空気中には、ほこりや花粉などの目に見えない微粒子が浮遊している。これらの微粒子の肌への影響として、肌がくすんで見えたり、肌あれなどのトラブルが生じたりすることがある。特に肌のバリア機能が低下している状態では、大気汚染物質が肌に付着するとかゆみを感じやすい状態になるという報告もある(※1)。また、日本や中国、タイにおいて肌が敏感という意識がある人に行った調査(※2)では、花粉、大気汚染も肌が敏感になる要因の一つと考えられていることが分かっている。
そうした中で注目されるのは、花王(本社:東京都中央区)のスキンケア研究所が、ほこりや花粉などの微粒子の肌への付着を抑制することにより、肌にものが触れることに対して敏感意識のある肌で「5 Hzの電流知覚閾値(いきち)(CPT値 ※3)」が高くなり、刺激感を感じにくくなることを確認したことである。花王は2020年に微粒子の肌への付着を抑制する技術を開発しており(※4)、本研究ではこの技術を活用して検証した。
なお、本研究成果は、第5回 日本フォトダーマトロジー学会 学術大会(2022年11月18~21日・東京)にて発表した。以下はその概要である。
肌に外部因子が触れることに対する敏感意識を調査
肌への接触刺激に対する敏感さの指標
肌の敏感さを評価する指標としては、角層バリア機能(水分蒸散量/TEWL)や電流知覚閾値(CPT値)が知られている。そこで、肌に外部因子が触れることに対する敏感意識を調査したところ(※5)、大気汚染によって不快を感じる、接触刺激による不快感が気になるなどのスコアが高い人ほどCPT値が低いという相関があることが判明した(図1)。一方、一般的な乾燥性敏感肌の指標であるTEWLと接触敏感意識との相関は認められなかった。
微粒子付着抑制技術の連用により外部刺激を感じにくくなる
花王は、花粉や微粒子などの外部刺激により不快を感じると回答した20~49歳の女性に、花粉や微粒子の飛散が多い3~4月に4週間、微粒子付着抑制率64%の試験品または3%の対照品を継続して使用してもらった(※6)。その結果、肌が敏感な人ではムズムズとしたかゆみに感じる程度の電流周波数5HzのCPT値において、試験品を継続使用したグループは頬と目元のどちらの部位でも有意に刺激を感じにくくなっていた(図2)。
QOLの向上と快適な日常生活の実現に向けて
本研究では、接触刺激を感じやすい肌に対して、花粉などの微粒子の付着を抑制すると刺激感を感じにくくなる可能性が示された。花王は、本研究で得られた知見を活かし、肌が敏感と感じる人のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上と快適な日常生活の実現に向けて取り組む方針である。
花王のさらなる研究成果を期待したい。■
(La Caprese 編集部)