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ローズヒップ由来の「ティリロサイド」が脂質異常症を予防する可能性――森下仁丹と近畿大学の研究成果

脂肪燃焼,栄養素
(画像= ゆきのしろくま / 写真AC、La Caprese)

2023年8月30日、森下仁丹(本社:大阪市)は近畿大学薬学総合研究所・同大アンチエイジングセンター(本部:東大阪市)との共同研究を発表した。研究では森下仁丹の独自素材であるローズヒップエキスに含まれる「ティリロサイド」に、高脂血症などの脂質異常症を予防する働きがあることが明らかになった。

「ローズヒップ由来ティリロサイド」(以下、ティリロサイド)は、ローズヒップの種子に含まれるポリフェノールの一種である。森下仁丹は、ティリロサイドの機能性にいち早く着目して研究を進め、これまでにティリロサイドがマウスの体重増加を抑制することや、その作用機序として、ティリロサイドが肝臓や筋肉での脂質代謝機能を高めることを明らかにしてきた(※1、※2)。また、ティリロサイドを配合した食品を12週間摂取させるヒト臨床試験では、腹部脂肪面積や体重が減少することも確認している(※3)。

前述の通り、今回発表された研究成果では、新たに「ティリロサイド」に、高脂血症などの脂質異常症を予防する働きがあることが明らかになった。森下仁丹は、引き続き近畿大学との共同研究を進め「ティリロサイド」の多彩な機能性を明らかにし、消費者の健康維持に役立つ商品の研究開発を推進する方針である。

なお、本研究成果は、2023年9月9日~10日に東北医科薬科大学で開催された「日本生薬学会 第69回年会」にて発表された。

本研究の概要は以下の通りである。

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ティリロサイドが「脂質異常症」を予防する可能性

森下仁丹と近畿大学薬学総合研究所・同大アンチエイジングセンターの共同研究では、ティリロサイドの脂質代謝機能を高める作用のメカニズムについて、主に細胞や動物を用いた実験での検証を進めてきた。今回は、その一環として、ティリロサイドがコレステロールの代謝にどのような影響を及ぼすかについて検討を行った。

 動脈硬化などのリスク増大をもたらす「脂質異常症」

コレステロールは生命にとって重要な脂質の一つであり、身体を構成する細胞を包む細胞膜や各種ホルモン、ビタミンDなどの原料になることから、生体内での代謝は厳密にコントロールされている。

ちなみに、コレステロールは、❶食品を摂取することによる外因性のものと、❷肝臓で合成される内因性のものに大別されるが、肝臓で合成されたコレステロールは、中性脂肪やapoBというタンパク質と一緒に、ミクロソームトリグリセリド転送タンパク(MTP)の働きにより超低密度リポタンパク質(VLDL)を形成して肝臓から血中へ分泌される。血中VLDLは、リポプロテインリパーゼ(LPL)や肝性リパーゼ(HTGL)などの酵素によって分解されて低密度リポタンパク質(LDL)となり、末梢組織にコレステロールや中性脂肪を運搬している。(図1)

しかし、肥満や生活習慣の変化によりそのコントロールが乱れると、脂質異常症になり動脈硬化などのリスクが増大することが知られている。

肝臓を中心とした脂質輸送系
脂肪燃焼,栄養素
(図1) 出典:森下仁丹

そこで本研究では、中性脂肪の代謝を高める作用のあるティリロサイドが、コレステロールの代謝にどのように影響するのかについて検討を行った。

生体内でも肝臓からのVLDLの分泌を抑制を示唆

ヒトの肝臓由来の細胞であるHepG2細胞をコレステロールに変換される物質を含む培養液で培養すると、細胞内でコレステロールの合成が進み、培養液中のコレステロール含量が増加する。ここにティリロサイドを添加しておくと、ティリロサイドの濃度が上がるにつれて培養液中のコレステロール濃度が低下することが確認された(図2a)。

さらに、コレステロールや中性脂肪とともにVLDLが合成されるときに必要なタンパク質apoBの培養液中の濃度も測定したところ、ティリロサイド濃度に依存してapoB濃度が低下していることが判明した(図2b)。これらの結果から、ティリロサイドには肝臓からのVLDL分泌を低下させる働きがあると考えられたため、マウスを使った検討を実施した。

ティリロサイドのVLDL分泌抑制作用
脂肪燃焼,栄養素
(図2)出典:森下仁丹

先述のとおり、肝臓から分泌されたVLDLは血液中でLPLなどの酵素で分解されるため、LPLの働きを止めた状態で血液中のVLDL濃度変化を測定すれば、肝臓からのVLDL分泌量を評価できる。VLDLはコレステロールの他に中性脂肪も多く含んでいるため、血液中の中性脂肪濃度をVLDL濃度の指標とした。

あらかじめティリロサイドを投与したマウスにLPLの働きを止める物質を投与し、その後の血液中の中性脂肪濃度の変化を測定したところ、ティリロサイドを投与したマウスでは、コントロール群に比べて血中中性脂肪濃度の増加が抑えられていた(図2c)。つまり、細胞での実験と同様に、ティリロサイドは生体内でも肝臓からのVLDLの分泌を抑制したと考えられる。

消費者の健康維持に役立つ商品の研究開発に注力

本研究では、ローズヒップ由来ティリロサイドは肝臓からのVLDL分泌を抑制することで、脂質異常症の予防に寄与する可能性があることが明らかになった。森下仁丹は引き続き近畿大学との共同研究を進め、ティリロサイドの多彩な機能性を明らかにし、消費者の健康維持に役立つ商品の研究開発に努める方針である。

森下仁丹のさらなる研究成果を期待したい。■

参考文献

(※1) Ninomiya K, et al. : Bioorg. Med. Chem. Lett., 17: 3059–3064, 2007.
(※2) Goto T, et al. : J. Nutr. Biochem., 23: 768–776, 2012.
(※3) Nagatomo A, et al. : Diabetes Metab. Syndr. Obes., 8: 147–156, 2015.

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