今週2月7日、大手回転ずしチェーン「スシロー」を運営するFOOD & LIFE COMPANIESの株価が前日比で9.5%高の3,280円に急騰する場面がみられた。1月31日の安値2,850円から1週間で15.1%の上昇である。
スシローといえば、SNSで客の迷惑行為動画が拡散され騒動となったことは記憶に新しい。高校生が未使用の湯飲み茶碗や醤油さしをなめまわす動画騒動はマスコミ各社で取り上げられ、社会的に大きな波紋を呼んだ。
その影響は株式市場にまでおよび、騒動が大きく報じられた1月31日には、FOOD & LIFE COMPANIESの株価が終値ベースで前日の3,015円から2,870円へと145円下落した。時価総額にして170憶円近くも吹き飛んだ計算である。しかし、その後FOOD & LIFE COMPANIESの株価は徐々に戻し、2月7日には3,280円にまで回復、わずか1週間で15.1%の上昇を記録した。
相場に価格変動リスクはつきものとはいえ、この1週間のFOOD & LIFE COMPANIESの株価変動は激しかった。高校生の心無いイタズラ動画に、上場企業や多くの市場関係者が振り回された1週間だった。
迷惑行為動画、「ルフィ」強盗事件で防犯関連株に動き
株式市場ではFOOD & LIFE COMPANIESのほかにも、一連の騒動で大きな動きを見せた銘柄があった。たとえば、東証グロースに上場するセキュアは今週2月8日に一時1,637円の高値を記録、今年1月6日の安値585円から1カ月で2.8倍に上昇した。
セキュアは監視カメラシステムや入退室管理システムなどを手がける企業である。回転ずしチェーン店での迷惑行為や、「ルフィ」を名乗る人物が関わるとみられる高齢者を狙った広域強盗事件が連日報じられる中、各種セキュリティデバイスの需要拡大を見込んだ買いを集めたもようだ。2月2日付のブルームバーグは「東京株式市場で監視カメラやセンサーといった防犯関連株が買われている」と報じている。
同じく、東証スタンダードに上場するダイワ通信は今週2月7日に2,068円の高値を記録、2月1日の安値1,170円からわずか1週間で76.8%上昇した。ダイワ通信は防犯カメラや監視カメラ、AI(人工知能)による顔認証温度検知システム等を手がける企業で、2022年12月26日に上場したばかりである。上場から日が浅い企業ではあるが、今回の動画騒動や「ルフィ」強盗事件で一躍脚光を浴びることとなった。
別居している親に、84.7%が「不安に感じることがある」
ちなみに、警備会社のセコムが2022年11月16日に、全国の30歳以上の男女400人を対象に実施した『離れて暮らす親に関する意識調査』によると、84.7%の人が「別居している親について不安に感じることがある」と回答していることが明らかになった。
具体的な不安については、第1位が「転倒などの怪我」(43.3%)、第2位が「認知機能の低下」(41.0%)、第3位「感染症」(33.5%)。そして、「特殊詐欺」(26.5%)など近年増加している犯罪被害への不安を抱えていることが浮き彫りとなった。
また、同調査では「離れて暮らす親に電話をかけてもつながらない場合不安な気持ちになる」と回答した人が64.5%に達し、その際に「安否確認を行う方法がない」と答えた人が53.0%と半数にのぼった。
監視カメラなど各種セキュリティデバイスのニーズは着実に高まっているように思われる。
これからの「時代」とどう向き合うべきか?
1月25日、静岡県菊川警察署は行方不明者の保護に協力した牧之原市の牛乳配達員の男性と、特殊詐欺被害の防止に貢献したファミリーマート菊川東横地店にそれぞれ署長感謝状を贈った。
牛乳配達員の男性は、昨年12月19日の午前2時ごろ、配達業務中に認知症の80代の男性を路上で発見。男性に声を掛け、近くの交番に知らせた。男性は同日中に無事、家族に引き渡された。また、ファミリーマート菊川東横地店は昨年12月15日、パソコンの修理目的で電子マネー10万円分の購入を申し出た80代男性に対して特殊詐欺の被害を疑い、経営者と従業員が連携して警察に通報した。
厚生労働省の資料によると、2025年に日本の65歳以上の高齢者人口は3,600万人以上に達し、そのうち19.0%が認知症を発症すると推計されている。いわゆる、高齢者の5人に1人が認知症になる「2025年問題」である。あまり想像したくはないが、前述の静岡県にみられるような行方不明や殊詐欺被害が常態化する「時代」を迎えつつあるのかもしれない。私たち個人はもちろんのこと、自治体や企業も、よりよい社会づくりのために、これからの「時代」とどう向き合うべきか問われている。■
(La Caprese 編集長 Yukio)