気圧変化や降雨、湿度が頭痛発生に関与する可能性を報告。――2023年3月3日、糸魚川総合病院(新潟県糸魚川市)は、ベルシステム24(東京都港区)と獨協医科大学(栃木県壬生町)、埼玉精神神経センター(埼玉県さいたま市)、国立病院機構七尾病院(石川県七尾市)との共同研究でそのような成果を明らかにした。
本研究は、ベルシステム24が提供する気圧予報に基づく体調管理アプリ「頭痛ーる」のビッグデータを人工知能により解析したもので、天気(気圧の変化、降雨や湿度)が頭痛発生に関与する可能性を報告した。なお、本研究成果は米国の頭痛学会の公式医学雑誌『Headache』にて2023年2月28日に掲載されている。
今回は、天気と頭痛の関係性についての研究成果を紹介したい。
体調管理アプリ「頭痛ーる」のビッグデータをAIにより解析
日本における片頭痛の年間有病率は8.4%で、20〜40歳代の若年女性に多いと言われている(Sakai F, Igarashi H. Cephalalgia 1997)。片頭痛を含め頭痛の大半は命に関わることはなく軽視されがちであるが、片頭痛による欠勤や休業、学業や労働のパフォーマンス低下などによる間接的経済損失も指摘されている。
片頭痛の原因については、ストレスや月経、空腹に次いで、天気が4番目に多いとの報告もある(Kelmen.Cephalalgia 2007)。具体的に、どのような天気で頭痛が起きるのか明らかになれば、自身の体調管理やセルフケアに役立つほか、頭痛の発生メカニズムの解明につながる可能性がある。しかしながら、これまでの天気と頭痛発生に関する研究は小規模なものが多く、一貫性のある結果が得られていないのが実情であった。
そこで今回は、ベルシステム24が提供する体調管理アプリ「頭痛ーる」のビッグデータを人工知能により解析して、天気と頭痛発生に関する研究を行なった。「頭痛ーる」は、気象を起因とする疾患を持った人の「気象や心身の変化による体調不良に備え、その不調を軽減したい」というニーズに応えるべく、開発されたアプリである。気象庁から提供された気圧予報とアプリで毎月120万件収集しているユーザーの体調に関する情報を組み合わせ、導き出された精度の高い「気象病予報」は多くのユーザーに愛用されており、月間アクティブユーザー数で100万人、2022年11月には累計1,000万ダウンロードを達成した。
なお、本研究に使用するデータは、個人情報は含まれておらず、利用に関してもデータ提供元保有者から許諾を得ている。
片頭痛が強く疑われる4,375名のデータを解析
本研究では、2020年12月から2021年11月までの頭痛記録データのうち、東京都・神奈川県・埼玉県・大阪府・愛知県・石川県で記録された片頭痛が強く疑われる4,375名のユーザーのデータを抽出した。気温や湿度などの1時間毎の天気データと、アプリでの1時間毎の頭痛登録数を、AI(人工知能)の一種である時系列クラスタリングとPrediction One (ソニーネットワークコミュニケーションズ)を用いて解析した。
抽出した頭痛データを解析したところ、頭痛発生と強く関連する天気の要素として、①低気圧、②高湿度、③降雨、④6時間前と比較して大きな気圧低下、⑤朝6時の高気圧、⑥翌日朝6時の低気圧、⑦1週間かけて気圧が低いままであること、⑧1週間かけて気圧が大きく低下していること……が頭痛発生と関与することが判明した。これらの結果を総合すると、頭痛の発生には、「気圧の変化」「降雨」「湿度」が関与することが示唆された。ちなみに、抽出した4,375名のおよそ9割が女性で、平均年齢は34歳であった。
天気と健康の関係性について、さらなる理解・解明へ
近年は「気象病」あるいは「天気痛」といった言葉も広く知られるようになり、頭痛に限らず天気によってさまざまな不調が指摘されるようになった。糸魚川総合病院は、今回の共同研究をきっかけに、天気と健康についての理解・解明につながることが期待される、との見解を示した。研究チームのさらなる成果が注目されるところである。■
(La Caprese 編集部)