2024年2月20日、東京証券取引所で森永乳業の株価が一時3,193円まで買われ、昨年来高値を更新した。2023年3月1日の安値2,268円から11カ月半で40.8%の上昇である。
森永乳業は、牛乳や乳製品、アイスクリーム、飲料その他の食品等の製造・販売を手がける企業である。その源流は1917年に創業した日本煉乳にまでさかのぼる。創業100周年を迎えた2017年には、グループ理念を新たに策定し、「かがやく“笑顔”のために」というコーポレートスローガンを掲げた。この言葉には、日々の生活や、家族や仲間との団らんを通じて、内面から自然とあふれてくる“笑顔”を生み出していきたい、という想いが込められている。
後段で述べる通り、森永乳業が公表した、❶2024年3月期・第3四半期(2023年4月1日~2023年12月31日)の連結業績が増収増益となったことに加え、❷2024年3月期の年間配当予想を従来計画の50円から60円に増額修正したこと……などが株価にも刺激材料となった。
今回は森永乳業の話題をお届けしよう。
森永乳業、純利益は417.8%増
2月9日、森永乳業は2024年3月期・第3四半期(2023年4月1日~2023年12月31日)の連結業績を発表した。同期の経営成績は、売上高が前年同期比4.4%増の4,232億4,100万円、本業の利益を示す営業利益は同36.9%増の280億1,500万円、経常利益は同32.7%増の285億7,200万円、純利益は同417.8%増の627億9,800万円と増収増益となった。
同期は栄養・機能性食品事業および主力食品事業において、ヨーグルト・育児用ミルク・ビバレッジ・チーズ・牛乳・デザートなどの価格改定に加えて、機能性ヨーグルト・マウントレーニア・アイスなどの高付加価値商品の提供に努めた。また、価格改定や消費活動回復によるBtoB事業の増収、新規に連結した海外子会社の寄与など海外事業の拡大、国内子会社の拡大もあり、増収となった。
利益面では原材料価格や各種オペレーションコストを中心に、さまざまなコストアップの影響を受けることとなった。特に原材料については、2023年4月に乳製品向け、8月に飲用・発酵乳用途向け、12月にバター向けおよびクリーム向けの生乳取引価格の引き上げが行われた。また、2023年4月に実施した東京工場跡地売却にかかる一時的な税負担や、M&Aによるのれん償却費の増加など、新たなコストアップも発生した。その一方で、価格改定や、利益率の高い事業および商品の拡大によるプロダクトミックスの改善、グループ全体でのコストの見直しなどを推進した。その結果、上記の通り、各段階利益がいずれも大幅な増益となった。なお、東京工場跡地の売却による特別利益として第1四半期に657億円を計上したこともあり、純利益は前年同期比417.8%増と大幅増益となった。
ちなみに、森永乳業の「中期経営計画 2022-24」における事業分野別(4本の事業の柱)の業績概況は以下の通りである。
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栄養・機能性食品事業
栄養・機能性食品事業は、ヨーグルトの価格改定に取り組んだほか、健康志向の高まりを背景にビヒダスヨーグルトやパルテノが好調に推移する中、機能性ヨーグルトの拡大にも継続して注力した。また、育児用ミルクなどの栄養食品、流動食などを扱うクリニコ社の寄与もあり、事業全体で増収となった。利益面では原材料価格の上昇やオペレーションコスト増加の影響を受けたが、価格改定やプロダクトミックスの改善、コスト削減などに努めた結果、増益となった。
主力食品事業
主力食品事業は、原材料価格の上昇やオペレーションコストの増加の影響を受けたが、ビバレッジ・チーズ・牛乳・デザートなどの価格改定や、マウントレーニア・アイスなどの高付加価値商品の拡大によるプロダクトミックスの改善、コスト削減などに努めた結果、事業全体で増収増益となった。
BtoB事業
BtoB事業は、原材料価格の上昇やオペレーションコストの増加の影響を受けたが、構成比の高い業務用乳製品において、消費動向の回復に応じた拡販や価格改定を進め、事業全体でも増収増益となった。また、健康ニーズの高まりから、森永乳業の保有する菌体をはじめとする機能性素材へも引き続き高い関心が寄せられた。
海外事業
海外事業は、輸出事業が減収となった。加えて、MILEI GmbH(ミライ社)も大きく拡大した前期からの反動減もあり減収となった。しかし、その一方で、M&Aにより新たに連結子会社となったNutriCo Morinaga (Pvt.) LTD.(ニュートリコ モリナガ社)、Turtle Island Foods, Inc.(タートルアイランドフーズ社)、Morinaga Le May Vietnam JointStock Company(モリナガ ル マイ社)の寄与もあり事業全体では増収となった。利益面では、MILEI社の反動減や原材料価格の上昇の影響、M&Aによるのれん償却費の増加などがあり減益となった。
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年間配当予想を増額修正
2月9日、森永乳業は2024年3月期・通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比4.6%増の5,500億円、本業の利益を示す営業利益で同12.8%増の270億円、経常利益で同11.0%増の280億円、純利益で同265.6%増の617億円と従来予想(2023年10月26日公表)を据え置いた。
なお、冒頭でも述べた通り、森永乳業は2024年3月期の年間配当予想を従来計画の50円から60円に増額修正すると発表した。森永乳業は、財務の健全性、内部留保の重要性に留意しつつ、安定的かつ長期的な配当を実施することを基本方針とし、配当性向で30%(一過性要因を除く)を目標としている。今回の増額修正はこの方針に基づいたものである。
引き続き、森永乳業の業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)