2023年1月17日、東京証券取引所でイオンモールの株価が一時1,752円まで買われ、昨年来の高値を更新した。2022年3月9日につけた安値1,506円から10カ月ほどで16.3%の上昇である。
イオンモールは、ショッピングセンター事業を展開・運営する企業である。国内事業のほか、中国やベトナム、カンボジア、インドネシアなどの海外事業も積極的に展開している。後段で詳述する通り、1月12日発表の2023年2月期・第3四半期(2022年3月1日~2022年11月30日)の連結業績では、純利益が大幅なマイナスとなったものの、営業収益および営業利益は2ケタを超えるプラスを記録した。特に中国やベトナム、カンボジア等が好調で、業績全体に寄与している。
今回はイオンモールの業績をみてみよう。
イオンモール、営業利益は14.6%増の324億9,900万円
1月12日、イオンモールは2023年2月期・第3四半期(2022年3月1日~2022年11月30日)の連結業績を発表した。同期の営業収益は前年同期に比べて26.3%増加の2,946億円、本業の利益を示す営業利益は同14.6%増の324億9,900万円、経常利益は同12.1%増の266億2,400万円と増収増益となった。一方、純利益は36.6%減の104億2,800万円と大幅なマイナスとなった。
純利益が大幅なマイナスになったのは、(1)特別損失に、新型コロナウイルス感染症の影響による一時休業期間中の固定費等として「新型コロナウイルス感染症による損失」を20億4,000万円。老朽化した一部の施設におけるスクラップ&ビルドの決議により、減損損失を17億3,100万円。店舗閉鎖損失引当金繰入額を20億1,700万円。国内外モールの活性化推進等による固定資産除却損を24億6,800万円とそれぞれ計上。その結果、税金等調整前四半期純利益が同11.0%減の179億3,200万円となったこと。(2)また、前年度において、子会社であるOPAの吸収合併に伴い繰延税金資産を計上したこと等により、法人税等合計が前年同期比で37億5,500万円増加したためとしている。
海外事業は、中国やベトナム、カンボジアが好調
セグメント別(国別)では、日本の営業収益は前年同期に比べて23.6%増加の2,368億5,900万円、営業利益は同同11.0%増の243億1,900万円と増収増益となった。
同期は3月16日に発生した福島県沖地震の影響により、東北地方に所在する一部モールを臨時休業した。その一方で、新型コロナウイルスの影響については、9月以降、新規感染者数が減少したことを受けて、9月16日から27日まで「イオンモールのSDGsフェス」を開催、テレビCMでプロモーションを展開するなど、集客強化に向けた営業施策を積極的に推進した。また、10月には政府による消費喚起策として「全国旅行支援」がスタート、人流の活発化に伴い創出された需要を取り込む販促施策により売上拡大を図った。その結果、上記の通り増収増益となった。
一方、海外事業のセグメントは、(1)中国の営業収益が前年同期に比べて28.2%増加の402億9,500万円、営業利益は同7.9%増の56億6,300万円。(2)ベトナムの営業収益は前年同期比65.3%増の93億9,800万円、営業利益は同61.9%増の22億8,800万円。(3)カンボジアの営業収益は前年同期比91.9%増の39億6,800万円、営業利益は同151.5%増の9億7,500万円。(4)インドネシアの営業収益は前年同期比71.6%増の43億3,800万円、営業損益は7億5,600万円の損失(前年同期は6億1,800万円の損失)となった。
上記の通り、海外事業では中国やベトナム、カンボジアが増収増益となり、業績全体に寄与することとなった。
イオンモール、消費者の新たな体験価値の創出へ
イオンモールは2022年12月以降の展開について、日本においては新型コロナウイルス「第8波」の拡大により新規感染者数が増加傾向にあるものの、ウィズコロナへの移行に伴い、今後も消費者の消費行動は活発化することが見込まれるとしている。従来までのイベント実施による集客策だけに留まらず、気軽に来店して長時間過ごしたくなるような快適なモール環境を提供するなど、消費者の新たな体験価値を創出することで、集客回復および売上拡大を図る方針である。
また、中国については2022年12月7日以降、全土においてゼロコロナ政策が緩和されたものの、新規感染者数が増加していることや、医療資源の不足等の影響から、当面は集客・売上への影響が続く見通しを示している。ただし、今後ウィズコロナへの移行に伴い経済活動が正常化に向かい、レジャーや旅行等、ペントアップデマンドに伴う消費行動の活発化も見込まれる。このため、感染防止対策を徹底したモール館内の環境改善やオペレーション体制による管理・運営を継続しながら、景気回復に向けて高まる需要を取り込むべく営業施策を展開する方針である。
ベトナムは、2022年10月以降も消費トレンドは強い基調で推移しており、既存モール専門店売上は10月度が前期比112.6%増、11月度が同71.0%増と伸長した。一方、カンボジアとインドネシアは、第3四半期においてシネマやアミューズメント等の一部業種の休業や営業時間短縮等の営業規制が実施された影響があったものの、その後はいずれも改善傾向にあるとしている。
引き続き、イオンモールの業績・株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)