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血清尿酸値が高い2型糖尿病患者における大麦摂取は食生活を変化させ、血清尿酸値を改善する――株式会社はくばく、那珂記念クリニック、山梨大学の研究成果

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(画像= La Caprese)

低穀物摂取の2型糖尿病患者における大麦摂取は食事の栄養バランスを改善させ、血中尿酸値を改善する。――2022年11月22日、株式会社はくばく(本社:山梨県中央市)と、医療法人健清会那珂記念クリニック(所在地:茨城県那珂市)および山梨大学生命環境科学部地域食物科学科(所在地:山梨県甲府市)との共同研究により、そのような成果が明らかになった。

本研究では、血中尿酸値の高い糖尿病患者において、大麦の摂取による尿酸値低下が認められた。さらにこの効果は高大麦群において顕著であったことから、1回の食事で大麦を多く摂取するよりも、摂取する回数を多くするほうがより大きな効果が期待できると考えられる、という。

なお、本研究は科学雑誌『診療と新薬』(診療と新薬2022, 59, 8, 435-443)に掲載された。
今回は株式会社はくばくと、那珂記念クリニック、山梨大学の研究成果を紹介しよう。

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大麦摂取を含む食事指導が尿酸値にどのような影響を与えるか?

2型糖尿病患者は高尿酸血症を併発しやすいことが知られている。そのため、2型糖尿病患者の治療には高尿酸血症の予防が求められている。

一般的に尿酸値を下げる食事には、たんぱく質摂取量の低下と低プリン体食品の摂取が挙げられるが、近年、最も有効なのは食事のグリセミック指数(※1)を下げ、炭水化物の割合を増やすことであるとの報告もある。大麦は水溶性食物繊維であるβ-グルカン(※2)を多く含む低グリセミック指数の食品であり、糖尿病患者における尿酸値の低下に有益である可能性も指摘される。

そこで本研究では、穀物摂取量が低く、かつ尿酸値が高い2型糖尿病患者において、大麦摂取を含む食事指導が尿酸値にどのような影響を与えるかを検討するため、後ろ向きコホート(※3)を実施した。

具体的には、2021年9月~2022年3月までに那珂記念クリニックを受診した2型糖尿病患者のうち、血清尿酸値が7mg/dL以上であった患者を対象に食物摂取頻度調査を実施した。その調査の結果から、穀物摂取エネルギー比率が50%未満であった17名の患者に大麦摂取を含めた食事指導をし、約3カ月間にわたり大麦を摂取していただいた。その後、再度食事摂取頻度調査を実施し、大麦摂取が尿酸値および食生活にどのような変化を与えたかを検討した。

用語解説

※1 グリセミック指数:食品に含まれる糖質の吸収度合いを示す値。この値が高い食材を食べると食後の血糖値が急上昇し、低い食材を食べると緩やかに上昇する。
※2 β-グルカン:水溶性食物繊維。水に溶けてゲル状になる食物繊維。食後血糖値の上昇抑制効果や腸内環境を整える機能を持つ。
※3 後ろ向きコホート:特定の条件を満たした集団を対象にして診療記録などから過去の出来事に関する調査を行う研究手法。

大麦摂取は食事の栄養バランスを改善させ、血中尿酸値を改善する

研究参加者の特徴

ちなみに、本試験の参加者(17名)のうち76.5%が男性である。また、参加者集団はHbA1cが比較的良好にコントロールされており(平均6.6%)、その一方でBMIは高値を示してした(平均27.8 kg/m2)。参加者は平均1.8種類の糖尿病治療薬を服薬しており、内訳はメトホルミンが最も多く、以下α-グルコシダーゼ阻害薬、GLP-1 受容体作動薬などが含まれていた。

なお、参加者を大麦の摂取回数が多い群と少ない群で分けたところ、1日あたりの大麦摂取回数は低大麦群で平均1.1回(8名)、高大麦群で平均2.2回(9名)であった。この2群の患者背景に大きな違いはみられなかった。

低穀物摂取の2型糖尿病患者における大麦摂取後は、血中尿酸値が改善

大麦摂取直前と比較して、3カ月間の大麦摂取後、血中尿酸値は有意な低下を示した。また、血中尿酸値の低下は高大麦群で顕著であり、低大麦群でも低下したものの有意差はみられなかった(図1)。一方でHbA1c、BMIおよび中性脂肪は、大麦摂取前後で有意な変化はみられなかった。

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図1.大麦摂取による血清尿酸値の変化(出典: 診療と新薬2022, 59, 8, 435-443より引用して研究チームが作図)

低穀物摂取の2型糖尿病患者における大麦摂取は、食事の栄養バランスが改善

大麦摂取の前後で、総エネルギー摂取量に変化はみられなかったが、たんぱく質および脂質摂取量は減少傾向に、炭水化物摂取量は増加傾向にあった。それが大麦摂取後では炭水化物エネルギー比率が有意に増加し、一方で脂質エネルギー比率は有意に減少した。なお、たんぱく質エネルギー比率に変化はみられなかった(図2)。

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図2. 大麦摂取による三大栄養素のエネルギー比率の変化(出典: 診療と新薬2022, 59, 8, 435-443より引用して研究チームが作図)

次に、主な栄養素である穀類、動物性たんぱく質、飽和脂肪酸のエネルギー比率の変化を確認した。その結果、大麦摂取後に穀物エネルギー比率は有意に増加し、動物性たんぱく質と飽和脂肪酸のエネルギー比率は有意に低下したことが明らかになった。さらにこれらの変化は高大麦群で顕著に表れていた(図3)。

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図3. 大麦摂取による主な栄養素のエネルギー比率の変化(出典: 診療と新薬2022, 59, 8, 435-443より引用して研究チームが作図)

大麦の摂取による尿酸値低下を確認

今回の株式会社はくばくと、那珂記念クリニック、山梨大学の共同研究では、血中尿酸値の高い糖尿病患者において、大麦の摂取による尿酸値低下を認めることができた。さらにこの効果は高大麦群において顕著であったことから、1回の食事で大麦を多く摂取するよりも、摂取する回数を多くするほうがより大きな効果が期待できると考えられる。さらに大麦を摂取する回数が増加することは、和食の機会を増やすことにもつながる可能性がある、という。

株式会社はくばくは、本研究で得られた結果について、大麦による低グリミセミック指数な食事の効果だけでなく、栄養バランスの取れた食事に移行したことによる効果もあると考えられる、としている。

引き続き、株式会社はくばくの研究に注目していきたい。■

(La Caprese 編集部)

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