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「気象病」経験者は全国平均で6割以上。「頭痛」「だるさ」「気分の落ち込み」などが症状の上位に――第一三共ヘルスケアの調査報告

気象病,症状
(画像= Canva、La Caprese)

気象病経験者は全国平均で6割以上。――2022年9月2日、第一三共ヘルスケア(本社:東京都中央区)が発表した「気象病(天気痛)」に関する実態調査でそのような状況が明らかになった。調査は全国の男女2,350人(性・都道府県別均等割付)を対象に行われた。

ちなみに、本調査では気象病の具体的な症状として「頭痛」「だるさ」「気分の落ち込み」などが上位にあがった。この結果について、内科医で正木クリニック院長の正木初美先生は「頭痛、めまい、眠気、動悸などの気象病の症状は、その多くが自律神経のバランスが悪いことと関係しています。その要因は2つあり、一つは気圧の変化を感じるセンサーがある“内耳”との関係、もう一つは女性ホルモンやストレスとの関係です」と指摘している(詳細は後述)。

今回は第一三共ヘルスケアが発表した「気象病」に関する実態調査とあわせて、内科医の正木初美先生のアドバイスを紹介したい。

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第一三共ヘルスケア、「気象病」に関する実態調査

TOPIC❶

気象病による“メンタル不調”を経験したことがある人は、「秋田県」が最も多い。

・気象病経験者は全国平均で64.6%。全国1位の「島根県」は8割に上り、最も低い「北海道」の約2倍。
・「体調の変化による気象の予測」ができるという人は、「長野県」(64.9%)が最も多い。
・全国で最も多い気象病の症状は「頭痛」(67.1%)。その「頭痛」の発症経験率は「京都府」(86.1%)が最も高い。
・気象病によるメンタル不調の経験者は、「秋田県」(73.2%)が最も多く、「広島県」(43.9%)が最も少ない。

気象病経験者は全国平均で64.6%。全国1位の「島根県」は8割

まず、気候や気圧の変化による体の変化や不調を感じたことの有無について聞いたところ、全国平均では64.6%が「ある(とてもある+たまにある)」と回答した。都道府県別で見ると、冬は曇りや雨・雪の日が多い日本海に面している「島根県」が80.0%に達し第1位、第2位は「新潟県」で76.0%となった。一方で、気象病経験者が最も少ない都道府県は、梅雨がないといわれる「北海道」(44.0%)となった。「島根県」は「北海道」の約2倍に上る結果となり、地域によって大きな差が浮き彫りとなった《図表1》。

気象病,症状

《図表1》 出典:第一三共ヘルスケア
※図表の構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入している。

「体調の変化による気象の予測」ができる人は、「長野県」が最も多い

ここからは、気候や気圧の変化による体の変化や不調を感じたことが「全くない」と回答した人を除く1,985人を対象に調査を行った。まず、「体調の変化による気象の予側」ができるか否かについて聞いたところ、「予測できる(とてもある+たまにある)」と回答した人が最も多かった都道府県は「長野県」(64.9%)となり、全国平均の36.9%を大きく上回った《図表2》。

気象病,症状

《図表2》 出典:第一三共ヘルスケア
※図表の構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入している。

全国で最も多い気象病の症状は「頭痛」。都道府県別では京都府が1位に

「気象病による症状」について聞いてみると、1位は「頭痛」(67.1%)となり、2位「だるさ」(50.8%)、3位「気分の落ち込み」(23.6%)と続いた《図表3》。

ちなみに、1位となった「頭痛」の発症経験率を都道府県別に見ると、盆地という地形から寒暖の差が大きい「京都府」(86.1%)が最も高い一方、年間を通じて気候が温暖で安定しているといわれている「大阪府」(41.9%)が最も低く、隣接しながらも気候の異なる2つの府で対照的な結果となった《図表4》。

気象病,症状

《図表3》《図表4》 出典:第一三共ヘルスケア
※図表の構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入している。

気象病によるメンタル不調の経験者は、「秋田県」が最も多い

気象による体調の変化として、気分が落ち込んだ経験の有無について聞いたところ、「ある(とてもある+まあまあある)」と回答した人が全国平均で半数以上(54.2%)を占めた。都道府県別では、全国でも快晴率が低く曇天日数の多い「秋田県」(73.2%)が、最も多い結果となった。一方、最も少ない県は比較的少雨で、年間を通じて晴天の日が多く、穏やかな気候に恵まれた地域とされている「広島県」(43.9%)であった《図表5》。

気象病,症状

《図表5》 出典:第一三共ヘルスケア
※図表の構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入している。

3人に1人が、気象による体調不良を周囲に「伝えにくい」と感じている

TOPIC❷

気象による体調不良を周囲に言えずに抱え込みがちな人は「山形県」が最も多い

・気象による体調不良であることを、周囲に「伝えにくい」と感じている割合は、全国平均で約3人に1人。
 「伝えられないことがある」または「伝えられない」と回答した人は、山形県(42.9%)が最も多い。
・「気象病による頭痛」を感じたときの薬の服用について、「耐えられない痛みでない限り服用しない」または「我慢する」と回答した割合は、全国平均で4割強。

気象による体調不良を周囲に「伝えにくい」と感じている割合は、約3人に1人

次に、気象病であることの打ち明けにくさについて調査した。気象によって体調不良になった際、その原因を「職場や学校など周囲に伝えることができるか」という質問に対し、「伝えにくい(伝えにくいが伝える+伝えにくく伝えられないことがある+伝えにくく伝えられない)」と回答した割合は、全国平均で35.5%となり、約3人に1人が「気象による体調不良」の伝えにくさを感じていることが明らかになった《図表6》。

都道府県別に見ると、気象が原因のため周囲に伝えにくく「伝えられないことがある」または「伝えられない」と回答した人は、 「山形県」(42.9%)が最も多い結果となった《図表7》。

気象病,症状

《図表6》《図表7》 出典:第一三共ヘルスケア
※図表の構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入している。

「気象病による頭痛」で薬は服用する?

