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エッセイ:宇宙と肌と骨の知られざる関係

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(画像= Canva、La Caprese)

2023年9月7日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と三菱重工業が開発した国産主力ロケット「H2A」47号機が、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。「H2A」47号機に搭載されたJAXAの月面探査機「SLIM(スリム)」と、X線天文衛星「XRISM(クリズム)」は、それぞれ目標の軌道に投入され、打ち上げは成功した。「SLIM」は年末ごろ月の周回軌道に到達する予定で、年明けには着陸が見込まれるという。月面着陸に成功すれば今年8月のインドに続き5カ国目となる。

ところで、英語で宇宙を意味するCOSMOS(コスモス)と化粧品を意味するCosmetics(コスメティクス)は、どちらもギリシャ語で「秩序・調和」という意味のKosmos(コスモス)が語源である。「秩序・調和」の対義語は、「混沌・無秩序」を意味するChaos(カオス)であるが、こちらもギリシア語の Χάος(Khaos)に由来する。

カオスはコスモスが成立する以前の秩序なき状態を意味する語だった。138億年前にビッグバンで始まったとされる宇宙(COSMOS)は、最初は混沌とした状態であったが、その後、星が生まれ、惑星が規則正しく周回する秩序をつくり上げた。他方、肌の乱れた状態、混沌とした状態を「秩序ある状態」に整えるという意味でコスメティクス(Cosmetics)という言葉も使われるようになった。宇宙と肌の興味深いつながりである。

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宇宙船内は人間の肌にとって過酷な環境

しかしながら、宇宙船内は人間の肌にとって過酷な環境でもある。

宇宙飛行士の山崎直子さんが日本化粧品工業会のWebサイトに寄稿したエッセイ(2016年12月14日付)によると、宇宙船内はエアコンが24時間稼働しているのでかなり乾燥しており、男性でも保湿クリームが欠かせないという。顔の乾燥はもちろんのこと、さまざまな実験や機器の取り付け作業により、手先の皮はボロボロになるのだそうだ。加えて、宇宙空間は空気やオゾン層に守られないため、紫外線の量も多くなる。宇宙船の窓ガラスにはUVフィルターをかけているものの、地球観測用にUVフィルターをかけていない窓も一部あり、長時間そうした窓の近くにいると日焼けをしてしまうという。

「微小重力」も肌の乾燥トラブルを引き起こす要因?

さらにもう一つ。宇宙船内特有の環境として「微小重力」の影響も指摘される。ポーラ化成工業(本社:神奈川県横浜市)が2023年8月28日に発表した研究報告では、骨が分泌するホルモンの一種「オステオカルシン」の分泌量の低下が肌の乾燥トラブルを引き起こす可能性が指摘されている。

「オステオカルシン」は、骨に荷重負荷がかかると分泌が促進される特性がある。つまり、「微小重力」の宇宙船内では、骨への刺激が弱く、分泌量が低下しやすいと推察される。

実際、ポーラ化成工業が地上での日本人女性(40代〜50代の日本人女性55名)を対象とした調査および細胞・皮膚モデルによる実験を行ったところ、血中のオステオカルシン濃度が高いと、皮膚のうるおいを守るバリア機能が高いことが判明した。そのメカニズムを調べると、オステオカルシンはバリア機能やうるおいに寄与する因子群の発現を包括的に高めていることが明らかになった(図1)。

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(図1) 出典:ポーラ化成工業

さらに、ポーラ化成工業は、宇宙環境が自然や社会からの隔離空間、生死と隣り合わせの緊張感等から、精神的ストレスの影響が軽視できないと考え、精神的ストレスがオステオカルシンの働きに及ぼす影響を検証した。その結果、精神的ストレスがかかると、オステオカルシンによるバリア機能の促進効果が弱まる可能性を見出した。

ちなみに、ポーラ化成工業はオステオカルシンの働きを補う素材として、ホホバとクローブの複合エキスの有効性を確認している。ホホバとクローブの複合エキスは、オステオカルシンの働きが低下するさまざまなシーン(宇宙空間や精神的ストレスなど)においても、皮膚バリア機能を維持・向上させ、うるおいある肌の実現に有効な可能性があるとのこと。近い将来、宇宙旅行が一般的になった際は、ホホバとクローブの複合エキスが必需品になるかも知れない。■

(La Caprese 編集長 Yukio)

特集:美肌を科学する
美肌,科学的根拠
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