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第一興商、カラオケ業界が回復傾向。営業利益は614.3%増、株価は年初来高値

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(画像= Beruta / 写真AC、La Caprese)

2023年4月12日、東京証券取引所で第一興商の株価が一時2,321円まで買われ、年初来の高値を更新した。今年1月16日の安値1,850円から約3カ月で25.5%の上昇である。

第一興商は、業務用カラオケ事業やカラオケ・飲食店舗事業、音楽ソフト事業などを展開する企業である。その源流は1971年に東京都調布市で創業した音響機器販売の保志商店にまでさかのぼる。1976年には休眠会社だったニットー(1973年4月16日設立)の事業目的を変更して保志商店の事業を承継し、商号を「第一興商」に改め、8トラックテープの業務用カラオケ事業を開始する。1983年には業務用CD・LDカラオケシステムを発売。1988年には直営カラオケルーム店舗「ビッグエコー」1号店を開店。そして、1994年には業務用通信カラオケシステム「DAM(DAM-6400)」を発売、同時に通信カラオケ用MIDI音源の配信も開始している。ちなみに、DAMは業務用通信カラオケシリーズのブランドとして、JOYSOUND(エクシング)とカラオケ市場を二分する一大勢力である。

後段で述べる通り、第一興商の2023年3月期・第3四半期(2022年4月1日~2022年12月31日)の連結業績では営業利益が前年同期に比べて7倍以上(614.3%増)に急増するなど、大幅な増収増益を記録した。新型コロナウイルス禍の行動制限が緩和されたことにより、多くの店舗が通常営業となり、ナイト市場やカラオケボックス市場が回復傾向を示したことが、追い風となっている。

今回は、第一興商の話題をお届けしよう。

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第一興商、営業利益は614.3%増

第一興商が発表した2023年3月期・第3四半期(2022年4月1日~2022年12月31日)の連結業績は、売上高が前年同期比35.2%増の945億700万円、本業の利益を示す営業利益は同614.3%増の96億9,000万円、経常利益は同330.6%増の102億3,800万円、純利益は同74.5%増の90億100万円と大幅な増収増益となった。

同期のカラオケ業界は、新型コロナウイルス禍のまん延防止等重点措置とそれに伴う要請等が解除されたことにより、ナイト市場・カラオケボックス市場ともに多くの店舗が通常営業を再開した。ビジネス立地や深夜帯の集客など一部にはコロナ禍の影響が継続したほか、第7波・8波といった感染の再拡大もみられたものの、行政による営業制限等は行われず、全体として回復傾向で推移した。

セグメント別の状況は以下の通りである。

主力市場のナイト店舗が回復、介護施設等のエルダー市場で営業強化

同期の「業務用カラオケ」のセグメントは、売上高が前年同期比10.2%増の434億1,400万円、営業利益は同18.7%増の108億9,800万円と大幅な増収増益となった。

同期は、新型コロナウイルス禍の各種営業制限のない状況が継続したことに伴う顧客店舗の再開や新規開店の増加により、主力市場であるスナック・バーなどのナイト店舗を中心に、事業環境は回復傾向で推移した。こうした中、今期の重要課題であるDAM稼働台数回復のため、カラオケ機器導入を支援するウェブサイト「カラオケの窓口」の開設に加え、物件情報サイト「よるみせナビ」を開設、さらに介護施設等のエルダー市場においてオンラインイベントを開催するなど、従来の対面営業に加えてウェブも活用した営業体制の構築に努めた。

また、前期にリリースしたライブの臨場感をそのままカラオケ店で体感できる新コンテンツ「ライビュー!」をはじめ、ライブ映像・アニメ映像・ミュージックビデオなどの映像コンテンツをさらに充実させることにより、カラオケDAMの商品力強化を図った。さらに、2022年10月にはDKエルダーシステム専用の最新機種として、レクリエーションの進行プログラムを自動作成・再生する「おまかせレク」や、進行プログラムを複数の施設と同時ペアリングで共有し、遠隔操作できる「リモートセッション」など、介護施設職員の業務負荷軽減につながる機能を新たに搭載した「FREE DAMLIFE(フリーダムライフ)」を発売、エルダー市場における旧機種からの入替えと新規顧客の獲得を図った。

カラオケ・飲食店舗は増収減益

「カラオケ・飲食店舗」のセグメントは、売上高が前年同期比108.8%増の372億4,000万円、営業損益は7億900万円の損失(前年同期は69億1,400万円の営業損失)となった。

同期はカラオケ店で13店舗、新業態(あまつ、ぎん天)を含む飲食店で9店舗を出店する一方で、カラオケ店で3店舗、飲食店で10店舗の閉店を行った。その結果、同期末の店舗数はカラオケ店で513店舗、飲食店で174店舗となった。

新型コロナウイルス禍の各種要請が解除されたことにより、店舗の集客は期初から回復傾向で推移した。ビジネス立地や深夜帯の集客など一部でコロナ禍の影響が継続したほか、第7波・8波といった感染拡大時には回復基調の一時後退もみられたものの、同期を通じて通常営業ができたことにより、既存店売上高はコロナ禍以前に比べカラオケ店舗で約25%減(前年同期比では約100%増)、飲食店舗で約20%減(前年同期比では約130%増)の水準まで回復した。

こうした中、ビッグエコー店舗においては最上位機種である「LIVE DAM Ai(ライブダムアイ)」を全室に設置した店舗を44店舗とするなど設備面での強化を図り、顧客満足度の向上に努めた。また、SNS(Twitter、TikTok)によるカラオケの楽しさの訴求をはじめ、2022年6月より全店で開始した「最強学割」を打ち出すことなどにより、若年層の集客にも注力した。

音楽ソフト、その他も好調に推移

「音楽ソフト」のセグメントは、売上高が前年同期比7.3%増の46億8,000万円、営業利益は同163.1%増の1億2,400万円となった。同期は、イベント・コンサートが徐々に再開され始めるなど、音楽業界にも活気が戻りつつあるなかで、CD・DVD等の商品販売が回復傾向で推移したほか、テレビ番組制作事業も堅調に推移した。

一方、「その他」のセグメントは、売上高が前年同期比9.9%増の91億7,300万円、営業利益は同57.4%増の12億1,100万円となった。同期は、新たな収益の柱とするべく「ザ・パーク」ブランドで展開するパーキング事業が堅調に推移し、同期末時点で約2,000施設、約2万4,500車室に拡大した。

2024年3月期は、どのような展望が示されるのか?

第一興商は、2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比33.5%増の1,265億円、本業の利益を示す営業利益で120億円、経常利益で128億円、純利益で100億円と従来見通し(2022年8月8日公表)を据え置いた。

ちなみに、5月15日には2023年3月期の決算発表を予定している。ここで上記の予想に対してどのような業績となるのか、また来期(2024年3月期)の業績見通しについてどのような展望が示されるのか注目されるところである。■

(La Caprese 編集部)

特集:外食産業「復活」への期待
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