2023年11月30日、マンダム(本社:大阪府大阪市)は「温泉成分として知られるアルムKが、ヒト表皮角化細胞の増殖を促進する」ことを発見したとの研究成果を発表した。本研究は、大阪大学大学院薬学研究科 先端化粧品科学(マンダム)共同研究講座において、東京大学医科学研究所 感染・免疫部門の石井健教授と共同で行われたものである。ちなみに、環境温度が低いと肌状態は悪化することが知られているが、本研究では「アルムKは低温培養条件下で低下したヒト表皮角化細胞の増殖を回復させることも明らかなった」ことも報告されている。
マンダムは本研究成果を、肌の恒常性を維持し、健やかで美しい肌へ導く製品開発に応用する方針である。なお、本研究成果は2023年11月3日〜5日にインドネシア・ジョグジャカルタで開催されたThe 8th ICPAPS 2023 and The 14th Annual Conference of ISCC(※1)において発表した。また、2024年3月28日〜3月30日に開催される第101回日本生理学会においても発表を予定している。
本研究成果の概要は以下の通りである。
肌の本来の力を引き出し「ふっくらとハリ密度が整えられた肌」を目指して
これまでの研究でアルムKは、①細胞の感覚センサーTRP(トリップ)チャネル(※2)の一種で、②ヒト表皮角化細胞に存在するTRPM4を活性化し、③ヒト表皮角化細胞からの炎症シグナルを抑制することや、④アルムKを配合したローションが肌の水分量・ハリ指標などを改善することを見出し、⑤アルムKが肌の炎症抑制や肌状態を改善することが明らかになっている。しかし、それら以外のアルムKの肌内部への作用については未だ不明な点があった。
そこで今回、アルムKが「肌のハリ感や見ためのふっくら感に影響する」ことに着目し、本研究ではアルムKのヒト表皮角化細胞に与える作用を確認した。
アルムKはヒト表皮角化細胞の増殖を促進する
ヒト表皮角化細胞は、増殖と角化の繰り返し(ターンオーバー)によって健全な表皮を形成している。しかしながら、ヒト表皮角化細胞の増殖は、加齢に伴って低下することが知られている。
今回、TRPM4を活性化することによるヒト表皮角化細胞の増殖への影響を調べた。その結果、TRPM4の活性化剤であるアルムK、および既知のTRPM4活性化剤のBTP2を添加することによってヒト表皮角化細胞の増殖が促進されることを見出した。また、この増殖促進効果は、TRPM4の既知の阻害剤であるグリベンクラミド(GLB)によって抑制された(図1)。これらの事実から、アルムKはTRPM4を活性化することにより、ヒト表皮角化細胞の増殖を促進することが明らかになった。
アルムKは、低温培養条件下で抑制されるヒト表皮角化細胞の増殖を回復させる
ところで、ヒト表皮角化細胞の増殖は温度によっても影響を受けることが知られている。今回実際に、培養温度を変化させて調べたところ、低温培養条件下(35℃)では通常の培養温度条件下(37 ℃)と比べて、ヒト表皮角化細胞の増殖が低下することが確認された(図2)。そして、低温培養条件下でTRPM4活性化剤であるアルムK、BTP2をそれぞれ添加することにより、低下した細胞増殖が回復することも明らかになった(図3)。
以上の結果から、アルムKはTRPM4を活性化することにより、ヒト表皮角化細胞の増殖を促進させることが明らかになった。マンダムでは、ヒト表皮角化細胞のターンオーバーを調整し、肌自体の生まれ変わる力をサポートすることによって、肌の本来の力を引き出し、ふっくらとハリ密度が整えられた肌をかなえる製品の開発に、本研究成果を応用する方針である。■
(La Caprese 編集部)