「月経前の肌状態の悪化は、クロノタイプ(朝型・夜型)が関係している」――。2023年6月22日、セプテム総研(本社:大阪府大阪市)と京都大学(所在地:京都府京都市)との共同研究で、そのような論文が公表された。
女性には約28日の月経周期があり、関連ホルモンの調節による心身の変動が繰り返されている。特に月経開始数日前から生じる心身の不調は「月経前症候群(PMS)」といわれ、有経女性の74%に及んでいる。この時期は皮膚においても不安定さを感じやすく、多くの女性がニキビなどの肌状態の悪化(以下、肌不安定化と記す)で悩んでいる。一方で、ヒトの睡眠覚醒、体温、ホルモン分泌などは、24時間周期の体内時計(概日リズム)があり、光や食事などの概日リズム同調因子によって調節されている。24時間のリズムを整えることは、28日の月経周期を整え、肌状態にもつながる可能性が考えられる。しかし、夜間照明の増加やライフスタイルが多様化する現代社会の生活での研究は、十分とはいえないのが実情であった。
そこで、セプテム総研と京都大学は概日リズム同調因子の視点から、日本在住の20歳~49歳の女性801名を対象にWebアンケート調査を実施(2022年1月)し、生活スタイルが月経周期、特に月経前の肌不安定化に与える影響を解析した。
以下は、本研究成果の概要である。
月経前の肌不調は自然光と関係あり?
月経前の肌不安定化について
月経前の肌の不安定化は、20歳代で最も大きく、ニキビの割合が高い
まず、月経前の肌の不安定化を5段階(高いほど不安定化が大きい)で年齢別に比較したところ、月経前の肌不安定化スコアは20歳代で最も高い結果となった(Fig.1)。次に、月経前の肌不安定化を感じた女性(574名)のうち、悪化・増加した肌悩み項目の割合を年代ごとに示した(Fig.2)ところ、ニキビが20歳代で97.5%、30歳代は84.1%、40歳代は73.5%で、他の項目よりも割合が高い傾向にあることが判明した。
生活スタイルと月経前の肌不安定化との関係について
月経前の肌不安定化は、クロノタイプ(朝型・夜型)が関係。朝型と比較して夜型が、月経前の肌不安定化が大きい
早寝早起きで朝に強い人を「朝型」、夜更かしが多く朝に弱い人を「夜型」と定義し、本人が自覚する「朝型」「夜型」の2群に分けて解析したところ、「朝型」と比べ、「夜型」が月経前の肌不安定化が有意に大きいことが示唆された(Table)。
日中に2時間以上の自然光(冬季の屋外)を感じる生活が、月経前に肌が不安定化しにくい
また、2時間以上と2時間未満に分けて日中に屋外で過ごす時間を尋ね、月経前の肌の不安定化スコアとの関係を解析したところ、自然光曝露2時間以上は、2時間未満と比較して肌不安定化しにくい傾向を示した(Table)。
上記の通り、本研究では月経前の肌の不安定さの影響要因を概日リズム同調因子の視点から検討し、クロノタイプ(朝型夜型)や日中の自然光曝露時間が関係する可能性が示唆された。セプテム総研は、今後、紫外線による皮膚老化を考慮した上で、皮膚の健康増進や美容のための適切な光環境を含む生活スタイルの更なる研究を行う方針である。
セプテム総研のさらなる研究成果を期待したい。■
(La Caprese 編集部)