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個々の肌の再生能力を予測するシステムを開発――日本メナード化粧品の研究成果

美肌,再生
(画像= Canva、La Caprese)

2023年11月9日、日本メナード化粧品(本社:愛知県名古屋市)は、個々の肌の再生能力を予測するシステムの開発に成功したことを明らかにした。

日本メナード化粧品は、かねてより藤田医科大学との共同研究で、個々の肌の再生能力を見極める技術の開発を進めてきた。今回明らかになった研究成果は、非侵襲的に肌の内部構造を高解像度でイメージング可能なLC-OCT(※1)の技術を応用し、これまでの幹細胞研究のデータから開発した独自AI(人工知能)を組み合わせることで、肌を傷つけることなく外部から内部の幹細胞の数や存在場所を予測し可視化する技術である。

日本メナード化粧品によると、「肌の再生能力は幹細胞の数や状態によって左右されます。そのため、本研究は肌の健康状態や老化の把握のほか、再生医療や創薬の分野への応用も期待できます」としている。なお、本研究成果は2023年11月3日から5日にかけて札幌で開催された第32回日本バイオイメージング学会にて発表した。

本研究成果の概要は以下の通りである。

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個々の肌の再生能力を予測するシステムを開発

美肌,再生
(図1) 出典:日本メナード化粧品

これまでの研究から、私たちの肌の再生には幹細胞が重要な役割を担っていることが分かっている。また、肌の幹細胞は、加齢にともない数の減少や状態の変化などがおこり、肌の機能や再生能力が低下していくことも明らかになっていた。これまで、このような肌の幹細胞の状態を解析するためには、一般的に病理学的手法により摘出した皮膚を用いることが必要でしあったが、この手法では侵襲性をともなうため汎用的に実施するのは困難であった。そこで本研究では、肌を傷つけることなく、肌内部の幹細胞の数や分布を知ることで、その人の肌の状態や再生能力を見極める技術の開発を目指した。

ちなみに、日本メナード化粧品はこれまでの研究から、表皮幹細胞の形状が他の角化細胞と異なりラグビーボール状であることを見出している。この情報を利用して、基底膜上にある細胞の中から幹細胞を見分ける独自のAIを開発した。さらに、肌を傷つけることなくその内部構造を高解像度で観察できるLC-OCTの技術を用いて、得られた肌内部の3次元映像を先に開発したAIにより分析し、表皮の基底膜上にある幹細胞(表皮幹細胞)の数や分布を予測し可視化する技術を確立した。この技術は、再生医療前後の肌の状態変化の観察や肌の再生を促す有効成分の探索などへの応用が期待される。

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参考資料①表皮幹細胞がラグビーボール状をしていることを発見

幹細胞は肌の再生を担う重要な細胞として、再生医療への応用や創薬研究のターゲットとして研究が進められている。これまでの研究から、肌に存在する幹細胞の数や状態が、肌の状態や組織の再生能力に大きく関係していることが明らかになっている。つまり、個々の肌状態や肌の再生能力を見極めるためには、その人の肌の幹細胞の状態を知ることが必要になる。

そこで本研究では、20~80代の人の皮膚組織(20検体)に存在する表皮幹細胞と、角化細胞を含めた非幹細胞の形状(細胞の大きさや形など)について詳細に解析した。

美肌,再生
(図2) 出典:日本メナード化粧品

その結果、表皮幹細胞の高さの平均値は約12.50 μm、横幅の平均値は約7.56 μmであるのに対し、角化細胞の高さは平均値は約9.60 μm、横幅の平均値は約8.32 μmであることが判明した。解析した各細胞のアスペクト比(縦横比)を算出し、判別分析法による評価を行った結果、アスペクト比が1.55以上の細胞が表皮幹細胞として判断できることが分かった。つまり、肌内部に存在している表皮幹細胞は角化細胞に比べて縦方向に長いラグビーボール状の形状をしていることが明らかになった。

美肌,再生
(図3) 出典:日本メナード化粧品

参考資料②LC-OCTとAIを活用した非侵襲的な表皮幹細胞の検出方法の開発

これまで肌の幹細胞の状態を解析するためには、皮膚組織を摘出し病理学的手法を用いて解析することが一般的だった。しかし、この方法は個々への負担が大きく汎用性に欠けるものであった。そこで共同研究では、昨今のイメージング技術の進歩に着目し、肌を非侵襲的に外部から内部の構造を高解像度でイメージングできるLC-OCTの技術を応用することを考えた。

LC-OCTは、組織の内部構造を細胞レベルでイメージングすることが可能である。そこで、先に解析した表皮幹細胞の形状に関するデータをもとに、形状から表皮に存在する幹細胞を見極める独自AIを開発し、LC-OCTで得た映像を今回のAIで分析することで、基底膜上に存在する表皮幹細胞を予測し可視化する技術を開発した。具体的には、LC-OCTで得た映像をもとに下記の手順でAI分析を行い、表皮幹細胞を特定し基底膜上に3D CGとして可視化させる技術である。

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(図4) 出典:日本メナード化粧品
注釈

(※1)LC-OCT(Line-field Confocal Optical Coherence Tomography)
ラインフィールド共焦点光コヒーレンストモグラフィー。共焦点顕微鏡と光干渉断層計の組み合わせに基づくイメージング技術で、皮膚組織を細胞レベルで映像化できる非侵襲的な解析手法。

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