続いて、気象による体調の変化で「頭痛」になった経験があると回答した1,331人を対象に調査を行った。気象病による頭痛を感じたときの薬の服用について聞いたところ、「耐えられない痛みでない限り服用しない」または「服用しないで我慢する」と回答した割合が全国平均で41.6%と、半数に迫る結果となった《図表8》。

気象病,症状

《図表8》 出典:第一三共ヘルスケア
※図表の構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入している。

【解説】 内科医・正木初美先生のアドバイス

正木クリニック院長の正木初美先生のアドバイス――「気象病」を理解して適切な対処を!

頭痛、めまい、眠気、動悸などの気象病の症状は、多くが「自律神経のバランスが悪いこと」と関係しています。その要因は2つあり、一つは「気圧の変化を感じるセンサーがある“内耳”との関係」です。内耳には気圧の変化を感じるセンサーがあるといわれており、そこで感知した刺激を脳に伝えたとき、脳にある自律神経のバランスを司る部分が過敏に反応してしまうことで自律神経のバランスが崩れ、そのバランスがうまく調整できなかったときに気象病を起こすと考えられています。

もう一つは「女性ホルモンやストレスとの関係」です。女性ホルモンのバランスが乱れているときや過度なストレスを感じているときは、通常よりも気圧や温度・湿度など気象の変化に敏感になるため、自律神経のバランスが崩れやすく、気象病が起こりやすくなります。

気象によって「副交感神経」が過度に働くと“メンタル不調”を引き起こす

今回の調査で、「気象による体調の変化」として、気分が落ち込んだ経験がある人は全国で半数以上に上りました。気象病は頭痛やめまいだけではなく、メンタルにも影響します。これも、自律神経のバランスが関係しており、自律神経の「交感神経」と「副交感神経」のバランスが乱れることによって起こります。リラックスに働く「副交感神経」が過剰に働くと気分の落ち込みやだるさ、眠気を引き起こし、逆に「交感神経」の方が強くなりすぎるとイライラしたり、興奮したり、動悸や汗が出るなどの症状が現れます。

気象病は自律神経のバランスが乱れやすい女性や、マイナス思考の人が発症しやすい

「気象病」の発症は、男女で比較すると女性の方が多い傾向にあります。これは女性の場合、月経周期や更年期など女性ホルモンの働きが自律神経の活動に影響するため、男性と比べて自律神経のバランスが崩れやすいからです。また、悩みやすい人やマイナス思考の人は、陽気な人よりもストレスを受けやすく、自律神経のバランスが崩れやすい傾向にあるため、結果として「気象」の影響も受けやすくなります。

気象病には、症状に合わせた対処が必要

頭痛やめまい、動悸などの症状を感じている人は、まず「よく寝ること」が大切です。眠っている間に「副交感神経」が優位になり、自律神経の乱れも整えてくれます。また、お風呂にゆっくり入って身体を温めたり、好きな音楽や映画に触れてリラックスしたりするなど、「副交感神経」の働きを促すように身体も心も休めてあげましょう。

また、本調査で「全国平均で41.6%が薬を我慢する傾向にある」という結果がありましたが、痛みを感じたときに薬を飲むことは悪いことではありません。気象による頭痛症状がある場合、さらなるストレスをため込みかねません。無理せず上手に薬を服用しましょう。

一方、「副交感神経」が過剰に働き、気分の落ち込みや眠気の症状を感じている人は、寝ているだけではなかなか症状が良くなりません。他に病気やつらい症状がない場合は、思い切って外に出ることが効果的です。外に出ることで「交感神経」が優位に働き、家にいるときよりも気分が晴れるケースが多くあります。

自分自身も周りの人も、「気象病」を理解することが大切

「気象」による自律神経の乱れが気分の落ち込みにつながるケースも多いですが、本調査の中で35.5%が「気象病であることを周囲に伝えにくい」と回答している結果からも分かる通り、「気象病」を分かってもらえないことも、「気象病」の経験者にとっては大きなストレスになっています。

最近はよく「気象病」という言葉を耳にするようになりましたが、検査をしても異常が出るものではないため、「体調が悪いのに、人には分かってもらえない」という状況が続き、気分が落ち込むケースも多くあります。また、自分自身で気象病を自覚していないと、定期的に起こる頭痛やだるさを「自分の身体や気持ちの弱さ」だと思ってしまい、よりネガティブな気持ちとなる原因にもなります。まずは、自分自身も周りの人も、気象病の症状を理解し、適切な対応を取ることを心がけましょう。

特集:気象病(天気痛)/天気と体調
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