ブルーライトは可視光線の中でも散乱率が高く、エネルギーの高い光線で、太陽光はもちろんのこと、LEDをバックライトにしたパソコンやスマートフォンなどのディスプレイからも発生している。近年、こうしたディスプレイを長時間見続けるライフスタイルが広く社会に浸透しているが、一方で人体へのさまざまな影響も指摘されている。
注目されるのは2022年11月18日、第一三共ヘルスケア(本社:東京都中央区)が同日開催された『第5回 日本フォトダーマトロジー学会学術大会』にて、ブルーライト照射による肌の「光老化促進」と、それに対するトラネキサム酸の抑制作用についての研究成果を発表したことだ。
第一三共ヘルスケアは研究成果として、(1)ブルーライトにより、肌の表皮角化細胞から免疫細胞の一種である好中球を誘導する「炎症性因子(IL-8)」が産生されることを見出したほか、炎症反応を引き起こし好中球の「細胞死(ネトーシス)」を誘発することも発見、(2)また、ブルーライトが、シミの原因となる「メラニン産生促進因子(α-MSH)」の増加と、肌に弾力や潤いを与える「コラーゲン量の低下」を引き起こすことを発見し、肌の光老化促進の一因となることを突き止めた、(3)さらに、これらブルーライトによる光老化促進の一因である「炎症性因子(IL-8)の産生」「細胞死(ネトーシス)」「メラニン産生促進因子(α-MSH)の増加」「コラーゲン量の低下」をトラネキサム酸が抑制することを見出したことを明らかにしている。
今回は、第一三共ヘルスケアの研究成果を紹介しよう。
ブルーライトによる肌への影響について評価
肌の光老化の予防にはサンスクリーン剤を主とした紫外線防御が重要であるといわれている。特に紫外線の中でも「UV-B」よりも波長の長い「UV-A」は、肌の真皮層まで到達し慢性傷害を引き起こすことで光老化を誘発することが知られている。そこで第一三共ヘルスケアは「UV-A」よりもさらに波長の長いブルーライトに着目し、一般的なサンスクリーン剤では防御しきれないブルーライトによる肌への影響について評価した。
ブルーライトが「細胞死(ネトーシス)」「シワ形成」「シミ形成」を引き起こす
本研究では、ヒトの肌におけるブルーライトの影響を調べ、そのダメージを抑制する成分を探索するために、ヒト皮膚細胞および、細菌侵入時等に働く免疫細胞である好中球を用いてブルーライトの作用を検証し、その作用に対するトラネキサム酸の有用性を評価した。
ブルーライトにより表皮に炎症が生じ、好中球の細胞死(ネトーシス)を誘導
まず、ブルーライトをヒト表皮細胞に照射後、トラネキサム酸を添加し24時間後に培養上清の炎症性因子を測定したところ、ブルーライトにより好中球を誘導する炎症性因子(IL-8)の産生が増加することと、トラネキサム酸による抑制作用を確認した【図1】。
また、好中球にトラネキサム酸を添加し、ブルーライト照射後の細胞死(ネトーシス)の発生率を経時で測定したところ、ブルーライトの照射により好中球の細胞死(ネトーシス)が生じた一方、トラネキサム酸により細胞死(ネトーシス)の発生が抑制されたことを確認した【図2】。
ブルーライトは、肌のコラーゲン量減少やメラニン産生促進因子の増加による光老化を引き起こす
続いて、ブルーライトをコラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸といった真皮の成分を作り出すヒト真皮線維芽細胞に照射後、トラネキサム酸を添加し24時間後にコラーゲンの発現量を測定したところ、ブルーライト照射によりコラーゲン量が減少し、トラネキサム酸がコラーゲン量を増加させることを確認した。この結果から、ブルーライトは皮膚の「シワ形成」を促進する可能性があり、トラネキサム酸がそれらの作用を抑制することが示唆された【図3】。
また、ブルーライトをヒト表皮細胞に照射後、トラネキサム酸を添加し24時間後にメラニン産生促進因子(α-MSH)の発現量を測定したところ、ブルーライト照射によりメラニン産生促進因子(α-MSH)が増加し、トラネキサム酸がメラニン産生促進因子(α-MSH)の発現増加を抑制した。ブルーライトは皮膚の「シミ形成」を促進する可能性があり、トラネキサム酸がその作用を抑制することが示唆された【図4】。
第一三共ヘルスケア、「より健やかな肌を実現する」ために
本研究では、肌の光老化には従来指摘されていた紫外線のみならず、ブルーライトもその一因となることが明らかとなった。また、ブルーライトは照射された皮膚の表皮角化細胞・真皮線維芽細胞だけでなく、全身に存在する好中球にまでも作用して「光老化」を促進することを見出し、さらに、トラネキサム酸がそのいずれにも抑制作用を有することが確認された。
引き続き、第一三共ヘルスケアの「より健やかな肌を実現する」ための研究および製品開発に期待したい。■
(La Caprese 編集部)