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人生100年時代、「フレイル」を予防するために必要なこと――ファンケルと弘前大学の研究成果

フレイル,予防
(画像= Canva、La Caprese)

「フレイル(※1)に関与する自律神経機能(※2)と生活習慣病関連因子(※3)ならびに腸内細菌叢(※4)の関係を発見」――2022年12月21日、化粧品・健康食品の製造・販売を行うファンケル <4921> と弘前大学(所在:青森県弘前市)の研究グループは、そのような研究成果を発表した。

「人生100年時代」と呼ばれる昨今、年齢を重ねても元気に充実した生活を送り続けられる心と体づくりが一層望まれている。そうした中で、近年注目されているのが「フレイル」である。フレイルは加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され心身の脆弱性が出現した状態のことで、「健康な状態」と「要介護状態」の中間の段階ともいわれている。しかしながら、フレイルは、適切な介入や支援を行うことで、生活機能の維持向上を可能とし、予防することができるとも考えられており、企業や大学などによる研究や調査も進められている。このたび発表されたファンケルと弘前大学の研究グループの研究成果もその一つだ。

本研究では、弘前大学が実施する「岩木健康増進プロジェクト(※5)健診」で得られた健康ビッグデータを活用し、フレイルに関与する自律神経機能やQOL(Quality of Life=生活の質)の向上に関する因子を調査した。その結果、自律神経機能の一つである心拍変動(※6)が加齢や肥満に伴って低下するとともに、生活習慣病関連因子や腸内細菌叢に関係していることを発見した。さらに、生活習慣病関連因子の一つである糖化マーカー(※7)が、QOLに関連していることも発見した。

今回はファンケルと弘前大学の研究グループによる研究成果を紹介したい。

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フレイルの予防は「生活習慣病対策」や「腸内細菌叢の改善」「抗糖化」が重要

本研究は、「岩木健康増進プロジェクト健診(2019年度実施)」で、自律神経機能を測定した987人を対象に、自律神経機能に関連する因子を多変量解析(※8)で調査した。

その結果、自律神経機能の一つの因子である心拍変動は、生活習慣病関連因子の加齢や肥満指数に加え(図1)、血圧、血糖値、中性脂肪、腎機能、糖化マーカーに関係し、これらの数値が高い人ほど、自律神経機能が低くなることを確認した(表1)。

また、同様に心拍変動と腸内細菌叢の測定者950人を多変量解析で調査した結果、腸内細菌の多様性(※9)が高く、腸内細菌叢中の酪酸産生菌(※10)が多いと、心拍変動が高いことも確認した(表2)。さらにQOLスコアを調査した1,053人を対象に、QOLに関連する因子を多変量解析すると、生活習慣病関連因子である糖化マーカーが高いと、QOLのスコアが低くなることも確認した(表3)。

フレイル,予防
フレイル,予防

上記の結果から、フレイルの予防に関連する自律神経機能の維持や向上のためには、「生活習慣病対策」や「腸内細菌叢の改善」が重要であることを発見した。また、生活習慣病対策における「抗糖化」は、QOLの維持や向上にも重要であることが判明した。

注釈

*回帰係数 : 回帰直線の傾きで表され、各データにおける単位変化量あたりの関連性を示す係数。プラスの場合は正の相関、マイナスの場合は負の相関を示す。
*p値: 仮説を検証する際に用いる確率。一般的に5%未満の確率(p値<0.05)の場合は有意性が認められる。

人生100年時代、フレイルの予防を目指して

冒頭で述べた通り、フレイルは適切な介入や支援を行うことで、生活機能の維持向上を可能とし、予防することができると考えられている。今回紹介したファンケルと弘前大学の研究では、「岩木健康増進プロジェクト」の健康ビッグデータを活用し、フレイルに関連していると考えられる自律神経機能やQOLの関連因子を解明することに成功した。

ファンケルと弘前大学の研究グループは、今後、さらに「抗糖化」などの生活習慣病予防や腸内細菌叢の改善に着目して、自律神経機能低下の予防やQOLの維持に貢献する研究を継続する方針である。ファンケルと弘前大学のさらなる研究成果が期待されるところである。■

(La Caprese 編集部)

【用語説明】

※1 フレイル:加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され心身の脆弱性が出現した状態。
※2 自律神経機能:心拍変動解析から算出され、心臓自律神経における交感神経機能と副交感神経機能を示す。
※3 生活習慣病関連因子:食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる疾患(高血圧、高脂血症、糖尿病など)に関連する因子。
※4 腸内細菌叢:糞便から採取された細菌のDNAから検出された約300種類の細菌群。
※5 岩木健康増進プロジェクト:弘前大学が青森県弘前市岩木地区で 2005 年から実施している健康調査で、約2,000項目という世界に例のない膨大な検査項目を設けることで、健康ビッグデータを記録している。
※6 心拍変動:心拍におけるR-R間隔のばらつき(変動)から算出され、自律神経機能(交感神経と副交感神経の両機能)の総活動を反映しており、心拍変動が低いことは自律神経機能が低いことを示す。
※7 糖化マーカー:終末糖化産物の一種である血漿ペントシジン濃度。
※8 多変量解析:年齢、性別、BMIなどを調整した解析で、年齢、性別、BMIなどの影響を取り除いても関連があることを示す。
※9 腸内細菌の多様性:シンプソン指数またはシャノン指数により算出され、腸内細菌の種類が豊富かつ均一であることが、腸内細菌の多様性が高い状態を示す。
※10 酪酸産生菌:抗炎症、抗肥満作用があると考えられている酪酸を産生する腸内細菌群。

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