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フレイルのリスク要因は「運動不足」だけではない? 「コミュニケーション量の低下」や「意欲の低下」も影響――ソフトバンクの調査報告

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(画像= Canva、La Caprese)

フレイルリスクが高いシニアの約4人に1人以上が「外出するのが億劫で必要最低限しか出かけない」生活を送っている――2023年3月9日、ソフトバンク(本社:東京都港区)が発表した『シニア世代の健康に関する調査』でそのような実態が浮き彫りとなった。

『シニア世代の健康に関する調査』は、全国の60歳~79歳の男女1,000人に対して実施したもの。新型コロナウイルス禍において外出機会が減り、それに伴い運動の機会が減ったことで「病気ではないけれども年齢とともに筋力や心身の活力が低下」し、フレイル状態(要介護状態と健康の間に位置して、身体や認知機能が低下した虚弱状態)に陥るリスクが懸念されている。そうした中、新型コロナウイルス禍のどのようなライフスタイルを過ごしていた人が健康状態を維持し、逆にどのようなライフスタイルを過ごしていた人が「フレイルリスクが高い状態」となっているのかを把握するために調査は行われた。

今回はソフトバンクの『シニア世代の健康に関する調査』を紹介したい。

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ソフトバンク『シニア世代の健康に関する調査』

調査結果サマリー

■フレイルリスクが低いシニアに比べ、フレイルリスクが高いシニアは「日常的な楽しみがない」と感じている。その数は約5倍以上にのぼることが判明。
■フレイルリスクが高いシニアの約半数が、家族以外の知人と1カ月以上も会わない生活を送っていることが判明。
■フレイルリスクが高いシニアの約4人に1人以上が、「外出するのが億劫で、必要最低限しか出かけない」生活を送っている。
■フレイルリスクの高いシニアの3人に1人以上がアフターコロナに近づきつつある中、やりたいことが「特にない・やりたいことがわからない」と回答。

【参考】今回の調査方法について

本調査は、東京大学高齢社会総合研究機構・飯島勝矢氏の『フレイル予防ハンドブック』のイレブンチェックに基づいている。イレブンチェックは身体的・精神的・社会的の3つの面を評価する11項目の質問で構成しており、これに新型コロナウイルス禍におけるライフスタイルに関する質問を加えたアンケートを実施した。

具体的には、上記「イレブンチェック」にてマイナス面寄りの回答量により、①マイナス回答0~3 ②マイナス回答4~5 ③マイナス回答6~11……にグルーピング。その上で、①は健康③はフレイルリスクが高い状態とし、互いの層で新型コロナウイルス禍におけるライフスタイルにどのような違いがあったのかを検証した。

60歳以上の6割近くが「フレイルリスクが比較的高い傾向にある」

まず、本調査に協力していただいた60歳以上の6割近くが「フレイルリスクが比較的高い傾向にある」ことが判明した。さらにフレイルリスクを高めているのは「運動不足」だけでなく、「コミュニケーション量の低下」「意欲の低下」も影響していることが明らかになった。

下記の円グラフ(図1)が示す通り、回答者全体の31.7%が「フレイルリスクが高い状態」、26.1%が「中程度のリスクを抱えている状態」で合計6割近くがフレイルリスクが比較的高い傾向にあることが判明した。また、「フレイルリスクが高い状態」にあるシニアを年齢/性別で分析すると、特に60代の男性にフレイルリスクが高い傾向にあることが明らかになった。(図2)

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(図1) 出典:ソフトバンク
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(図2) 出典:ソフトバンク

フレイルリスクが高いシニアほど「日常的な楽しみがない」と感じている

続いて、「日常的な楽しみと思うもの」についてアンケートを行ったところ、フレイルリスクの高いシニアのうち約16%が「特にない」と回答しており、フレイルリスクが低いシニアの比率と比べると約5倍の差が出ていることが判明した。(図3)

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(図3) 出典:ソフトバンク

ちなみに、フレイルリスクの低いシニアの「日常的な楽しみと思うもの」の共通点として、「友人と会話」などのコミュニケーション機会や、「スポーツ」「食品日用品以外の買い物」といった回答が寄せられていた。(図4)

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(図4) 出典:ソフトバンク

コミュニケーション機会が少ないほど、フレイルリスクが高まる傾向

また、フレイルリスクが高いシニアの約半数(48.9%)が、家族以外の知人と1カ月以上も会わない生活を送っていることが判明した。一方、フレイルリスクの低いシニアの3人に1人が「週に3回以上家族以外の知人と会っている」(32.9%)と回答しており、両者を比較すると、家族以外との交流頻度に大きな違いがあることが明らかになった。(図5)

