2023年6月22日、ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業(本社:神奈川県横浜市)は、皮膚老化の原因に関する研究を進め、❶複数種の細胞において「GDF11」の減少が、皮膚老化に結び付くさまざまな変化を引き起こすこと、❷植物エキスのGDF11発現促進作用……を発見したと発表した。
「GDF11(Growth Differentiation Factor 11)」は成長分化因子の一種で、皮膚老化の改善につながる作用が知られていることから、美容医療でも用いられているほか、加齢による心肥大を改善する作用や、神経細胞を再生し機能を回復させる作用なども報告されている。ポーラ化成工業では、さまざまな皮膚細胞において若返りにつながる作用が知られている「GDF11」に関する研究を進め、上記❶❷を発見した。
なお、本知見の一部は、2023年3月25~28日に開催された日本薬学会第143年会にて発表された。今回はポーラ化成工業の研究成果を紹介したい。
ポーラ化成工業、皮膚老化の原因に関する研究
皮膚が老化すると、乾燥、シワ、たるみ、シミなどの年齢サインが現れる。従来の研究ではこれらの現象一つ一つに対して個別に要因を探ることが主流であった。しかし、実際はこれらの現象は並行して起こることが多い。そこでポーラ化成工業は、さまざまな皮膚細胞において若返りにつながる作用が知られている「GDF11」に着目した。GDF11は加齢によって減少することが知られているが、実際に減少した場合の皮膚への影響は解明されていなかった。そこで複数種の皮膚細胞においてGDF11減少の影響を明らかにすることで、さまざまな皮膚老化を引き起こしている可能性を検証した。
GDF11の減少が皮膚老化を引き起こしていた
(図1) 出典:ポーラ化成工業
皮膚を構成する主な細胞3種(表皮細胞、メラノサイト、線維芽細胞)にて、それぞれGDF11遺伝子の発現量を人為的に減らしたところ、保湿やハリに関わる遺伝子の発現が低下し、一方で、ハリの低下をもたらす遺伝子の発現やシミのもととなるメラニン色素の産生量が増えることが判明した(図1、補足資料2, 3, 4)。これにより、GDF11の減少はさまざまな皮膚老化の引き金となることが示唆された。
GDF11の発現を増やすエキスを発見
上記研究結果により、各細胞においてGDF11発現量を増やすことができれば、複数の皮膚老化の予防につながると考えられた。そこで皮膚を構成する細胞3種(表皮細胞、メラノサイト、線維芽細胞)にさまざまなエキスを添加し、GDF11の発現量を増加させるものを探索した。その結果、ハスカップエキスおよびローズヒップエキスにその作用があることを発見した(図2)。
(図2) 出典:ポーラ化成工業