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エッセイ:ウクライナ侵略から1年。命を踏みつけにされる子どもたち

ウクライナ侵攻 1 年
避難所となった幼稚園の地下室で勉強をする10歳のマルガリータさん。(ウクライナ、2023年1月24日撮影) © UNICEF_UN0778560_Filippov

2023年2月24日、ロシアがウクライナへの侵略を開始してから1年が経過した。戦争の終結は見通せず、メディアの報道などでは長期化は不可避との観測が広がっている。ウクライナは欧米諸国からの軍事支援を後ろ盾に、ロシアの力による現状変更に徹底抗戦を継続しており、戦況はこう着している様子である。

気になるのは犠牲者の数だ。2022年12月、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は「ウクライナ政府の推定」として、ウクライナ軍の死者数は1万人から1万3,000人と発表。負傷者はさらに多いとの見解を示した。一方、2023年2月17日には英国の国防省が、ロシア軍の兵士や民間軍事会社の戦闘員の死傷者数が17万5,000人から20万人に達しているとの見方を示し、このうち死者数は4万人から6万人に上ると報告している。

また、OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)の調査によると、ロシアの侵略が始まってから2023年2月12日までに少なくとも7,199人のウクライナ市民が死亡したとしている。このうち438人は18歳未満の子どもだという。OHCHRによると、犠牲者の大半は砲撃やミサイル、空爆などによるもので、死亡したウクライナ市民7,199人のうち27%(1,964人)は遺体の損傷がひどく性別が判別できないとしている。このほか、負傷したウクライナ市民は1万1,756人に上るという。

OHCHRは戦闘が継続している地域などでは「正確な被害の実態は把握できていない」としており、実際の死傷者は上記の人数を大きく上回るという見解を示している。

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ウクライナ、貧困の中で暮らす子どもが急増

ロシアのウクライナ侵略は、ウクライナの子どもたちの生活に深刻な影響をおよぼしている。前述の通り、2023年2月12日までに少なくとも438人の子どもたちの命が奪われた。また、ユニセフの分析によると、ウクライナではロシアの侵略による経済的ダメージで、貧困の中で暮らす子どもの割合が43%から82%へほぼ倍増したという。特にウクライナ国内で避難生活を送っている590万人については、より深刻な状況にあると指摘している。

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセル氏は「ウクライナの子どもたちは、恐怖の1年を過ごしています。何百万人もの子どもたちが寒さと恐怖の中で眠りにつき、この残虐な戦争の終結を願いながら目覚めています。命を奪われ、傷を負った子どもたちがいます。多くの子どもたちが親や兄弟、家や学校、遊び場を失いました。そのような苦しみを背負う子どもが一人でもいてはならないのです」と述べた。

戦争は、子どもたちのメンタルヘルスや健やかな生活にも壊滅的な影響をおよぼしている。ユニセフによると、推定で150万人の子どもたちが、うつ病や不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などのこころの病気の危険にさらされており、その影響は長期間におよぶ可能性があると指摘している。

価値観は人それぞれである。世界にはさまざまな価値観をもつ人がいる。ときには、気心が合わなかったり、どうしても理解できない人、親しみをもてない人もいることだろう。人間であれば当然のことだと思う。しかし、だからといって、価値観が異なる人の命を奪っていいことにはならない。市民を巻き込んだり、ましてや子どもたちの命を踏みつけにすることなど許されるはずがない。

「子どもたちが子どもらしさを取り戻し、日常を再び手にするためには、この戦争が終わり、平和が持続することが必要です。それが実現するまでは、子どもたちのこころの健康と心理社会的なニーズを優先させることが極めて重要なのです。これには、養育的なケアを提供し、立ち直る力を養い、特に年長の子どもや若者には、自分の懸念を表現する機会を与えるという、年齢に応じた支援が含まれるべきです」と前述のキャサリン・ラッセル事務局長は訴えた。■

(La Caprese 編集長 Yukio)

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