知っている」(14.0%)が合わせて22.8%となった。一方、「知らない」と回答した人は55.6%であった。実に半数以上が「ウェルビーイング」という言葉について、聞いたこともないという結果となった。
性別・年代別では、男性20代の19.2%、男性30代の16.0%が「内容まで詳しく知っている」と回答し、逆に女性40代の60.8%、女性50代の64.0%は「知らない」と回答しており、男性の若年齢層の認知度が高く、女性高年齢層の認知度が低い傾向が認められた。
Q12 あなたは「ウェルビーイング」について関心がありますか。
続いて「ウェルビーイング」について関心があるかどうかを聞いたところ、「とても関心がある」(9.6%)、「やや関心がある」(24.0%)が合わせて33.6%となり1/3以上の人が「関心がある」と回答した。
Q13 以下の項目について、どの程度そう思いますか。
「ウェルビーイング」につながる各項目について尋ねたところ、「身体的な健康状態は良好だと思う」が「とてもそう思う」(13.3%)と「ややそう思う」(34.1%)を合わせて47.4%となった。また、「家族、友人、職場の人、近隣の人などと良好な人間関係が築けている」も41.6%が「そう思う」と回答している。
一方で「収入やお金の使い方など、経済的な面で満足できている」では40.7%の人が、「ボランティア活動、コミュニティ活動などを通じて有意義な人生を送れていると思う」では44.7%の人が、「そう思わない」と回答していた。
「経済面」での満足度が低く、ストレスを感じている人が多いことが本調査での特徴として認められた。昨年からの電気代・ガソリン代の高騰や、全般的な物価高なども影響して、多くの人が経済面によって思うように生活できていない実態が浮き彫りとなった。コロナ禍が収束していく中で、人々のストレスがどのように変化していくのか注視していくことは、ストレス社会を生き抜くうえで重要なことだと考えられる。■