2024年2月16日、東京証券取引所でアシックスの株価が一時5,970円まで買われ、上場来高値を更新した。2023年1月5日の安値2,802円から13カ月余りで113.1%の上昇である。
アシックスは、兵庫県神戸市に本社を置く総合スポーツ用品メーカーである。その源流は1949年に設立した鬼塚商会にまでさかのぼる。28年後の1977年には、スポーツウェアメーカーのジィティオ、ニットウェアメーカーのジェレンクの3社で対等合併し、アシックスを発足した。創業から今年で75年目を迎える老舗(しにせ)であり、日本国内はもちろんのこと、海外事業も積極的に展開している。
後段で述べる通り、アシックスが公表した❶2023年12月期・通期(2023年1月1日~2023年12月31日)の連結業績が大幅な増収増益となり、売上高および各段階利益がいずれも過去最高を更新したこと、❷2024年12月期・通期(2024年1月1日~2024年12月31日)の連結業績予想についても増収増益となる見通しが示されたこと、❸2024年12月期の年間配当予想を前期比5円増の70円に増配する方針を示したこと、❹取得総額150億円、株式総数400万株を取得上限とする自社株買いを発表したこと(取得期間は2024年2月13日から2024年6月30日まで)……などが株価にも刺激材料となった。
今回はアシックスの話題をお届けしよう。
アシックス、過去最高益を更新。ランニングシューズやスニーカー等の販売好調
2月9日、アシックスは2023年12月期・通期(2023年1月1日~2023年12月31日)の連結業績を公表した。同期の経営成績は、売上高が前期比17.7%増の5,704億6,300万円、本業の利益を示す営業利益は同59.4%増の542億1,500万円、経常利益は同63.9%増の506億7,000万円、純利益は同77.4%増の352億7,200万円と大幅な増収増益となり、売上高および各段階利益がいずれも過去最高を更新した。
同期は、新型コロナウイルス禍の行動制限緩和で経済活動の正常化への回帰が見え始めたところで幕を開けた。こうした環境下、アシックスはコロナ禍で世界的な広がりを見せた健康意識の高まりに加え、スポーツイベントの本格的な開催再開も見込まれる中で、中期経営計画2023(以下、「中計2023」)の最終年度を迎えた。その結果、同期は中計2023で掲げた定量的な経営指標を期中に前倒しで達成し、前述の通り、売上高および各段階利益で過去最高を記録した。
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オニツカタイガーのカテゴリー利益が107.6%増
カテゴリー別では、パフォーマンスランニングのカテゴリー利益が前期比1.7%増の500億1,800万円と伸長したほか、コアパフォーマンススポーツのカテゴリー利益は同35.0%増の128億1,000万円と大幅な増益を記録した。加えて、スポーツスタイルのカテゴリー利益も同87.5%増の120億4,700万円と急増した。いずれも全ての地域で好調に推移し、業績に寄与した。
一方、アパレル・エクィップメントは中華圏地域やオセアニア地域での売上が好調に推移したほか、粗利益率も改善したことにより、カテゴリー利益で10億100万円(前期は16億4,500万円のカテゴリー損失)と黒字転換を達成した。
さらに、オニツカタイガーも全ての地域で好調に推移し、カテゴリー利益で同107.6%増の153億6,000万円と大幅増益を記録した。
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全ての地域で大幅な増益を記録
セグメント別(地域別)では、日本地域でオニツカタイガーやコアパフォーマンススポーツの好調を背景に、セグメント利益が前期比111.6%増の127億9,600万円との大幅増益を記録した。北米地域はパフォーマンスランニングやコアパフォーマンススポーツの好調や粗利益率の改善などにより、セグメント利益で同5,302.8%増の14億4,000万円の大幅増益となった。欧州地域も全てのカテゴリーが好調に推移し、セグメント利益で同26.1%増の141億8,900万円と大幅に伸長した。
一方、中華圏地域も全てのカテゴリーが好調に推移したことにより、セグメント利益で前期比30.2%増の131億700万円と急増した。オセアニア地域のセグメント利益は同19.8%増の62億4,100万円、東南・南アジア地域のセグメント利益は同66.6%増の49億7,100万円といずれも好調に推移した。また、その他地域はパフォーマンスランニングやオニツカタイガーが好調だったことにより、セグメント利益で同20.7%増の44億円と大幅に伸長した。
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2026年12月期、営業利益で800億円以上を目指す
2月9日、アシックスは2024年12月期・通期(2024年1月1日~2024年12月31日)の連結業績予想について、売上高で前期比3.4%増の5,900億円、本業の利益を示す営業利益で同7.0%増の580億円、経常利益で同4.6%増の530億円、純利益で同2.1%増の360億円となる見通しを示した。見立て通りとなれば、売上高および各段階利益で再び過去最高を更新することとなる。
アシックスは2024年12月期の経営環境について、外部環境の不透明さはあるものの、パフォーマンスランニングを軸に、コアパフォーマンススポーツ、スポーツスタイルおよびオニツカタイガーでの成長を織り込んだとしている。ちなみに、アシックスは2023年11月に策定した「中期経営計画2026」に基づき、「VISION2030」の実現に向けて、「グローバル×デジタル」をさらに推進することで持続的な成長を目指し、①営業利益800億円以上、②営業利益率12.0%前後、③ROA10%前後……を2026年12月期の数値目標に設定している。
引き続き、アシックスの業績や株価を注視しておきたい。■
(La Caprese 編集部)