2024年2月24日、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めて2年が経過した。そうした中、帝国データバンク(本社:東京都港区)は保有する企業データベースに加え、日本企業各社の開示情報や報道資料を基に、工場や事業所、駐在員事務所などの設備・施設、直接出資等でロシア国内に関連会社を有するなどの形で、2022年2月時点で進出が判明していた上場企業168社のロシア事業動向についての調査報告を公表した。
ウクライナ侵攻直前(2022年2月時点)にロシアへの進出が判明していた国内上場企業168社のうち、2023年2月21日までにロシア事業の停止や撤退を発表・公開した企業は合計で80社(47.6%)判明した。進出企業の約半数に上ったものの、2023年8月以降の半年間で増減はなかった。
ロシア進出の日本企業 「撤退」2割
このうちロシア事業から事実上の撤退、または撤退計画を明らかにした企業は35社(20.8%)に上り、ロシアに進出する主要168社の2割に達した。前述の「停止・撤退」の計80社では43.8%を占め(図2)、多くの進出企業でロシア事業の撤退方針が明らかとなった。
ただ、撤退企業は1年前の2023年2月時点の27社から8社増加したものの、侵攻直後の2022年3月→2023年2月間における25社増に比べると、増加幅は大きく縮小した。一度はロシア事業の継続、一時停止措置などにとどめたものの、サプライチェーンの問題やレピュテーションリスクの観点から、実質的なロシアでのサービス凍結・終了や、現地子会社の売却などを進めたケースが目立った。また、ロシアのウクライナ侵攻から2年が経過する中、難航した現地企業の売却や清算に一定のメドが立った、または完了した「完全撤退」のケースが製造業を中心に広がっている。
スポンサーリンク
日本企業のロシア事業撤退の割合は、G7中2番目に低い
一方で、一度はロシア事業の撤退や停止を検討したものの、現地への製品供給や現地生産を継続する企業も一部でみられ、ロシア事業を巡る対応は「撤退」「残留」の二極化が進んだ。
上記「図3」は、米エール経営大学院の集計をもとに、各国企業の「ロシア事業撤退割合」を帝国データバンクが分析し、グラフ化したものである。G7(先進7カ国)の主要企業1,044社のうち、約3割の350社がロシア事業から撤退した、または撤退を表明していることが判明しているのだが、このうち日本企業による「ロシア事業撤退割合」は2023年以降上昇が続いているものの、G7中2番目に低い水準だった。
ただ、G7における「ロシア事業撤退割合」の平均は33.5%にとどまり、欧米先進諸国のグローバル企業でもロシアからの離脱が進まなかった。ロシア事業撤退の動きは過去1年間でほぼ変化がみられず、総じてこう着した状態が続いている。
スポンサーリンク
日本企業の「脱ロシア」はこう着状態へ
ロシアがウクライナに侵攻して2年が経過する中、終結の糸口がいまだ見いだせない状況が続いている。この間、米国政府は対ロ制裁逃れに加担したと見なす第三国の企業等も制裁対象にすると発表したほか、ウクライナ政府も「戦争支援企業」として世界約50社をリスト化し非難するなど、さらなる「脱ロシア」が企業へ求められる動きに大きな変化はみられない。
こうした中、ロシア事業を展開してきた欧米グローバル各社を中心に、ロシア「撤退」「残留」の判断が難しくなっている。帝国データバンクは「撤退面では、ロシア当局から承認が得られない、または買い手がつかないといった問題が、結果的に『脱ロシア』を難航させる要因となっている」と指摘している。他方、日用品メーカーなどでは人道上の観点から製品供給を続けるケースもあり、ロシア事業存続の可否を巡る判断は今なお二分された状態が続いている。日本企業では自動車を中心に「ロシア離れ」が進むものの、撤退の難しさや長期間を要するといった問題からこう着状態が続くとみられる。■
(La Caprese 編集部)