記事内に広告が含まれています。

綜合警備保障、株価は年初来高値。今期は増収増益の見通し、広域強盗傷害事件など「体感治安」悪化

綜合警備保障,株価,上昇,理由資産形成
(画像= あびAB / 写真AC、La Caprese)

2023年7月4日、東京証券取引所で綜合警備保障(ALSOK)の株価が一時832円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年1月13日の安値672円から6カ月足らずで23.8%の上昇である(※株式分割を考慮した実質)。

綜合警備保障は、個人および法人向けなどにセキュリティサービスを提供する企業である。1965年創業の同社は、法人向けの常駐警備業務や警備輸送業務のほか、国際的なイベントやスポーツ大会、会議等の警備実績を多数積み上げてきた。また、1988年からは個人向けのホームセキュリティの提供も開始しており、現在では収益の柱となっている。2002年には警備用ロボットの実用化に成功、2003年7月にはコーポレートブランドを「SOK」から「ALSOK」へ変更している。

後段で述べる通り、綜合警備保障が5月12日に公表した2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績は減益となったものの、①2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想については増収増益となる見通しが示されたこと、②6月30日を基準日として1株を5株に株式分割を実施したことで、投資家層の拡大への期待が広がった……ことなどが追い風となっている。

今回は綜合警備保障の話題をお届けしたい。

綜合警備保障、2023年3月期は増収減益

5月12日、綜合警備保障は2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績を発表した。同期の売上高は前期比0.6%増の4,922億2,600万円、本業の利益を示す営業利益は同13.7%減の369億9,300万円、経常利益は同12.4%減の392億3,000万円、純利益は同17.3%減の239億5,000万円と増収減益となった。

主要セグメントの状況は以下の通りである。

セキュリティ事業は減収減益

セキュリティ事業は、前年度の『東京2020大会』関連売上の減少の影響もあり、売上高は前期比1.8%減の3,663億4,800万円、営業利益は同8.5%減の372億8,400万円となった。各業務の状況は下記の通りである。

機械警備業務

機械警備業務では、法人向けサービスとしてライブ画像確認を標準装備し、画像蓄積や画像を活用した遠隔監視、遠隔地からの設備制御等のオプションサービスを充実させ、顧客の省人化ニーズにも貢献する「ALSOK-G7(ジーセブン)」の販売を推進した。

個人向けサービス

個人向けサービスでは、設置工事が簡単な住宅向けスタンダードモデルである「ホームセキュリティBasic」、高齢者向け見守りサービス「HOME ALSOK みまもりサポート®」等の販売を推進した。また、2023年4月にはホームセキュリティの新商品として「HOME ALSOK Connect」の提供も開始した。

常駐警備業務

常駐警備業務では、新型コロナウイルスの軽症者等のための宿泊療養施設やワクチン接種会場等の警備に引き続き対応した。今後は、DX(デジタルトランスフォーメーション)等を活用した常駐警備の省人化・効率化に取り組み、生産拠点の国内回帰やアフターコロナにおける国内イベントの再開本格化等に対応する方針である。

警備輸送業務

警備輸送業務は、金融機関の店舗統廃合等によりATM台数は減少しているものの、官民における現金管理業務の合理化ニーズは根強く、引き続き入(出)金機オンラインシステム等の販売拡大に努めた。また、顧客から要望が多かった「小口出金」「小口振替」機能を追加した「MH-Aモデル」の提供を開始するとともに、入出金機オンラインシステムを活用して自治体の派出窓口業務を自動化する「税公金受付システム」の提供も開始した。さらに、地域金融機関等の業務効率化とコスト低減をサポートする新たなソリューションとして「手形・小切手の電子交換所」の集中業務も開始した。

綜合管理・防災事業は増収減益、コスト増等が圧迫

綜合管理・防災事業は、建設工事部門の完工高が堅調に推移し、売上高は前期比7.1%増の729億9,000万円と伸長した。しかし、利益面ではコスト増等がマイナス要因となり、営業利益で同7.2%減の76億6,100万円となった。なお、綜合管理・防災事業では、引き続き「警備と設備・工事の融合」のコンセプトのもと、ファシリティマネジメント業務の拡大に取り組むとともに、EV充電設備の販売、設置工事や保守メンテナンス等サステナビリティへの取組みも強化する方針である。

介護事業は大幅な減益に

介護事業は、M&Aの効果等により、売上高は前期比14.0%増の474億9,500万円と伸長した。しかし、利益面ではコスト増や新規施設開設の投資負担等により、営業利益で同67.4%減の5億2,800万円となった。

なお、2022年10月にはエヌジェイアイ並びに東京医科歯科大学との間で連携協定を締結し、介護における看取り予知技術および緊急イベントの回避・軽減・対応を含むトータルケアパッケージの標準化・ガイドライン開発に関する共同研究を開始した。引き続き介護支援AI(人工知能)ロボット等を活用し、介護業務の効率化による経営基盤の強化と施設の拡充を図りつつ、介護事業の統一ブランド『ALSOKの介護』のもとサービス拡充に努める方針である。

2024年3月期は増収増益へ。7事業部体制を推進

5月12日、綜合警備保障は2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比4.1%増の5,125億円、本業の利益を示す営業利益で同4.3%増の386億円、経常利益で同4.5%増の410億円、純利益で同6.5%増の255億円と増収増益となる見通しを示した。

綜合警備保障は同期の経済環境について、インバウンド需要の回復を含め新型コロナ禍からの経済正常化の動きが継続しており、政府の経済対策の効果発現の本格化も相まって、民需主導の緩やかな成長が期待されるものの、他方で、賃上げ等の影響を受けての物価動向、金融市場の動向とその他内外情勢のリスク等に注意が必要との認識を示した。

その上で、警備分野においては、少子高齢化と労働力人口減少の中にあって、重要インフラ・サプライチェーン等へのサイバー攻撃対策、高齢者、女性、子ども等の安全・安心への懸念、凶悪な街中での犯罪や事故の増加、相次ぐ自然災害、インフラ老朽化などを背景に、警備業界に対する社会の期待は高まっているとの認識を示した。特に最近では首相襲撃事件や広域強盗傷害事件等の発生を受けて国内の「体感治安」が悪化しており、インバウンド需要等も回復する中、社会の安全・安心を守るべく取り組む意向を示した。

なお、綜合警備保障は2023年4月より7事業部体制(機械警備、HOME ALSOK、常駐警備、警備輸送、ファシリティマネジメント、介護、海外)を構築し、徹底した顧客目線での事業推進を図る方針である。

引き続き、綜合警備保障の業績や株価を注視しておきたい。■

(La Caprese 編集部)

タイトルとURLをコピーしました