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エッセイ:年末の危険な誘惑

大掃除,スケジュール,12月
(画像= Canva、La Caprese)

年末恒例の大掃除で、書庫の本棚を整理していると一冊の懐かしい本と「再会」した。その部屋は、もともと書斎として使っていたのだが、歳月を経るなかで本がどんどん積み上がってしまい、書庫になった。

さて、その本のタイトルは『ヘミングウェイ小説の構図』(西尾巌/著、研究社出版)である。いまから30年前、1992年に発行された本である。著者の西尾巌(にしお・いわお)さんは、マサチューセッツ大学やケネディ図書館などでヘミングウェイ研究に従事した経歴を有する専門家であり、本書では文豪アーネスト・ヘミングウェイの作品の数々の「技法の軌跡」について考察している。

当時の筆者は経済誌の副編集長に就いたばかりであった。ヘミングウェイを崇拝する筆者は、その技法を学び、編集スキルを磨きたいと考えていた。まだインターネットも普及していない時代であり、週に1、2回は神田神保町の古書店街を散策して、ヘミングウェイに関する研究本を探索するのが習慣だった。そんな筆者にとって、『ヘミングウェイ小説の構図』との出会いは運命的なものであった。

懐かしい思いがこみあげてくる。――気がつくと「大掃除」を忘れて、本書を読むのに夢中になっていた。

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年末の書庫は「危険な誘惑」で一杯

筆者は年末の大掃除はできるだけ早めにするように心がけている。前述の通り、懐かしい本に「再会」すると大掃除を中断することが、経験的にわかっているからだ。特に書庫は「危険な誘惑」で一杯である。何度も何度も中断しながら、牛の歩みのようにゆっくり進んでいくのが、筆者の大掃除のスタイルなのだ。

ちなみに、日本トリム <6788> が2022年12月5日に公表した「年末の大掃除に関するアンケート調査」によると、20代から70代の男女200名(有効回答数)のうち52%が12月下旬(21日~31日)に大掃除をスタートすると回答している(図1)。次いで12月中旬(11日~20日)が18%、12月上旬(12月10日以前)が13%、「大掃除はしない」と回答した人が17%となっている。

また、大掃除をすると回答した人(n=163)に、例年大掃除を終わらせている日について質問したところ、12月30日がもっとも多く、次いで12月31日、12月29日となった。今回の調査では、年末ギリギリに終わらせる人が多いことが判明した。

大掃除,スケジュール,12月
(図1)出典:日本トリム

年末の大掃除は計画的に

また、同調査では「大掃除をする」と回答した人(n=163)に、(大掃除を)しようと思っている場所についても質問している。

結果は、第1位がキッチンだった(図2)。昔もかまどのある台所は煤(すす)が溜まりやすく、「かまど神」という神様が住む場所ということで、念入りに掃除していたようである。21世紀の現在もキッチンを最優先で掃除をしたいと考えている人が多いことが判明した。このほか、風呂や洗面台、トイレなどの水回りも上位にランクインしている。

大掃除,スケジュール,12月
(図2)出典:日本トリム

筆者が意外に感じたのは、書斎(書庫)がランクインしていなかったことだ。近年は電子書籍が普及しているので、紙の本を持つ人は少ないのかもしれない。実際、筆者もここ数年は電子書籍を購入することが多くなった。神田神保町の古書店街にも、めっきり足を運ばなくなった。

キッチンや風呂や洗面台、トイレといった水回りであれば、書斎(書庫)のような「危険な誘惑」はないのかもしれない。しかし、それはそれで少し寂しいような気もする。ともあれ、年末の大掃除は計画的に進めたいものである(自戒の念を込めて)。■

(La Caprese 編集長 Yukio)

連載:編集長エッセイ
朝散歩で一人会議
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