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エッセイ:進化するAI。退化する人間?

生成ai,ガイドライン
(画像= TY_Photo / 写真AC、La Caprese)

2023年6月22日、インドで開かれたG20(主要20か国・地域)教育相会合にて、成果文書が取りまとめられた。成果文書では、インターネット上のデータを使って文章や画像、プログラムコードなどを自動で生み出す「生成AI(人工知能)」の急速な進化について、「教育システムを改善させる可能性があると同時に課題でもある」と明記。そのうえで「人権を尊重した教育や訓練での公平かつ包摂的な活用を支持する」としている。

生成AIの活用については、読書感想文や論文などが簡単に作成できるため、思考力や表現力を育む学習への悪影響が指摘されていた。今週6月22日には、文部科学省が生成AIを教育現場でどのように活用すべきかについてまとめた、小中高校向けのガイドラインの原案が明らかになった。原案では、夏休みの読書感想文や日記、コンクールへの作品応募などで、生成AIを使ったにもかかわらず、自分で作成したとして提出することは不正行為であり、自分のためにならないと十分に指導する必要がある、としている。文部科学省は、専門家などの意見を踏まえ、7月上旬までに正式なガイドラインを公表する方針である。

生成AIのなかでも脚光を浴びているのが、2022年11月にOpenAIが公開したチャットGPTである。筆者も実際に試してみたが、AIのコミュニケーション能力が人間にかなり近づいていると実感できる。驚くべき進化であるが、前述の通り、人間の思考力や表現力を育む学習への悪影響も懸念される。教育現場での活用の仕方を誤ると、「進化するAI。退化する人間」ということにもなりかねない。

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人間は生成AIの進化にどう向き合うか?

生成AIを活用しようとする動きはビジネスの現場でも広がりをみせている。帝国データバンクが今週6月20日に発表した調査報告によると、生成AIを「業務で活用している」と回答した企業の割合は9.1%、「業務での活用を検討」している企業は52.0%で、両者をあわせた「活用・検討」している企業の割合は61.1%となった。調査は1,380社を対象(有効回答企業数)に、2023年6月12日~15日に行われた。

生成ai,ガイドライン

(図1) 出典:帝国データバンク

ちなみに、「業務で活用している」と回答した企業(9.1%)の内容を見ると、「利用に関する社内ルールあり」が1.2%、「社内ルール等はない」が7.8%であった(小数点以下第二位を四捨五入)。一方、「業務での活用を検討」している企業(52.0%)の内容を見ると、「活用を具体的に検討していく」が14.2%で、「現時点では活用イメージが湧かない」が37.8%であった。

生成ai,ガイドライン

(図2) 出典:帝国データバンク

今回の調査では、生成AIへの関心はビジネスの現場で広がりを見せているものの、社内ルールを含めて具体的にどう活用するかについては、まだ手探りの状態にあることが浮き彫りとなった。考えてみれば、生成AIブームの火付け役となったチャットGPTも公開されてまだ半年余りの新しいサービスである。生成AIの活用は大きな可能性を秘める半面、情報の正確性の問題や権利関係の侵害といったリスクも指摘されている。

人間は生成AIの進化にどう向き合うか?
その議論も端緒についたばかりである。■

(La Caprese 編集長 Yukio)

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