フェイシャルマッサージによる「たるみ改善効果」を実証。――2022年6月2日、コーセー(本社:東京都中央区)と加齢画像研究所 ONI 所長の奥田逸子医師らとの共同研究で、そのような成果が明らかになった。
本研究で、肌のたるみと関連する皮膚深部の表在性筋膜や脂肪層の状態をCT画像により解析したところ、「毎日のお手入れの際に簡単な顔面マッサージを2週間続ける」ことで、表在性筋膜と脂肪層の幅が減少し、頬の位置がリフトアップすることが確認され、継続的なフェイシャルマッサージがたるみ改善に有効であることが明らかになった。
なお、本研究成果の一部は、2022年4月に皮膚の計測や画像化技術に関する学術誌『Skin Research & Technology』にてオンライン掲載された。
本研究の概要は以下の通りである。
フェイシャルマッサージによるたるみ改善効果を実証
加齢ともに進行する顔のたるみは、多くの人が感じている肌悩みの一つである。たるみは、皮膚深部にある表在性筋膜や表情筋、脂肪層などの顔面深部構造が加齢により変化することが原因の一つと考えられ、その対策として表在性筋膜をターゲットにした美容医療やエステ等でのマッサージが行われている。
しかし、フェイシャルマッサージによるたるみ解消効果は経験的に知られていたものの、継続的なセルフマッサージ前後での顔面深部の構造変化を解析した研究は、これまでされてこなかったのが実情であった。そこで、本研究では、29歳~37歳の男女5名の被験者に1日2回、乳液を塗布しながらセルフマッサージを2週間継続してもらい、試験開始前と終了時に顔面CT画像を撮影した。マッサージは90秒程度の簡単なもので、試験終了時のCT測定前にも同じマッサージを専門技術者の手により施した。
そして、取得したCT画像から皮膚深部の表在性筋膜および脂肪層の状態を解析したところ、表在性筋膜と脂肪層の幅が減少し、頬の位置のリフトアップが確認された。
フェイシャルマッサージで表在性筋膜幅が減少
表在性筋膜は脂肪層の中に存在するコラーゲンやエラスチンなどから構成される厚さ約1㎜未満の非常に薄い膜組織である。肌の裏側から皮膚組織を支え、頬のたるみ防止に重要な役割を果たしていると考えられており、加齢とともにこの筋膜の緩みが進行することも明らかになっている。
本研究で、仰向けの状態で撮影したCT画像を用いて試験前後の変化を解析したところ、左右の筋膜の最大距離である表在性筋膜幅が、試験後には5名中4名で減少し、引き締まっていることが判明した(図1)。
ちなみに、表在性筋膜幅の平均減少量は約1.2mm(平均0.94%減少)であった。この結果から、フェイシャルマッサージは、加齢とともに緩みが進行する皮膚深部の表在性筋膜を引き締める効果があることが示唆された。
フェイシャルマッサージで脂肪層の厚みが減少し、頬の位置も上昇
頬の脂肪層は、起きている体勢では重力により常に下方向に引っ張られており、たるみ発生の重要な要素になっていると考えられている。
そこで、起きた状態で撮影したCT画像を用いて試験前後の変化を解析したところ、同一部位における脂肪層の厚みが平均で約0.8mm減少(平均3.7%減少)していることが判明した(図2)。
さらに、頬の最も高い位置は試験前よりも平均で約2.7mm上方向に移動していることも明らかになった(図3)。
以上の研究成果により、フェイシャルマッサージはたるみ改善や頬のリフトアップに寄与していることが判明した。従来、フェイシャルマッサージはリンパの流れを促進し、むくみを解消すると考えられていたが、今回の検討から、脂肪層の状態を変化させることでたるみ改善にもつながっていることが示唆された。
コーセーは引き続き、科学的な裏付けをもって、消費者の美容と健康に関わる「ウェルビーイング」の分野も視野に入れた、よりパーソナルな価値提案を目指す方針である。今後のさらなる研究成果が期待される。■
(La Caprese 編集部)