2023年12月26日、ユーグレナ(本社:東京都港区)は微細藻類ユーグレナの抽出物であるユーグレナエキスEX(※1)が、老化させたヒトの真皮線維芽細胞(※2)の老化現象(β-ガラクトシダーゼ活性※3や老化因子SASP※4)を抑制することを示す研究結果を確認したと発表した。
なお、本研究成果は、2023年12月6~8日に開催された「第46回日本分子生物学会年会」で発表した(※5)。概要は以下の通りである。
人の皮膚は、年齢とともにしわ、たるみ、シミなどの老化兆候を示すが…
皮膚は外部環境から身体を守る最初のバリアであるだけでなく、その状態が見た目の印象に関わることから、皮膚の老化は特に注目されている。人の皮膚は、年齢とともにしわ、たるみ、シミなどの老化兆候を示すが、この要因の一つとして皮膚を構成する表皮角化細胞(※6)や真皮線維芽細胞などの老化が考えられる。
これまでの研究から、ユーグレナエキスEXはヒトの表皮角化細胞やヒトの真皮線維芽細胞の増殖を促進するとともに、ヒトの表皮角化細胞において老化した細胞を除去する可能性を報告(※7)してきた。本研究では、皮膚細胞の中でも特にヒトの真皮線維芽細胞の老化現象に焦点を当て、継代(※8)を重ねることで老化細胞を人工的に作製した。そして、作製した老化細胞を用いて、微細藻類ユーグレナの抽出物であるユーグレナエキスEXが皮膚の老化にどのような影響を及ぼすかを確認した。
ユーグレナエキスEXは複数の皮膚細胞、複数の原因が由来した老化現象の改善に貢献する?
ヒトの真皮線維芽細胞を培養し、継代を重ねて老化細胞を作製した。作製した老化細胞では、老化細胞の特徴の一つである肥大化した細胞が観察された(図1, Phの白矢頭)。また、老化指標の一つであるβ-ガラクトシダーゼ活性を染色によって検出したところ、作製した老化細胞では、継代数の少ない若い細胞に比べて、青色を呈するβ-ガラクトシダーゼ陽性細胞が多く存在していた(図1, β-gal)。これらの結果は、継代を重ねることで、人工的に老化したヒトの真皮線維芽細胞を作り出すことに成功したことを示している。
作製した老化細胞にユーグレナエキスEXを添加して3日間培養し、老化指標であるβ-ガラクトシダーゼ活性を蛍光で検出し、フローサイトメトリー(※9)により蛍光強度を測定した。その結果、若い細胞と比較して老化細胞(図2、老化細胞 EX 0%)は、β-ガラクトシダーゼ活性が増加したが、ユーグレナエキスEXの添加により減少することが見出された(図2)。
さらに、老化因子SASPの一種であるIL-6やIL-1αの遺伝子発現を調べたところ、若い細胞に比べて老化細胞(図3、老化細胞 EX 0%)では発現が増加した。一方で、ユーグレナエキスEXの添加によって、未添加(図3、老化細胞 EX 0%)と比較してIL-6やIL-1αの遺伝子発現が減少することが確認された(図3)。
以上の結果より、ユーグレナエキスEXがヒトの真皮線維芽細胞の老化現象を抑制することが示唆された(図4)。
なお、ユーグレナでは、これまでの研究においてユーグレナエキスEXは、ヒトの表皮角化細胞に過酸化水素を用いて酸化ストレスをかけることで老化させた細胞にも効果を有することが示唆されている(※10)。このため、ユーグレナエキスEXは、複数の皮膚細胞、複数の原因が由来した老化現象(酸化ストレスや継代による老化)の改善に貢献する可能性があると期待される。■