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(図5) 出典:ソフトバンク

具体的に、家族以外との交流で「現在参加しているもの」について質問したところ、フレイルリスクの高いシニアの「ボランティアなどの地域交流の場」や「趣味やスポーツで繋がるコミュニティ」へ参加している人の割合が、フレイルリスクの低いシニアの3分の1程度であることが明らかになった。(図6)

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(図6) 出典:ソフトバンク

外出頻度が少ない人ほど、フレイルリスクが高まる傾向

「外出について」の質問に対しては、フレイルリスクが高いシニアの29.7%が「外出するのが億劫で、必要最低限しか出かけない」と回答している。フレイルリスクの高いシニアはフレイルリスクの低いシニアに比べて用事を作った上での外出機会が圧倒的に少なく、外出に対してのモチベーションも格段と低い傾向にあることが判明した。(図7)

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(図7) 出典:ソフトバンク

もともと「家族以外の知人と会う頻度」など、コミュニケーションの機会が少ないことで、外出への意向も下がり、必要最低限しか出かけない生活を送ってしまっていることが、結果的にフレイルリスクを高めることにも繋がっていると考えられる。

フレイルリスクの高いシニアは、「楽しみを見つける意欲」がなくなっている?

また、フレイルリスクの低いシニアの約半数が「やることがたくさんあって充実している」とする一方、フレイルリスクの高いシニアの3人に1人が「億劫だったり面倒くさいと感じることが多い」と回答している。(図8)

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(図8) 出典:ソフトバンク

上記の通り、フレイルリスクの低いシニアについては、「何かしようと思っても中々動き出せない」「億劫だったり、面倒くさいと感じることが多い」「気力がわかない」と回答しているのは20人に1人程度であり、フレイルリスクのレベルによってメンタル面においても大きな違いが出ていることが読みとれる。

アフターコロナでやりたいことは?「特にない・やりたいことがわからない」との回答も

2023年5月8日より、新型コロナウイルスの感染法上の分類は季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられることが決定した。そこで、「5類に分類されたあとにやりたいこと」について質問した。(図9)

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(図9) 出典:ソフトバンク

結果は上記の通りで、フレイルリスクの高低に関わらず「国内旅行」についてはどちらも半数近くが意欲を示していた。また、フレイルリスクが低いシニアは「友人や家族との食事会」や「コンサートや美術館に行く」ことにも高い意欲を示す傾向にあることが認められた。

一方で、フレイルリスクの高いシニアの3人に1人以上がアフターコロナに近づきつつある中「特にない・やりたいことがわからない」と回答している。

フレイルリスクが低いシニアは「楽しみを自主的に見つけていく意欲」が高い傾向

最後に日々の過ごし方がフレイルリスクにどう影響するかを調べるために、シニアの「ライフスタイル」に関する質問を行った。その結果、フレイルリスクの低いシニアの5人に1人が「近所に友達がいて一緒に遊ぶことが多い」と回答した一方、フレイルリスクの高いシニアでは20人に1人程度と大きな差が出ていることが判明した。(図10)

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(図10) 出典:ソフトバンク

またフレイルリスクの低いシニアの共通点として「毎日欠かさず行っている日課がある」「日頃スマホを使って調べ物や連絡を取り合っている」「電話やインターネットSNSでやり取りしている友人がいる」というライフスタイルが浮かび上がった。

フレイルリスクの高いシニアが日常的に「億劫さ」や「面倒」を感じる傾向がある一方で、フレイルリスクの低いシニアは自主的に友人との交流機会をつくり、継続して行っていることがあり、様々なことに興味関心を抱いているといった「日常に楽しみを自主的に見つけていく意欲」が高いことが明らかになった。

意欲を取り戻し、継続して外出・運動したくなるような「仕掛け」が必要

本調査では、フレイルリスクが高いシニアの傾向として「運動不足」だけでなく、「交流機会や外出頻度が少なくなっていき、その結果様々なことへの意欲が薄れてしまっている」という課題もあることが明らかになった。

たとえば、フレイルリスクが高いシニアに「歩きましょう」と伝えても、前提として外出する意欲を失ってしまっているため、フレイルリスクの高い状態からなかなか脱せないことも予想される。ソフトバンクは「フレイルリスクが高いシニアが意欲を取り戻し、継続して外出・運動したくなるような仕掛けを、各々に任せるのではなく外部からサポートすることが、今後のフレイル対策に必要になってくると考えられる」との見解を示している。■

(La Caprese 編集部)

特集:アンチエイジング最前線
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