厚生労働省が発表した『日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究』(2015年3月、厚生労働科学特別研究事業)によると、2025年に日本の65歳以上の高齢者人口は3,600万人以上に達し、そのうち19.0%が認知症を発症すると推計している。いわゆる、高齢者の5人に1人が認知症になるとされる「2025年問題(認知症共生社会)」である。
認知症の発症予防や治療、介護サービス等の拡充はもちろんのこと、認知症を患っている本人や家族を中心とした情報の発信や社会参加の支援など「2025年問題」を見据えたさまざまな課題が山積している。そうした状況下で気になるのが、2023年4月10日に帝国データバンク(本社:東京都港区)が公表した2022年度の「後継者難倒産」に関する調査報告だ。
代表者が70歳代の企業の「後継者不在率」は約3割
「後継者難倒産」とは、法的整理(倒産)となった企業のうち、後継者不在のために事業継続の見込みが立たなくなったことに起因する倒産のこと。結果は(図1)に示す通りで、2022年度の「後継者難倒産」は前年度を2.3%上回る487件発生し、過去最多を更新した。月次ベースでも2022年10月に過去最多の56件を記録するなど、倒産発生ペースは年間を通じて高止まりで推移している。
(図1)出典:帝国データバンク
特にコロナ禍以降は「代表者の病気・死亡」が直接の原因となった後継者難倒産のケースが目立った。2022年度の倒産487件のうち、代表者の病気または死亡により、事業が立ち行かなくなり倒産に至ったケースは233件で、全体の47.8%を占めた。業績にかかわらず、代表者が活動できなくなるといった「不測の事態」に対応しきれず倒産となった企業が増加している。
後継者難倒産を業種別にみると、2022年度は「建設業」が119件と2年連続で最多となり、全体の24.4%を占めた。次いで小売業(89件)、製造業(87件)、サービス業(80件)、卸売業(73件)と続き、上位5業種で全体の92%を占めた(図2)。また、負債規模別にみると、負債「5,000万円未満」が約半数を占めたほか、負債5億円未満が全体の96.3%を占めるなど、小規模零細規模の倒産が目立った。
(図2)出典:帝国データバンク
ちなみに、中小企業庁は、事業承継の準備には一般的に約5~10年ほどかかるので、早めの準備・計画的な取組が肝要としている。しかし、帝国データバンクによると、すでに「代表者が70歳代の(企業の)後継者不在率は約3割に達する」としており、代表者の病気・死亡等により後継者育成に支障をきたしたり、後継者がいたとしても業績改善が見込めず事業継続を断念するといったリスクが指摘される。高齢者の5人に1人が認知症になるとされる「2025年問題(認知症共生社会)」が目前に迫る中、当事者はもちろんのこと、社会全体として「後継者不在問題」とどう向き合うかが問われている。■
(La Caprese 編集長 Yukio)