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エッセイ:2030年、薬で歯を生やす時代へ? 京大発スタートアップベンチャーの挑戦

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(画像= Canva、La Caprese)

「8020運動」をご存知だろうか? 厚生労働省と日本歯科医師会が、1989年に「80歳で20本以上の歯を残す」ことを目標にスタートした歯科運動である。20本以上の歯があれば、食生活がほぼ満足できるとされていることに着目し、食べる楽しみを一生涯失わないようにとの願いを込めて始まった。

1989年の日本人の平均寿命は男性で75.91歳、女性が81.77歳であった。女性の平均寿命が80歳を超えたのは1984年のことで、同年の厚生白書に「人生80年時代」という言葉が初めて記載された。同白書では「人生80年型社会保障の構築」(第1章第1節)、「人生80年時代の健康問題」(第2章第1節)、「人生80年時代と福祉施策」(第3章第1節)など、来るべき長寿社会で想定される様々な問題点が報告されていた。そうした時代を見据え「8020運動」は始まった。

ちなみに、1989年の80歳の残存歯数は平均で4~5本で、20本以上自分の歯を保っていた人は約7%であった。あれから33年――厚生労働省が2023年6月に公表した『歯科疾患実態調査』によると、「8020」の達成率は51.6%で、80歳の2人に1人が20本以上の歯を保っている。

「8020運動」は、この30年あまりで大きな成果をあげていると言っても差し支えないだろう。

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人生100年――歯は薬で生やす時代を迎える?

とはいえ、いまや「人生100年時代」である。できれば100歳で20本以上の歯を残す「10020」を達成したいところであるが、すでに現時点で2人に1人が「8020」を達成できていない。20年後、100歳を迎えて20本以上の歯を残している人がどれほどいるだろうか?

大人の歯(永久歯)は、一度失えば二度と生えることはない。歯を失っても食べる楽しみを失わないためには、義歯やインプラント(人工歯根)を使うしかないのが現状である。

だが、近い将来、そんな「常識」が覆されるかもしれない。世界初の「歯が生える薬(歯生え薬)」の実用化に向けた研究が進められているのだ。

京大発スタートアップベンチャーの挑戦

京都大大学院医学研究科の研究者たちが2020年に立ち上げたスタートアップベンチャーのトレジェムバイオファーマ(本社:京都市上京区)は、ヒトの永久歯が先天的に欠如する原因として、骨形成たんぱく質であるBMPやWntの働きを「USAG-1」と呼ばれる分子が阻害していることを突き止め、この働きを止める抗体を開発した。この抗体は、先天的に永久歯の数が少ない人(先天性無歯症)や永久歯が抜けた後でも存在する「歯の芽」に働きかけ、歯を生やす効果が期待できるという。

すでに先行研究でマウスや犬などで効果を確認しており、2024年7月には先天性無歯症の人を対象に「歯を生やす」ことを目指した治験を開始、2030年には世界初の「歯生え薬」の実用化を目標としている。

現状では、歯を失っても食べる楽しみを失わないためには、義歯やインプラントを使うしかない。しかし、2030年にはその常識が覆され、「10020」も現実味を帯びてくる可能性がある。

引き続き、京大発スタートアップベンチャーの挑戦を注視しておきたい。■

(La Caprese 編集長 Yukio)

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