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肌のシミ形成には「細胞分裂の方向」が関与していた!――コーセーの研究成果

シミ,原因,スキンケア
(画像= Canva、La Caprese)

「肌のシミ形成に細胞分裂の方向が関与していることを発見」。――大手化粧品メーカーのコーセーから、そんな研究成果が公表されたのは2022年10月11日のことだった。

コーセーの研究チームは、人間の肌のシミ部位では健常部位に比べて「横方向の細胞分裂」が過剰に生じており、それがメラニンを含んだ未分化(※1)な表皮細胞の重層化、ひいてはシミの一因になっていることを突き止めた。さらに、コーセーが開発した美容成分「ナツシロギクエキス」には、この未分化な状態を改善する分化促進効果やメラニン産生抑制効果があり、シミへの有効性が期待できることが判明した。

今回はコーセーの研究成果を紹介しよう。

用語解説

(※1) 特定の役割をもつ細胞(角層細胞など)に変化する前の増殖能力を持つ細胞

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シミ部位では、横方向への細胞分裂がメラニンを過剰に含む未分化細胞の重層化を誘発

シミは多くの人が抱える「肌悩み」の一つである。コーセーは、多年にわたりシミ部位の可視化やそれに基づくシミ形成メカニズムの解明についての基礎研究を重ね、そこにアプローチする成分の開発などを通して「肌悩み」の解消に挑んできた。

今回の研究は、シミ部位での表皮細胞の分裂や分化(役割をもつ細胞として成熟していくこと)に着目した。シミのない健常部位では、表皮細胞は縦方向や横方向に分裂して生まれたあと、徐々に分化しながら肌の外側に向かって押し上げられ、角層などの役割をもった皮膚組織になる。一方、シミ部位については「未分化細胞が健常部位よりも多く観察される」という報告は過去にあったものの、その詳細は十分に解明されていないのが実情であった。そこで、本研究ではこの表皮細胞の分裂と分化を対象に、シミ形成のメカニズムの解明に取り組んだ。

実際に健常部位およびシミ部位のヒト皮膚を用いて、表皮細胞の分裂について検証をしたところ、シミ部位では健常部位に比べて、横方向の分裂の割合が増加していることが判明した(図1左)。また、未分化細胞とメラニンの分布について確認したところ、シミ部位ではメラニンを過剰に蓄積した未分化細胞の割合が多く、基底膜(表皮の底部にある膜状構造)の上に重層化していることが確認できた(図1右)。

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(図1)シミ部位における表皮細胞の分裂挙動とメラニンを過剰にもった未分化細胞の分布
 出典:コーセー

このことから、シミ部位での未分化細胞の重層化と横方向の分裂の増加には関連性があることが見出された。シミ部位では、メラニンを過剰に含んだ未分化細胞が重層化し分化が滞ることで、ターンオーバーが乱れ、シミの一因になると考えられる。

シミへの有効性が期待できる「ナツシロギクエキス」

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(画像)ナツシロギク 出典:コーセー

さらに、コーセーは同社が開発した美容成分「ナツシロギクエキス」に、前述の未分化な状態を改善する分化促進効果やメラニン産生抑制効果があり、シミへの有効性が期待できることを見出している。

ナツシロギクは南東ヨーロッパを原産とするキク科ヨモギ属の多年草であり、このエキスには抗炎症作用や抗酸化作用があることが知られている。コーセーは、これらの様々な作用に着目し、「ナツシロギクエキス」を開発した。

「ナツシロギクエキス」の有効性を探索したところ、分化した表皮細胞でつくられるタンパク質であるケラチン10の遺伝子発現量の増加を確認した(図2左)。このことから、「ナツシロギクエキス」には表皮細胞の分化促進効果があり、先述のシミ部位で重層化している未分化細胞を減少できる可能性が見出された。

また、「ナツシロギクエキス」はメラニン産生細胞に対するメラニン産生抑制効果も有することが判明した(図2右)。このことから、ナツシロギクエキスはメラニンをもった未分化細胞の重層化の解消とメラニン産生抑制の両面からシミに対する有効性が期待できる。

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(図2)ナツシロギクエキスの分化促進効果とメラニン産生抑制効果 出典:コーセー

コーセーは本研究で得られた知見を今後のスキンケア商品の開発に応用する考えを明らかにしている。また、シミ形成メカニズムの解明や有用な成分の開発を継続し、消費者の「肌悩み」に根拠をもって応えることのできる化粧品の提供に繋げる方針だ。■

(La Caprese 編集部)

特集:美肌を科学する
美肌,科学的根拠
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