2023年6月23日、ファンケル(本社:神奈川県横浜市)は、「白麹菌(※1)」 に含まれる「14-デヒドロエルゴステロール(以下、14-DHEと表記)」が老化を促進するシグナルを抑制し、アンチエイジングに導くメカニズムを解明したことを明らかにした。
「14-DHE」は、ファンケルと資本業務提携関係にあるキリンホールディングス(本社:東京都中野区)が保有する成分で、これまでにも共同研究成果の一つとして、美肌機能に関わる酵素「アルギナーゼ1(※2)」を増加させること(※3)、白麹菌の抽出物を配合した美容液の連続使用で肌老化兆候が改善すること(※4)を見出してきた。
本研究は、これまで確認してきた「14-DHE」の美肌機能について、さらに詳細なメカニズム解明を進めたものである。結果は前述の通りで、❶「14-DHE」がアルギナーゼ1を増やし、❷糖化ダメージを抑制するとともに、❸老化を促進するシグナルを抑制することでアンチエイジングに導くメカニズムが解明された。
ファンケルは、本研究成果について、「14-DHE」のオールマイティーなアンチエイジング機能を応用し、加齢や乱れた食生活で増加する糖化による老化リスクの低減を目的とした製品開発が期待できる、との見解を示している。
今回はファンケルの研究成果を紹介したい。
ファンケル、白麹菌の成分が「糖化ダメージ」を抑制する機能を確認
「14-DHE」は糖化タンパク質が結合する 「RAGE」を減らし、糖化ダメージを低減
体内のタンパク質と糖が結合した糖化タンパク質「AGE(※5)」は、加齢とともに増加する。この「AGE」が細胞の表面にある糖化タンパク質受容体「RAGE(※6)」に付着することで、細胞の糖化を加速させてダメージを引き起こし、老化を促進させることが知られている。そこで、ファンケルは抗糖化機能のあるアルギナーゼ1を増やす「14-DHE」が「AGE」や「RAGE」にどのような影響があるか確認した。
まず、培養表皮細胞に「14-DHE」を添加して、「RAGE」の発現量を測定した。その結果、「14-DHE」は「RAGE」を減少させることが確認された(図1)。続いて、細胞の糖化ダメージに対する「14-DHE」の効果を確認した。培養表皮細胞に「AGE」と「14-DHE」をそれぞれ添加した結果、「AGE」により細胞内の糖化ダメージは高くなるものの、「14-DHE」を添加することで「AGE」の糖化ダメージを抑制することが確認された(図2)。
(図1)(図2) 出典:ファンケル
「14-DHE」は老化シグナル「pp53(※7)」を減らし、老化を抑制する
ちなみに、酸化や紫外線などのストレスによる細胞の老化は、DNAダメージにより老化促進因子である「老化シグナル」が活性化することで起こることが知られている。また、アルギナーゼ1は老化シグナルの「pp53」を減らすことにより、シミや皮膚炎症・老化を制御することが確認されている。
そこで、本研究では「14-DHE」の老化シグナルへの影響を確認するため、培養表皮細胞に「14-DHE」を添加し、老化シグナル「pp53」の発現量と細胞内エネルギー産生(※8)を測定した。
結果は、「14-DHE」によって老化シグナル「pp53」が低下するとともに(図3)、表皮細胞のエネルギー産生が増加して細胞が活性化していることを確認した(図4)。
(図3)(図4) 出典:ファンケル
以上により、「14-DHE」の美肌機能メカニズムは、美肌に関わる酵素である「アルギナーゼ1」を増やすことで糖化による細胞へのダメージを低下させ、老化促進因子である老化シグナルの「pp53」を減らして細胞を活性化することで、肌の老化を抑制すると考えられる(図5)。
(図5) 出典:ファンケル
老化リスクを低減する製品開発を期待
ファンケルは、本研究成果について、「14-DHE」のオールマイティーなアンチエイジング機能を応用し、加齢や乱れた食生活で増加する糖化による老化リスクの低減を目的とした製品開発が期待できる、との見解を示している。
ファンケルの製品開発が待たれるところである。■
(La Caprese 編集部)