「ウロキナーゼ」をご存知だろうか? ウロキナーゼは生体に存在する酵素の1種であり、活性が高まると肌あれのきっかけとなることが知られている。
興味深いのは、大手化粧品メーカーの資生堂 <4911> の研究チームが2020年11月に「肌のシミ部位ではウロキナーゼの活性が高まる」ことを発見、さらに「紫外線ダメージにより、ウロキナーゼが血管内皮細胞から分泌され、メラニン生成促進に関与する」ことを確認したことだ。
資生堂は先行研究で、肌のシミ部位には異常な毛細血管ネットワークが存在することや、その血管がシミへ悪影響を及ぼすことを明らかにしており、ウロキナーゼが血管内皮増殖因子(VEGF-A)と協調して血管新生を促進することから、「ウロキナーゼは血管を介したシミ形成に繋がる要因であると考えられる」と指摘している(図1)。また、資生堂は「オトギリ草抽出液」にウロキナーゼの活性を抑制する効果があることも見出している。
今回は資生堂の研究成果を紹介したい。
血管を介したシミ形成とウロキナーゼの関係性
まず、資生堂の研究チームが肌の非シミ部位とシミ部位の比較検討を行ったところ、シミ部位ではウロキナーゼの活性が特異的に高まっていることを発見した(図2)。また、細胞を用いた実験にて、紫外線を照射することで血管内皮細胞からウロキナーゼが分泌されることも確認した(図3)。シミ部位では血管内皮増殖因子(VEGF-A)も多く産生されており、ウロキナーゼはVEGF-Aと協調して血管新生を促進していることが判明した。
続いて、ウロキナーゼとメラニン生成促進の関係性について調べたところ、ウロキナーゼの活性を高めると、それに伴いにメラニン生成の引き金となる酵素チロシナーゼの活性が高まることを確認した(図4)。
以上の結果から、ウロキナーゼは血管を介したシミ形成に関与することが示唆され、ウロキナーゼの活性は、シミを悪化させる環境に影響を及ぼす一因であると考えられる。
ウロキナーゼの活性を抑制する薬剤「オトギリ草抽出液」
さらに、資生堂の研究チームがウロキナーゼの活性を抑制する成分を探索したところ、「オトギリ草抽出液」にウロキナーゼ活性抑制効果があることを見出した(図5,6)。このことから、「オトギリ草抽出液」は血管を介したシミ形成に関わるウロキナーゼの活性を妨げ、シミが悪化する環境を改善する作用がある可能性が見出された。
ちなみに、資生堂はメラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐことを「美白」と定義づけている。「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」という企業理念を掲げる資生堂は、シミ部位特有の肌状態の研究を重ね、さまざまなシミ形成要因を解明するなど、美白研究をリードしてきた企業でもある。
引き続き、資生堂の取り組みに注目していきたい。■
(La Caprese 編集部)