2023年9月7日、東京証券取引所で豊田通商の株価が一時9,185円まで買われ、上場来高値を更新した。今年1月5日の安値4,770円から8カ月で92.6%の上昇である。
豊田通商は、トヨタグループの総合商社である。豊田通商が2022年8月にリリースした会社説明会資料によると、世界130カ国に拠点を置き、連結関係会社数は国内・海外合わせて約1,000社と、グローバルに事業を展開している。また、連結従業員数は約6万5,000人で、そのうちアフリカにおける従業員が3割を占めるのも特徴の一つである。「Be the Right ONE(代替不可能・唯一無二な存在)」をスローガンに掲げ、人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりに貢献することを企業理念としている。
後段で述べる通り、①トヨタ自動車の増産計画に加えて、②豊田通商が発表した2024年3月期・第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の連結業績が増収増益となったこと、③2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想を上方修正したこと、④さらに2024年3月期の年間配当予想を214円(従来予想は204円)に増額修正したこと……などが株価にも追い風となった。
今回は豊田通商の話題をお届けしよう。
豊田通商、最終利益は23.9%増
トヨタ自動車は、❶今年6月にEV(電気自動車)の性能向上に向けて「全固体電池」と呼ばれる次世代型の電池を2027年~2028年に実用化する方針を明らかにしたほか、❷8月には、2023年9~11月の車両生産計画にて、世界生産を前年同期比10%増の274万台程度に設定し、そのうち国内生産を26%増の計94万台程度と大幅に増産する計画を示した。そうした中、トヨタグループ唯一の総合商社である豊田通商の業績期待も高まっている。
自動車販売・生産の増加が追い風に
豊田通商の業績を見てみよう。豊田通商が7月28日に発表した2024年3月期・第1四半期(2023年4月1日~2023年6月30日)の連結業績は、収益が前年同期比7.0%増の2兆5,407億円、営業活動に係る利益は11.1%増の1,137億円、最終利益は23.9%増の927億円と増収増益となった。
同期は、金属市況および欧州電力価格下落の一方で、自動車販売の増加並びに自動車生産関連の取り扱い増加等が追い風となり収益が伸長した。一方、利益面では、営業活動に係る利益は販売費および一般管理費が増加したものの、売上総利益の増加により2ケタの伸びとなった。最終利益は、欧州電力価格下落による持分法投資損益の減少および利息収支悪化の一方で、営業活動に係る利益の増加等により大幅に伸長した。
セグメント別の事業活動は以下の通りである。
金属
電動車普及の加速に伴い、今後の更なる需要に対応する事を目的に、リチウムイオン電池部材の一つである集電体用アルミ箔を製造するSama Aluminium CO, Ltdの第三者割当増資を引き受ける事を、2022年12月に決定した。2023年1月末には引き受けを完了し、電池用アルミ集電箔のグローバル供給体制確立に向けた協議を進めた。本事業を通じて、電動車の普及に欠かせない電池製造を支え、カーボンニュートラルの実現に貢献する方針である。
グローバル部品・ロジスティクス
ラストワンマイル配送のプロセス効率化や省人化を目的に、ウィルポート社およびパイオニア社と共に、最適配送計画サービスを2022年11月から提供開始し協業を推進した。配送事業者の負担軽減やEコマースの発展に寄与するとともに、交通渋滞緩和や交通事故の削減等にも貢献する方針である。
モビリティ
中古車のオンライン輸出販売での協業を目的に、カーペイディーエムの株式を2023年2月に追加取得し協業を推進した。今後、益々需要拡大が見込まれるアフリカを中心とした中古車市場において世界の消費者に安心安全なカーライフを提供し、安全で快適なモビリティ社会の実現を目指す方針である。
機械・エネルギー・プラントプロジェクト
再生可能エネルギー事業の更なる拡大を目的に、ソフトバンクグループが保有するSBエナジーの85%の株式を取得し、2023年4月に子会社化するとともに、社名をテラスエナジーに改めた。同社が有する再エネの最先端技術の活用により、新規事業の創出や再エネ分野のテクノロジーの進化を加速させることでカーボンニュートラルの実現に貢献する方針である。
化学品・エレクトロニクス
リチウムイオン電池の需要増を見据えた将来の拡張に備えた土台づくりを目的として、Toyota Motor North America, Inc.と共に、現在建設中の車載用電池生産の会社であるToyota Battery Manufacturing, North Carolinaへ2.1億米ドルを追加投資する事を、2023年6月に発表した。需要が拡大する電動車に必要なリチウムイオン電池を生産・供給し、カーボンニュートラルの実現に貢献する方針である。
食料・生活産業
2050年までに廃棄されるすべての衣料品が、再び衣料品として生まれ変わる機会と未来を創ることを目的として、繊維・ファッション領域のサーキュラーエコノミーを推進するプロジェクト「PATCHWORKS™(パッチワークス)」を2023年4月から開始した。まずは、ポリエステル、コットン、ナイロン等が使用されている利用済み衣料品を回収し再資源化する“繊維 to 繊維”リサイクルを確立させ、リサイクルしやすい繊維素材や製品の開発をパートナー企業と推進する等、サーキュラーエコノミーシステム構築の実現に取り組む方針である。
アフリカ
2023年3月に、ナイジェリア電力省からラゴス州に電力供給するアパパロード変電所の増強プロジェクトを受注した。同プロジェクトは2025年9月に完工予定である。同プロジェクトは、ナイジェリア経済の中心地ラゴスにおいて、電力供給の安定化および質の高い経済成長のための基盤づくりに寄与することが期待されている。今後もエネルギー・港湾・水といった基礎インフラの整備を通して、アフリカの未来の子供たちにより良い環境を届ける方針である。
通期の業績予想を上方修正、年間配当予想も増額
7月28日、豊田通商は2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、最終利益で前期比5.6%増の3,000億円となる見通しを示した。これは従来予想(4月27日公表)に比べて7.1%の上方修正である。
豊田通商は修正の理由について、足元の為替レートが円安に推移していること等により、第1四半期の業績が想定よりも堅調に推移したことを挙げている。なお、冒頭で述べた通り、豊田通商は2024年3月期の年間配当予想についても214円(従来予想は204円)に増額修正している。
引き続き、豊田通商の業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)